Vol.32No.1 【特 集】 地域でつくる農の逸品 |
青森から全国へ:日本初の極小粒米品種「つぶゆき」 |
青森県農林総合研究センター 良食味米開発部 小林 渡 |
米の消費減退と価格低迷,さらには産地間競争の激化が進むなか,青森県では新たな需要開拓を目指して,全国に先駆けてこれまでにない極小粒の水稲品種
「つぶゆき」を育成した。粒の大きさは一般米の半分余りで,炊飯した時のパラッとした食感と玄米としての食べやすさから,
「つぶゆき」を利用した調理メニューの開発や,加工品の開発を進めている。
また,玄米酒などの醸造物は栄養的に優れ,機能性も期待できるほか,玄米にもビタミン類が豊富に含まれるなど,健康志向の素材として期待されている。 (キーワード:極小粒米品種,「つぶゆき」,調理メニュー,玄米酒,GABA) |
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農薬の削減を可能にした「コシヒカリBL」 |
新潟県農業総合研究所 作物研究センター 育種科 石崎 和彦 |
「コシヒカリ」は食味が良い反面,いもち病に弱く薬剤防除が欠かせない。新潟県では,コシヒカリの持つ優れた性質はそのまま残し,
農薬の使用量をできるだけ減らして生産した消費者が求めるコシヒカリを供給できるよう,コシヒカリのいもち病真性抵抗性同質遺伝子系統を12系統開発した。
2005年には,県下全域の約9万haの水田で,これらの系統から構成されるマルチラインの栽培が始まった。
その結果,いもち病防除に要する薬剤の出回り量はコシヒカリBL普及前の27%にまで減少し,穂いもち病の発生面積も激減させることに成功した。 (キーワード:いもち病真性抵抗性,「コシヒカリ」,マルチライン(多系品種),同質遺伝子系統) |
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ソラマメ新品種「愛のそら」 |
愛媛県農林水産研究所 農業研究部 福田 康彦 |
このほど,愛媛県農林水産研究所はソラマメの新品種「愛のそら」を育成した。この品種は「陵西一寸」に比べて単価の高い3,4粒莢の割合が高く,
莢や青実が大きくて,食味が良いのが特徴である。
また,「陵西一寸」より5日ほど収穫開始時期が早く,収量はほぼ同等であることから,栽培農家の所得向上が期待できる。
今後,「陵西一寸」からの全面的な切り替えを図り,県のオリジナルブランドを目指す。 (キーワード:ソラマメ,育種,品種,大粒,良食味) |
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遮光トンネル・無培土ホワイトアスパラガス |
北海道立花・野菜技術センター 研究部 地子 立 |
近年,青果用としてのホワイトアスパラガスの需要が増加傾向にあり,今後もさらなる需要の拡大が見込まれている。
しかし,従来の栽培法である培土法には収穫作業性などに課題があったことから,これらを改善し,
簡易にホワイトアスパラガスを収穫できる新たな栽培法について検討した。ハウス半促成春どり作型において,
アスパラガスを植え付けた畝上に大型の遮光トンネルを設置することによって,培土を省略した簡易なホワイトアスパラガスの栽培が可能であった。
また,本栽培法をハウス立茎作型に導入することで春季にホワイト,夏季にグリーンアスパラガスを生産できた。 (キーワード:ホワイトアスパラガス,遮光フィルム,無培土) |
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宮城県オリジナルイチゴ「もういっこ」と「サマーキャンディ」 |
宮城県農業・園芸総合研究所 園芸栽培部 鹿野 弘 |
宮城県の気象条件に適応し,冬期の草勢が強く,大果・果重型で「とちおとめ」や「さちのか」と同等,または優る収量が確保でき,
良質の果実形質を有した促成栽培用品種「もういっこ」と,イチゴ端境期需要の夏秋どりをターゲットとし,
高品質で四季成り性の安定した品種「サマーキャンディ」を育成した。
「もういっこ」はうどんこ病と萎黄病に強いことからも年々栽培面積が拡大しており,「サマーキャンディ」は中山間地の有望品目として注目されている。 (キーワード:イチゴ,新品種,一季成り性、四季成り性) |
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野菜の少量土壌培地耕技術 |
滋賀県農業技術振興センター 栽培研究部 高澤 卓弥 |
