Vol.34 No.3 【特 集】 第11回民間部門研究開発功績者の業績 |
フレッシュクリームの革新製法「あじわいこだわり製法」の開発 |
明治乳業株式会社 小松 恵徳・玉井 茂・豊田 活・中岡 明美・辻 直樹 |
フレッシュクリームは需要拡大すべき重要な国産乳製品とされるが,牛乳のみを原料とし,単純な工程で作られるため差別化は困難とされてきた。フレッシュクリームの高付加価値化に取り組み,牛乳を膜ろ過して乳成分を選択的に濃縮する工程と,牛乳のナチュラルテイスト製法を応用した脱酸素分離殺菌工程とを組合せた「あじわいこだわり製法」を開発した。「あじわいこだわり製法」クリームは従来品に比べて,ミルク風味や甘味が有意に強いだけでなく,低脂肪でも脂肪感が維持される。さらに卵など食材から発する不快臭を抑制する機能を持つ。菓子や料理の差別化につながる高付加価値クリームとしてプロに認知され,売上が拡大している。 (キーワード:クリーム,ナノろ過,脱酸素,ミルク風味,異臭 マスキング) |
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DFAⅡ(オリゴ糖)を用いた乳牛の低カルシウム血症予防法の開発 |
日本甜菜製糖株式会社 佐藤 忠・中井 朋一・大谷 昌之・佐渡谷 裕朗 |
乳牛の低カルシウム血症は分娩時に発生し,この疾病が誘引する周産期病も多く,簡単に実施できる効果の高い予防法が望まれていた。牛の第一胃で分解されにくいオリゴ糖;DFAⅢによる低カルシウム血症予防は,腸の上皮細胞間からカルシウム吸収を高める画期的な技術であり,分娩時の血中カルシウム濃度低下が抑制され,その後の回復も早く,その効果は加齢による影響を受けない。また,現地試験において,低カルシウム血症の関与が大きいといわれる乳熱,ダウナー症候群,胎盤停滞,第四胃変位など,分娩前後の疾病が減少した。製品販売から4年が経過し,本技術は全国の酪農家に急速に普及しつつある。 (キーワード:DFAⅢ,低カルシウム血症,オリゴ糖,タイトジャンクション) |
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アルファルファ「ケレス」の育種と限界地帯根釧への普及 |
雪印種苗株式会社 高山 光男 |
アルファルファ「ケレス」の開発は,昭和57年から開始された。耐凍性に優れるロシア,カナダなどの材料とそばかす病抵抗性を付与するためにヨーロッパの材料が交配され,選抜は北海道東部において行われた。「ケレス」の永続性が向上した要因は,耐凍性,そばかす病・雪腐病抵抗性が改善されたことと,断根が問題になる土壌凍結地帯では根が横に広がる特性を付与できたことである。平成16年にその優良性が認められ北海道の優良品種に認定され,平成19年2月に品種登録,同年春より本格的に販売された。 新品種の定着率を改善する造成方法として,従来のプラウを利用した表層を鋤き込む天地返しではなく,表層に蓄積されたリン酸と糞尿,カルシウム,リン酸資材を施用して攪拌する方法を提案した結果,定着率が改善された。 (キーワード:そばかす病抵抗性,雪腐病抵抗性,永続性,表層攪拌法) |
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ねぎ収穫機の開発 |
小橋工業株式会社 小橋 健志・小渕 敏之・松尾 泰樹・藤原 政利 |
ねぎ栽培における収穫作業は,重労働で省力化が要望されていた。さらに,開発当時は,ねぎを含む農産物の輸入自由化の論議も活発化してきた時期であり,国内農産物の生産性向上とコスト低減の両立が急務の状況であった。 本機は,堀上げから収容作業を一人でできる自走式の乗用型収穫機で作業能率は,約0.7~2.0a/h(作業者1~2名)である。これは,慣行作業の約3倍に達するものである。 (キーワード:ねぎ,小型乗用収穫機,収容) |
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省力かつドリフト軽減が可能な新規製剤「豆つぶ剤」 |
クミアイ化学工業株式会社 豆つぶ剤開発グループ |
水田用農薬製剤豆つぶ剤は,文字通り豆粒状のユニークな形態の製剤である。通常の水田用粒剤は,10a当たり1㎏~3㎏を均一に散布することを前提とした製剤であるのに対して,豆つぶ剤は10a当たり250gと少ない量を不均一に散布しても水田全体に有効成分を均一に行き渡らせることが可能な拡散性が非常に良好な製剤である。この製剤は,水田に入らず様々な省力的な散布ができ,有効成分のドリフトもないため,安全に散布することができる。この形態の製剤は国内で15品目あり,平成22年12月現在の普及面積は約75,000haである。 (キーワード:農薬製剤,省力,水田,散布,ドリフト) |
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青色系シクラメン品種の育成と組織培養による量産技術の開発 |
