Vol.33 No.2 【特 集】 第10回民間部門研究開発功績者の業績 |
牛体外受精卵を生産する高性能無血清培地の開発と応用 |
株式会社機能性ペプチド研究所 星 宏良・山下 祥子 |
畜産現場では,肉質の優れた和牛や乳量の多い乳牛を,低コストで効率よく生産する繁殖技術として,体外受精卵移植が注目されている。品質の良い体外受精卵を効率よく生産するために,従来の血清培地に替わる高性能無血清培地を新たに開発・製品化した。日本国内のみならず,韓国や中国など海外にも,牛体外受精卵生産用研究試薬として販売を行なっている。卵子,受精,胚の基礎的研究をサポートすることはもとより,乳牛や和牛の性判別体外受精卵,ブランド和牛の体外受精卵,クローン胚などの生産に優れた培地として,畜産現場での高品質牛の増産や品種改良などにも貢献している。 (キーワード:無血清培地,体外培養,受精卵移植,受胎率,家畜増殖と品種改良) |
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ナメコ周年栽培技術および菌株維持技術の開発 |
株式会社キノックス 木村 栄一・鴫原 隆・郡山 賢一 |
ナメコの周年栽培において,それまでの科学的裏付けのない,経験則に基づいた栽培技術に代わり,(1)発生の安定化のための生理特性に基づいた培養管理技術,
(2)培養の良否を決定付ける高圧殺菌技術,(3)発生量の増大と品質向上のための増収材,(4)周年栽培を前提とした専用品種をそれぞれ開発し,発生の安定化に貢献することができた。
また,価格の低迷に対抗するための技術として,従来に比べ約半分の日数で栽培可能な「高速栽培」技術と,発生の更なる安定化を図るための菌株保存技術として,ナメコの生理特性を考慮に入れた性能維持のための1次菌糸から新たに立ち上げ直す「菌株リセット技術」を確立した。 (キーワード:ナメコ高速栽培,菌株保存,劣化,性能維持,菌株リセット) |
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レンコン品種、金澄20号・34号・36号の育成 |
農業 金坂 孝澄 |
私がレンコンの栽培を始めた頃の品種には優良種が数少なく,そこで地域に合ったレンコンの改良を始めた。土壌条件を選ばず生育旺盛で,肥大が安定して多収であり,また風害,冷害等の気象条件においても収量を確保し,栽培しやすい品種の育成をめざした。 その結果,1985年に種苗登録となった金澄を始め,金澄20号,34号,36号等を育成し,これらは現在,茨城県を始めとする東日本の主要産県で主力品種として栽培されている。金澄系品種は多収性に加え,外観品質が優れ,食味も良く,浅根性であることから収穫が容易で,そのた め栽培面積が増加している。 (キーワード:レンコン,育種,品種特性,金澄,浅根性) |
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精密顕微操作用ピエゾ駆動式マイクロマニピュレータの開発と普及 |
プライムテック株式会社 三松 淳・安田 正樹 |
受精卵・体細胞核移植,顕微授精など畜産分野の新たな育種繁殖技術を支えるツールとして,顕微鏡下で微細操作をするマイクロマニピュレータがある。従来技術は,その操作に名人芸が要求されたため,新たな研究需要に応じた微細な顕微操作を容易に可能にする必要があった。ピエゾ駆動式マイクロマニピュレータ(PMM)を用いると,弾力性のある卵の透明帯や伸展性に富んだ細胞膜などでも,膜の変形無しに瞬時にダメージなく穿孔することを可能にする。また超微動領域においても容易な操作が可能であり,卵細胞等にストレスがかからず生存率の高い「やさしい」操作ができ,先進の操作に対応できる高い機能を達成した装置となった。 (キーワード:マイクロマニピュレータ,ピエゾ,顕微授精,核移植,発生工学) |
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牛海綿状脳症診断用酵素抗体反応キットの開発 |
富士レビオ株式会社 安住 純一・宮川 英二 |
牛海綿状脳症(Bovine Spongiform Encephalopathy:BSE)は1986年に英国で発見された牛のプリオン病である。日本では2001年9月に初めてBSEが報告され,全頭検査による食肉の安全性の確保と死亡牛検査によるサーベイランス体制が整備された。当時のBSE検査には,唯一輸入検査キットが使用されていたが,安
定供給できる国産キットの開発が望まれていた。本研究で開発した牛海綿状脳症診断用酵素抗体反応キット「フレライザBSE」は,検査時間の短縮,優れた特異性により検査現場から高い評価を得ている。
(キーワード:BSE,酵素抗体反応キット,プリオン,スクリーニング,EFSA) |
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南大東島における革新的増産技術によるサトウキビ産業低迷からの脱却 |
農業 名嘉真 繁 |