少量土壌培地耕技術は,培地に土壌を用いる滋賀県独自の養液栽培技術である。緩衝能を持つ土壌を用いることにより,
排液を循環利用しても生育および収量・品質はかけ流し方式と同等で,培養液管理も容易である。
培地には土壌病害の心配がない水田土壌が適し,長期連用も可能である。
トマト,イチゴ,キュウリ,メロンなどで実用化,現地への導入が進み,特にイチゴは県内施設栽培の大部分を本技術が占め,直売所中心に販売されている。 (キーワード:イチゴ栽培技術,養液栽培,土壌の緩衝能,培養液の循環利用,イチゴ高設栽培) |
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鉢植えに適したホオズキ新品種「佐賀H1号」と「佐賀H2号」 |
佐賀県農業試験研究センター バイオテクノロジー部 高取 由佳 |
佐賀県における花き類の生産は全国的にみると小さいが,産出額は年々増加傾向にあり,今後の展開が期待される。
また,多彩な品目が地域の特性を活かして栽培されており,地域農業の振興に貢献している。
そこで,佐賀県農業試験研究センターでは,1998年から地域特産花きの1つであるホオズキのオリジナル品種の開発に取り組み,
鉢植えに適した「佐賀H1号」および「佐賀H2号」を開発した。「佐賀H1号」は茎頂に宿存がくが着生して芯止まりとなり,側枝が伸長するため,
匍匐しながら水平方向に伸長する。「佐賀H2号」は縦方向に伸長するが,草丈が高くなりすぎず,宿存がくの着生が良く,下節から上節まで連続的に着生する。 (キーワード:ホオズキ,「佐賀H1号」,「佐賀H2号」,匍匐性,宿存がく,連続着生) |
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気候温暖化に伴って増加するリンゴ「ふじ」の‘青実果’を軽減する |
富山県農林水産総合技術センター 園芸研究所 果樹研究センター 大城 克明 |
リンゴ「ふじ」の‘青実果’は,気温が高い年ほど発生が多い傾向が見られる。青実果は未熟果ではなく,
正常果とは異なる成熟過程をたどることによって発生する外観や食味が不良な成熟不良果である。この青実果は,
生育期間の気温の上昇により樹体生育が旺盛になった結果発生する。青実果の発生を軽減するためには,
6月の新梢長や葉色を基準に沿った適正な樹勢に誘導することと,着果部位の基準に照らして青実果となりやすい果実を摘果することが有効である。 (キーワード:リンゴ「ふじ」,気候温暖化,青実果,樹勢,摘果) |
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抵抗性台木を用いたイチジク株枯病の防除 |
大阪府環境農林水産総合研究所 食の安全研究部 細見 彰洋 |
マイナーながら活気のあるイチジク栽培であるが,土壌病害であるイチジク株枯病が悩みの種である。
そこで,本病に抵抗力を持つ台木の探索に取り組み,地中海原産の `Ischia Black"を有望台木として選抜した。
この台木を「桝井ドーフィン」に用いると,株枯病の回避はもとより,果実品質や収量の確保にも効果があった。
台木を使う栽培はイチジクではほとんど例がないため,接ぎ木や幼木管理の方法を整備しつつ,生産者への接ぎ木苗の供給を開始している。
新しい台木 `Ischia Black" は深刻な病害の解決とともに,農薬に依存しないイチジク生産に大きく寄与するものと期待している。 (キーワード:イチジク株枯病,台木,抵抗性,樹勢,接ぎ木) |
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県産規格外カンショを利用した高品質豚肉の商品化と飼料自給率の向上 |
千葉県畜産総合研究センター 生産技術部 高橋 圭二 |
千葉県産の規格外カンショを10%以上混合し,アミノ酸のリジン濃度を0.4%に調整した飼料を体重50kgから100kgまでの中ヨークシャー種
に給与すると,胸最長筋(ロース)の筋肉内脂肪含量が平均6%以上と高く,背脂肪内層の飽和脂肪酸含量と融点が高くなり,脂肪色の白さが際だつ特
徴ある豚肉を生産できることが分かった。
この技術を応用し,(社)日本養豚協会の純粋種証明を持った中ヨークシャー種の肥育後期に,カンショの規格外品を20%混合した専用飼料を給与した
肉豚を銘柄豚肉「ダイヤモンドポーク」として商品化した。 (キーワード:豚肉,中ヨークシャー種,カンショ,リジン,筋肉内脂肪含量) |