北興化学工業株式会社 村山 俊夫・杉山 正夫・寺川 輝彦 |
シクラメンの培養細胞を利用した突然変異技術により,今までにない青色系花色を持った品種「フレグランスミニ・アメジストブルー」の作出に成功した。さらに,花弁数が10枚ある八重咲き品種との交配により「八重咲きライラックブルー」を作出した。シクラメンの品種改良における培養技術の利用は,独創的で,育種期間の短縮や従来法では作出が難しい花色などの開発に有効である。また,シクラメンは,種子による繁殖では花色などの重要な形質が安定しないことから,組織培養を利用した培養苗の大量生産技術を開発した。
(キーワード:シクラメン,組織培養,花色変異,量産技術,不定胚) |
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人工授精・受精卵移植兼用子宮深部注入用カテーテルの開発 |
富士平工業株式会社 中野 貞雄・渡邉 剛 |
豚の子宮は,1)腟から子宮へとつながる「子宮頸管」の構造が複雑で,2)胎子が育つ「子宮角」が長く曲がりくねっている,という特徴的な形をしているため,牛のように子宮深部(子宮角内)へ器具を挿入することが難しかった。そのため,豚の人工授精では,子宮頸管内に大量の希釈精液を注入する方法が主にとられている。そこで,豚の子宮の特徴を考慮し,子宮深部に挿入可能なカテーテルセットを開発し,従来法よりも少ない精液を用いた人工授精の有用性について実証した。一方,非外科的(開腹手術を必要としない)受精卵(胚)移植は,牛の生産現場では,ほぼ実用化されているが,前述の通り,豚の子宮が特徴的な形であるため,胚を子宮深部に移植するためには開腹手術が必要であった。しかし,この方法は手術に多くの手間やコストが必要となるため,一般的には普及していない。一方,非外科的胚移植は,技術的な問題から実用化に至っていないものの,開腹手術の必要がないことから受胚豚への負担が軽く,生産現場での実施も可能であるため,今回開発した子宮深部注入用カテーテルを用いて,非外科的胚移植を行い,実用性について検証したので報告する。 (キーワード:豚子宮深部人工授精,非外科的胚移植,凍結精液) |
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アップルポテト「タワラムラサキ」ほか9品種の育成 |
俵農場 俵 正彦 |
馬鈴薯の栽培においては,重要病害であるそうか病や青枯病対策として,作付け前に薬剤による消毒が広く行われている。私は,病害抵抗性を有し,薬剤に頼らない,機能性にも優れる馬鈴薯の育成に取り組むことにした。 突然変異から生まれた,後の「タワラムラサキ」を8年かけて固定化し,日本で初めて個人による育成品種として登録を受けた。その後9品種を登録したが,ほとんどの品種は,そうか病や青枯病に強く,肥効性も高く,減肥しての栽培が可能である。平成22年より種イモ生産に取り組み,平成23年にはさらに5品種登録する予定である。 (キーワード:タワラムラサキ,馬鈴薯,新品種,突然変異,アップルポテト) |
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葉付き大根自動洗浄機の開発 |
株式会社エフ・イー 佐々木 通彦・湯口 孝二・稲垣 幸治 |
従来,手洗いしか方法が無かった葉付き大根を,高圧洗浄水噴射装置と独自技術の斜め植毛ブラシによってブラシ表面に水膜効果を生み,肌の柔らかい大根表面ばかりではなく,葉も傷をつけずにきれいに洗浄できる自動洗浄機を開発した。 自動洗浄可能になったことで,生産者は冷たい水に1日中手を浸しながら手洗いするという過酷な労働から解放されると同時に,処理量が大幅に向上し,応えられなかった注文量に応えられるようになり,高付加価値商品を需要に応じて出荷することで,高い収益を確保することができるようになった。 (キーワード:高圧洗浄水による洗浄,斜め植毛ブラシの水膜効果) |
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高品質凡用食材の加工及び食品調理用の革新的加熱実用機の開発 |
株式会社タイヨー製作所 小笠原 幸雄 |
収穫時期が集中して,端境期に品不足が発生する野菜や,多収穫時に発生する産地廃棄に対する対策として,旬の美味しい野菜を生産地で高品質一次加工し,安心・安全でおいしい素材を長期間安定的に消費者へ提供するシステムを構築すると共に,高品質加工技術(殺菌・調理加工)による病院および学校給食の改善や,中食・外食産業に対する高品質かつ安全な食品の供給を目的として,高品質汎用食材の加工および食品調理技術とその実用化装置の開発を行った。 (キーワード:過熱水蒸気,微細水滴,殺菌,調理,加熱) |
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