Vol.34 No.6 【特 集】 用途の多様化をめざすサツマイモ新品種 |
サツマイモの新品種開発 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 総合企画調整部 熊谷 亨 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター 小巻 克己 |
現在のサツマイモの作付面積は全国で約4万ha,収穫量は100万トン前後で,それぞれピーク時の十分の一,七分の一に減少している。単位面積当たりの乾物生産量が多く,栄養的にも優れる,作物・野菜であるサツマイモのこれまでに開発された多様な品種について概説した後,今後の品種開発の方向,および地球温暖化,異常気象に対応できるような技術開発の必要性について概説する。 (キーワード:サツマイモ,品種,良食味,高品質,需要拡大) |
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青果用サツマイモ品種「べにまさり」の特徴と普及に向けた取り組み |
茨城県農業総合センター農業研究所 樫村 英一 |
青果用品種「べにまさり」は,肉質が粘質で掘り取り直後からしっとりしていて,特に焼き芋に適した良食味品種である。しかし,栽培する上でいくつかの技術的な課題があったため,JA,普及センター,専門技術指導員,試験研究機関からなるプロジェクトチームを組み課題の解決に当たった。「べにまさり」の特徴と課題解決の取り組みについて紹介する。 (キーワード:サツマイモ,べにまさり,品質,粘質,焼き芋,普及) |
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甘みが強い青果用品種「べにはるか」の特徴と普及 |
大分県農林水産研究指導センター 佐藤 郁 |
甘みが強い青果用サツマイモ品種「べにはるか」は食味が良く,形状も優れ,貯蔵性も高いという特徴を持つことから栽培面積が拡大している。「べにはるか」はβ―アミラーゼの活性が高いため蒸しいもの糖度が高い。さらに貯蔵により糖含量が増加するが,それはショ糖と麦芽糖が増加するためであり,特に蒸しいもの甘みはショ糖の増加によるものである。この特徴を活かすため独自の基準により認定したブランド名が"甘太くん"である。 (キーワード; 青果用サツマイモ,べにはるか,ブランド,糖含量,甘太くん) |
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食べきりサイズ「ひめあやか」の導入に向けた取り組み |
埼玉県農林総合研究センター 上田 智子 |
「ひめあやか」は,(独)農業・食品産業技術総合研究機構 作物研究所が育成したサツマイモの新品種である。食味,肉色が良好で,100〜250gの食べきりサイズになる芋が多く収穫できることなどから,新しいタイプのサツマイモとして埼玉県内に導入され始めている。県内の主要品種である「ベニアズマ」と比較して,低収量であるが,作付け時期や栽培方法を工夫することで食べきりサイズの規格収量が向上する。特に焼き芋の食味や食感などが良好で消費者からの評価が高く,直売所やイベント用に栽培されている。 (キーワード:サツマイモ,ひめあやか,良食味,食べきりサイズ,焼き芋) |
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短時間の調理でも甘くておいしい「クイックスイート」の事業展開と技術的課題 |
全国農業協同組合連合会(JA全農) 営農販売企画部 阿部 浩人 |
「クイックスイート」は低温糊化性でん粉を持つ品種として初めて作出されたサツマイモ品種である。JA全農は,この品種が持つ食味の良さと,新たなでん粉特性に注目し,新商品の開発を通じて生産から販売まで一貫した取り組みを行ってきた。低温糊化性という特性を活かすために電子レンジ用の調理袋を制作し,首都圏の量販店などに提案するとともに,JA全農直営店での試験販売,さらには用途拡大のために蒸切干の試作製造を行った。 また,「クイックスイート」の採苗性の低さは本品種の普及拡大に向けた大きな課題となっており,今後は苗の安定生産技術の早期確立が望まれる。 (キーワード:サツマイモ,クイックスイート,でん粉,糊化,糖度,調理) |
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低温糊化性でん粉を含む原料用品種「こなみずき」の開発と特徴 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター 片山 健二 |
サツマイモでん粉の食品への用途を拡大するため,低温糊化性でん粉を含む原料用新品種「こなみずき」を育成した。「こなみずき」は,病虫害抵抗性に優れ,標準無マルチ栽培におけるでん粉収量は
一般的な原料用品種「シロユタカ」と同程度である。そのでん粉は,一般的な品種より20℃程度低い温度で糊化し,でん粉ゲルを冷蔵保存した時の離水や硬化が少なく耐老化性に優れるとともに,高分解性を
示す。本品種の育成経過および特徴について紹介する。
(キーワード:サツマイモ,こなみずき,でん粉,糊化温度,老化性,育種) |
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サツマイモでん粉利用の多様化に向けた取り組み |
鹿児島県農業開発総合センター 農産物加工研究指導センター 時村 金愛 |
サツマイモでん粉は,約2割がわらび餅やくず餅などの食品用として使用されるが,残りの約8割が糖化用であり,用途拡大を図る必要がある。サツマイモでん粉は,でん粉ゲルが硬くなる速度(老化速
度)や糊化開始温度が品種によって異なる特徴を有しており,それぞれのでん粉特性に合わせた幅広い用途が期待できる。なかでも耐老化性を有する「こなみずき」のサツマイモでん粉は,でん粉ゲルの保形
性や食感改善などに優れており,落花生豆腐やうどんへの利用適性が高い。サツマイモでん粉の用途拡大を図るためには,今後も特徴のあるでん粉特性を有した品種の育成とともに,低コスト化や高品質化へ
の取り組みを継続する必要がある。
(キーワード:サツマイモでん粉,用途拡大,品種,でん粉特性,利用適性) |
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茨城県の新しいサツマイモ蒸切干し用準奨励品種「ほしキラリ」について |
茨城県農業総合センター農業研究所 青木 隆治 |
茨城県のサツマイモ蒸切干しは,全国の産出額の98%を占める。主力品種は1961年度に奨励品種に採用した「タマユタカ」であるが,この品種は蒸切干しの商品性が大きく低下する障害"シロタ"が発生しやすい欠点がある。「ほしキラリ」は,「タマユタカ」より収量は劣るもののシロタの発生が少なく,蒸切干しの色が優れ,食味も良く,新たに準奨励品種に採用する。収量については,慣行の無マルチ栽培・在圃日数140日栽培に対して,黒マルチ栽培とし,在圃日数を延長することによって増収する。 (キーワード:サツマイモ,蒸切干し,ほしキラリ,準奨励品種,シロタ,増収) |
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「ダイチノユメ」の特性と栽培技術 |
鹿児島県農業開発総合センター大隅支場 西原 悟 |
「ダイチノユメ」は,(独)農研機構九州沖縄農業研究センターで育成され,2003年に登録された高でん粉・多収の品種である。鹿児島県では2003年にでん粉原料用サツマイモとして奨励品種に採用した。いもの形状は紡錘〜長紡錘形,いも皮色は白,肉色は淡黄白である。「シロユタカ」,「コガネセンガン」より多収で,でん粉歩留も高い。栽培技術としては,育苗時の苗床伏込間隔は25cm×25cmが適当である。また,栽植密度は4月,5月植えは栽植本数200〜278本/aが適し,6月植えは生育期間が短いことから栽植本数250〜278本/aが適する。(キ−ワード:サツマイモ,ダイチノユメ,でん粉原料用,栽培技術) |
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