Vol.32No.2 【特 集】 第9回民間部門農林水産研究開発功績者の業績 |
貝殻人工魚礁「JFシェルナース」の開発 |
海洋建設株式会社 片山 敬一 |
「JFシェルナース」は,貝殻の特性を活かした人工魚礁構造物で,従来のコンクリートや鋼製の魚礁に比べ,魚介類に対する餌場・隠れ場を豊富に提供すると同時に,貝殻の有効利用がなされている。主に水産
庁の水産基盤整備事業で採択されており,これまでに約7100基が設置され,4300tの貝殻が活用された。また,生物生産の核となる「シェルナース基質」は漁業者の手によって製作されており,豊かな海づくり
に対する意識の向上や漁閑期における雇用の促進にも貢献している。今後は水産資源の増産だけではなく,漁港・港湾や干潟などの生態系・環境修復などへの応用で,豊かな海づくりを目指していく。 (キーワード:貝殻,人工魚礁,漁業者,雇用創出,環境生態系保全) |
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点眼投与型鶏大腸菌症ワクチンの開発 |
株式会社微生物化学研究所 扇谷 年昭・矢口 和彦 |
鶏大腸菌症は養鶏産業,特に肉用鶏の生産において多大な被害を与えている感染症で,その対策は主に消毒等の一般衛生管理と抗菌剤の使用に依存していた。しかし,近年抗菌剤等の使用規制が強化され
る方向にあり,効力と安全性に優れ,特に出荷日齢の早いコマーシャルブロイラーにも使用可能な残留性のないワクチンの開発が強く要望されていた。本研究では超高圧で破砕した病原性大腸菌を陽性荷電リ
ポソームに吸着させ,雛への点眼接種で有効な免疫を誘導するワクチンを開発した。本ワクチンは安全かつ残留性がないことから,ブロイラーにも使用可能である。
(キーワード:鶏大腸菌症,ブロイラー,点眼投与,リポソーム) |
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ハクサイの根こぶ病等の耐病性品種の育成 |
柿沼育種センター 柿沼 昭博 |
ハクサイの生産農家を長年悩ませ続けている根こぶ病は,土壌中の糸状菌が原因で発病する。感染すると生育が止まり枯死してしまい,圃場に蔓延すると収穫皆無となることが多く,ハクサイ栽培にとっては重
大な難防除病害である。この病気を回避するため,ほとんどの産地では土壌消毒が一般的であるが,環境汚染や人体への影響等から耐病性品種の育成が望まれていた。
毎年700以上の交配を重ね,平成7年に根こぶ病,芯ぐされ症に強い耐病性品種の育成に成功,平成12年に耐病性品種として「CR柿沼1号」,「CR柿沼2号」を品種登録,更に「黄味77」,「黄味85」,「ひろ黄」
など「スーパーCR黄味シリーズ」の育成に成功した。
(キーワード:ハクサイ,根こぶ病,芯ぐされ病,耐病性,品種育成) |
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食肉の部分肉処理・内臓処理機一連の開発 |
マトヤ技研工業株式会社 益留 福一 |
我が国の食肉処理施設は,生産効率や衛生管理の面で先進諸国に比べ見劣りする状況であった。また,従業員の高齢化に加え,3K職場に於ける労働環境など新規従業員の確保が困難な状況となってきてい
た。このような状況に対応して安全・安心な食肉を供給するためには,作業の自動化による省力化,省人化を図るための施設・機器の整備が重要な課題となっていた。
(キーワード:食肉機器,部分肉処理,内臓肉処理,日本独自) |
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国産針葉樹合板用単板製造ラインシステムの開発と普及 |
株式会社名南製作所 長谷川 克次 |
従来合板製造用の単板は,丸太の両端面を締め付けるスピンドルからの力で丸太を回転させ,刃物直前にあるノーズバーで原木を押さえつつ切削していた。そのため,刃物等からの切削抵抗力とスピンドルから
丸太を回転させる力とが丸太を引き裂く力となり,国産針葉樹等では丸太が破壊され易いこと,スピンドルより小さな直径までは切削不能等の問題があった。これに対し,刃物の直前に,周囲にスパイク状の突起
を配し,モータにより回転駆動させられるロールを配置することで,これら問題を解決した。
(キーワード:合板用単板,間伐材,スギ,歩留まり,品質) |
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発酵GABAの量産化と効ストレス研究開発 |