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発育と産肉性に優れたデュロック種系統豚「アイリスナガラ」 |
愛知県農業総合試験場 畜産研究部 山本 るみ子 |
愛知県と岐阜県は共同でデュロック種の系統造成に取り組み,平成19年春,新系統豚「アイリスナガラ」を完成した。
2県共同による系統豚の開発は全国初の試みである。平成12年にデュロック種の原産国であるアメリカ合衆国から雄11頭,雌40頭を導入し,
6世代にわたる改良の結果,1日平均増体重1,021g,背脂肪厚1.9cmの能力を持った斉一性の高い豚の集団が完成した。
この完成により,愛知県では三元雑種を生産するために必要な3品種(ランドレース,大ヨークシャー,デュロック)の系統が,国内で唯一,
自県の造成によって揃った。養豚振興への一層の貢献が期待されている。 (キーワード:系統豚,デュロック種,背脂肪厚,1日平均増体重) |
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新種苗生産技術による養殖アオリイカの特産化 |
福井県水産試験場 浅海資源部 畑中 宏之 |
福井県における魚類の海面養殖はトラフグ,マダイなどについて行われているが,近年は魚価が低迷していることから新たな養殖魚の開発が求められている。
そこで,筆者は市場価値が高く,短期間で収穫が可能な養殖魚種としてアオリイカに着目し,種苗生産から養殖に関する技術開発を行っている。
アオリイカの種苗生産は初期の餌料がポイントであり,活きた餌が必要となる。本稿では,マサバの稚魚を初期餌料として用い,
平均外套長55.6mmの種苗を277尾生産し,その種苗を用いて行った養殖事例および今後の展望を紹介する。 (キーワード:アオリイカ,種苗生産,養殖新魚種) |
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京都ブランド"丹後とり貝" |
京都府立海洋センター 海洋生物部 藤原 正夢 |
日本海に面した京都府北部の内湾では,昔から大型の天然トリガイが漁獲され,地域特産品として珍重されていたが,
漁獲量の年変動が非常に大きく不安定であった。
そこで,京都府ではトリガイの生活史全体を人の管理下で完結させる完全養殖技術を開発し,さらには品種改良や養殖トリガイのブランド化にも取り組んだ。
その結果,天然貝と変わりない大型トリガイを安定して生産することが可能になり,全国で初めてトリガイ養殖の事業化に成功した。 (キーワード:トリガイ,種苗生産,養殖,品種改良,ブランド化) |
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胞子をつくらないエリンギ |
奈良県森林技術センター 森林資源課 小畠 靖 |
きのこの生活環において,胞子形成は繁殖上極めて重要な過程である。しかし,商業的きのこ生産においては,
胞子の飛散は施設の汚染や胞子アレルギーの発症などさまざまな問題を引き起こす原因となる。
これらの問題を解決するため,食用きのこ"エリンギ"の二核菌糸体由来のプロトプラストに紫外線を照射して突然変異を誘発し,
担子胞子をまったく形成しない突然変異体(担子胞子欠損変異体)を作出した。
さらにこの変異体を既存栽培品種と交雑することによって,胞子をまったく形成しない,形質の優れた栽培品種を育成した。 (キーワード:食用きのこ,エリンギ,突然変異,担子胞子欠損変異体) |
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未利用部分を利用した機能性の高いパインアップル酢 |
沖縄県農業研究センター 名護支所 (パインアップル育種指定試験地) 正田 守幸 |
パインアップル加工の過程で排出される果皮など未利用部分の有効利用と減量化を図るため,果皮搾汁液を原料として飲料酢を開発した。
醸造したパインアップル酢は酢酸のほかにクエン酸などの有機酸やスクロース,フラクトースなどの糖類を含んだ飲みやすい酢に仕上がった。
酢のラジカル消去能は,市販の酢のなかでも上位にあった。
2007年より,醸造した酢をベースにシークワーサーやパッションフルーツなど沖縄県産の果汁を加えた商品「飲んでおいしいパインの酢」が販売されている。 (キーワード:パインアップル,未利用部分,加工,酢,機能性) |
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