Vol.28 No.12 【特 集】バイオマスエネルギー開発は今! |
※下記文中の「(独)農・生研機構」は「独立行政法人 農業・生物系特定産業技術研究機構」の略です。
バイオマスエネルギーへの期待と可能性 |
東京大学大学院 農学生命科学研究科 横山 伸也 |
バイオマスは唯一有機性で,環境への負荷の低いカーボンニュートラルな性質を持つエネルギー源として期待されている。 バイオマス・ニッポン総合戦略が策定されて以来,各省庁から種々の施策が打ち出されており,まだまだ本格的な導入・普及には遠いものの徐々にバイオマスが認知され導入が進行している。 本特集では,個々のバイオマス利用技術の研究開発の現状が紹介されているので,各論はそれに譲ることとし, バイオマス利用の現状と導入普及策に加え,海洋の利用,海外戦略について述べ,その可能性を示す。 |
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廃食油を軽油代替燃料に変換するSTING法 |
(独)農・生研機構 中央農業総合研究センター 谷脇 憲・飯嶋 渡 |
STING法による軽油代替燃料製造法では,水分や高融点油脂といった廃食油に含まれる不純物の混入に対して安定した変換が可能であり, グリセリンの発生を抑制することができる。このことにより付帯的処理設備が不要となる。システムは連続式の反応装置を中心とした単純な構造であり, メンテナンス性に優れている。STINGer1号機の規模では200lの廃食油から180lの軽油代替燃料を1日で変換する。これに要する電力量は約160kWhである。 この電力量をディーゼル発電機で得る場合は,1 l当たり0.19lの燃料を必要とする。このとき燃料変換効率は70%以上である。 容量の大型化や連用運転時には80%以上の燃料変換効率が見込まれる。このとき減価償却を含めた変換コストは1l当たり40円程度である。 |
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家畜ふん尿から抽出したメタンからプラスチック原料と水素の製造技術 |
北海道大学 触媒化学研究センター 市川 勝 |
水素エネルギー社会の到来が現実味を帯びてきた。燃料電池の技術開発が着々と進む一方で,燃料である水素を風力発電や太陽光発電の水電気分解でCO2を排出せずに作るグリーン水素の製造技術が注目されている。 一方,農林,畜産廃棄物など循環型有機資源であるバイオマスから化学原料や水素を製造する“バイオリファイナリー”の動きが国内外で高まっている。 ここでは,牛ふんなどの畜産廃棄物から得られるメタンガスを利用して水素とプラスチック原料であるベンゼンなどグリーン石油を製造する“MTB触媒技術”の展開について紹介する。 |
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高効率バイオマス発電技術の研究開発 |
(財)電力中央研究所 エネルギー技術研究所 芦澤 正美 |
バイオマス/廃棄物は,地球温暖化などの環境問題解決に向けた一つの有望なエネルギーとして期待されており,バイオマス利用技術開発のニーズが高まっている。 当研究所では,石炭火力へのバイオマス混焼特性の解明をはじめ,高効率バイオマスガス化発電技術の開発を行っている。 さらに,バイオマス種,プラント規模,発電システム構成などの要望に応じ,ガス化性能や発電効率を推定できる性能評価技術を開発している。 本稿ではこれらの概要について報告する。 |
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木材からアルコールを創り出す −超臨界水および亜臨界水処理を用いた木材の高速糖化− |
(独)森林総合研究所 松永 正弘・松井 宏昭 (株)神戸製鋼所機械研究所 山本 誠一・大塚 剛樹 |
木質資源からバイオエタノールの原料となる糖類を高速かつ高効率で生産するための方法として,触媒や特別な前処理を必要としない超臨界水および亜臨界水処理法が現在注目されている。 そこでわれわれは超臨界水および亜臨界水処理による木材の高速糖化法を検討し,その結果,スギ木材からグルコースやオリゴ糖などの糖類を短時間で多量に生成することができた。 今後はベンチプラントを設計・製造・運転し,データ採取を通じて,本技術の実用化を目指す予定である。 |
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超臨界水技術による廃棄物系バイオマスのエネルギー変換 −水域浄化に利用した水生植物のガス化処理− |
(株)竹中工務店 技術研究所 茅野 秀則・川人 尚美 |
湖沼の富栄養化対策として,水生植物の栄養塩吸収能を利用した浄化方法が各地で試みられ,自然の浄化能力を利用した技術として期待されているが, 増殖した植物体の処理方法が確立されていないために実用化に至っていない。そこで,高温高圧の超臨界水中で有機物を分解, ガス化する技術を利用して廃棄物系バイオマスの一つとしての水生植物の処理,エネルギー変換を試みた。超臨界水による有機物ガス化技術は, 酸化剤を用いない超臨界水分解と,酸化剤を添加する超臨界水酸化に大別されるが,ここでは,燃焼性ガスとしてのエネルギー回収が可能な超臨界水分解によるバイオマスのガス化技術について検討した。 また,超臨界水技術はさまざまな有機物の分解に広く応用が期待される。本報では水生植物のガス化結果を交えながら, 超臨界水による有機物分解・ガス化技術について概説する。 |
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海藻からメタンガスを発生させる |
東京ガス(株) 総合研究所 松井 徹 |
周囲を海に囲まれたわが国では,海藻漂着ゴミなどの海藻バイオマスが多量に存在するが,その多くは利用されることなく, 自治体などにより焼却などの処分がなされている。そこで,これらバイオマスをエネルギー源として有効に利用すべく, 処理量1t/日規模の実証試験プラントにて海藻バイオマスのガス化試験を行った。実証試験において, メタン発酵により1tの海藻バイオマスから約20klのメタンガスを発生させることに成功した。 また,発生したガスを用いてガスエンジンコージェネレーションシステムで発電および熱回収を行った。 |
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