株式会社ファーマフーズ 橘高 隆一・東口 伸二 |
発酵食品由来のGABA生産乳酸菌を用いて,より効率的な発酵条件でのGABAの量産化技術の確立に成功し,GABA高含有乳酸菌発酵エキス「ファーマギャバ」を製品化した。また,GABAの用途拡大のため,「
ストレス」に着目し,ストレス負荷時のGABA摂取がリラックス効果や免疫能改善効果を示すことを,動物試験やヒト試験で見出し,発表した。そして,ファーマギャバは,飲料や乳製品,菓子など多数のメーカーの製
品に採用された。
(キーワード:GABA,γ−アミノ酪酸,乳酸菌発酵,ストレス,リラックス) 発酵GABAの量産化と抗ストレス研究開発 |
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イネ種子伝染性病害用微生物農薬エコホープ剤の開発と工業化 |
クミアイ化学工業株式会社 永山 孝三・渡辺 哲・熊倉 和夫・三角 裕治・前田 嘉洋 |
従来,農作物の効率的な生産のため化学合成農薬が使用されてきたが,近年,環境負荷を低減し,かつ効率的な農業生産を行うための一手段として,自然界に存在する微生物を利用した病害虫防除,すなわち
微生物農薬が注目されている。しかし,一般に微生物農薬は工業的な製造や流通面での問題から企業による実用化が困難な場合が多かった。我々は微生物農薬の開発に注力し,従来,企業による実用化が困
難とされてきた「微生物農薬」を,有用微生物の発見,微生物の培養,組成物処方の確立及び工業的製造法について検討し,イネ種子伝染性病害防除剤エコホープ剤の実用化に成功した。
(キーワード:微生物農薬,トリコデルマ,イネ種子伝染性病害,イネばか苗病) |
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菌床シイタケの上面栽培方法と周辺技術の開発及び普及 |
株式会社北研 食用菌類研究所 鮎澤 澄夫 |
菌床シイタケの栽培方式の一つに,栽培袋を外して菌床を裸の状態にして全面からきのこを発生させる通常栽培がある。この方式は菌床が乾燥しやすいため,対応策として断続的に散水を行うがきのこが吸水
し過ぎて低品質になること,側面から発生したきのこが隣の菌床やきのこ同士で接触して変形することなどが課題となっている。これらの課題を解決するため,筆者らは菌床の多くの部分を水没させて管理を行う「
上面栽培方法」を開発し,水分が自動的に補給でき,側面からのきのこ発生を抑制することができた。加えて周辺技術の総合的な開発により当該有効性をさらに大きく発揮することができ,栽培農家の経営改善に
大きく貢献している。
(キーワード:菌床シイタケ,上面栽培,発芽率,北研600号,サンマッシュ) |
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日本型酪農に適した自動給餌システムの開発 |
北原電牧株式会社 川口 隆 |
繋ぎ飼い牛舎における無人給餌システムをベースに,IT化,超小型化,ロールパックサイレージ対応などにより,日本酪農に適した自動給餌システムを開発した。本システムは,最も重要でありながら最適シス
テムが存在しなかった90―120頭規模に最適であり,多回数給餌と精密飼養管理による乳量増大,飼料コスト低減で,一頭当たり所得の向上を実現した。
(キーワード:日本型酪農,自動給餌システム,繋ぎ飼い,乳量) |
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醤油多糖類(SPS)の機能性に関する研究開発 |
ヒガシマル醤油株式会社 古林 万木夫・築山 良一・松下 裕昭・真岸 範浩・ 永谷 裕子・徳丸 望・鈴木 誠・橋本 忠明 |
日本を代表する発酵調味料の一つである醤油の新しい付加価値として,醤油に元々含まれている多糖類(醤油多糖類:SPS)に着目し,さまざまな機能性研究を進めた。動物試験やヒト臨床試験により,SPSの
抗アレルギー活性,免疫調節機能,および鉄吸収促進効果について解明するとともに,醤油から生まれた新しい機能性食品として,SPSの抗アレルギー作用を特徴とする花粉症対策サプリメントや鉄吸収促進効
果を特徴とする機能性醤油を開発した。
(キーワード:醤油多糖類,SPS,抗アレルギー活性,免疫調節機能,鉄吸収促進効果) |
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