南大東島は,旱魃や台風の常襲地としてしられ,さらに,強酸性,重粘土質で土壌の硬化,有機物の不足によりやせた土壌で,サトウキビの生産環境はきわめて厳しい。主要害虫であるハリガネムシの蔓延による株出し不萌芽で,原料が収穫出来ないなど,さらには大型機械化による様々な問題が発生し,栽植密度が狭く収穫ロスの多発,土壌踏圧,硬化,地力の低下により南大東の土壌は荒廃しその弊害は大きく作用した。一時崖っ淵に立つサトウキビとして新聞に掲載されるほど収量は低迷し,サトウキビ産業は存亡の危機を迎えていた。そのことを踏まえ,収量の安定を図るべく,品種F161のみからの脱却,耐風性,高糖性品種選抜,灌水方法,病害虫対策,植付け,収穫,肥培管理までの機械化作業一貫体系への模索と多角的問題に取り組んできた。数十年の経過の中で同時期に取り組まれた対策で,これらの問題を改善すべく,ハリガネムシの防除方法の確立,品種選抜の現地試験の強化による適正品種選定(大東島に適合した早期高糖性品種の選抜),機械作業一貫体系の確立,節水型の点滴灌漑による増収技術の開発,新しい農薬(プリンスベイト)試験による生育促進効果の確認等,サトウキビ栽培上の問題点につて,抜本的な解決策を構築する道筋を確立することができた。 (キーワード:害虫防除,機械化,品種選定,点滴灌漑,地力増進) |
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肝機能改善効果を有する紫サツマイモジュースの開発 |
株式会社ヤクルト本社 石川 文保・工藤 辰幸・狩野 光芳 宮崎県農協果汁株式会社 薗田 良一・坂谷 洋一郎 |
紫サツマイモの持つ機能性を強く訴求するためにアントシアニンが豊富に含まれるアヤムラサキを100%使用した美味しい野菜ジュースを開発した。 このジュースを用いて肝機能改善効果の確認試験を行ったところ,肝機能マーカーの検査値が有意に改善されることが示され,本ジュースが代謝活性の中心臓器である肝臓の健康維持に役立つ食品として期待できることが分かった。また,本ジュースを飲用することにより,機能性成分アントシアニンが体内に吸収されるとともに,生体内の抗酸化活性が高まることも明らかになった。 (キーワード:紫サツマイモ,アヤムラサキ,アントシアニン,肝機能,抗酸化活性) |
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薬剤使わずに病害虫を防除する温湯消毒装置の開発 |
株式会社タイガーカワシマ 川島 誠蔵・阿部 利幸 |
コンニャクは,種芋伝染する重要病害虫が多く,無病の種芋の確保が重要である。これまでは薬剤での防除が行なわれていたが,薬剤耐性菌の出現や適用農薬のない病害虫の存在等の問題が起きている。また,環境保全への関心が高まっていることもあり,薬剤に替わる防除技術の開発が切望された。そこで,温湯消毒による防除が注目され,共同研究先である群馬県農業技術センターにおいて,50℃温湯への40〜50分間浸漬という基礎的処理条件が確立された。当開発チームでは,自社の持つイネ種子等の温湯消毒技術を応用し,コンニャク種芋の温湯消毒装置の開発を行なった。その中で,泥付きの対象物であることや大量処理等の問題点を解決した。 (キーワード:コンニャク種芋,種芋伝染,薬剤耐性菌,環境保全,温湯消毒) |
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搾乳ユニット自動搬送システムの開発 |
オリオン機械株式会社 岡谷 利幸 |
日本酪農の大半は,つなぎ飼い方式である。この方式は,個体飼養管理には適しているが,作業動線が長いため給餌作業や搾乳作業に労力を要する。また,一戸当たりの飼養頭数規模は増加傾向にあり,搾乳作業の過重労働の解決が求められていた。 本システムでは,搾乳ユニットを牛の居場所まで自動搬送,ミルク配管と自動着脱,乳房から自動離脱などを実現し,自動搬送装置4台(搾乳ユニット8台)を使用した場合,搾乳者一人で50頭を1時間で搾乳することを可能にした。 (キーワード:酪農,つなぎ飼い,搾乳ユニット,自動搬送,キャリロボ) |
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飼料用フィターゼと環境保全型飼料の開発 |
協和発酵バイオ株式会社 岡田 徹・葭谷 収平・末繁 博信・西村 省治 |
家畜用配合飼料には,植物原料由来の難消化性のリン化合物(フィチン酸)が含まれている。また,タンパク質(窒素)も過剰に配合されており,未消化のリン・窒素は糞尿中に排泄され,河川・湖沼・海洋などに流出して富栄養化の原因となり,赤潮等を誘発して水質を著しく汚染する。この問題の解決策として,筆者らはフィチン酸分解酵素"フィターゼ"を利用した低リン飼料を開発し,これに,既存技術であった結晶アミノ酸を利用した低タンパク飼料を融合させ,生産性を低下させること無く,リンと窒素を同時に低減することができる"環境保全型飼料(低リン低タンパク飼料)"のコンセプトを発案し,畜産生産農家への普及活動を行った。 (キーワード:フィターゼ,フィチン酸,低リン低タンパク飼料,環境保全型飼料,アミノ酸) |
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