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Vol.1 No.3
【特 集】 第13回民間部門研究開発功績者の業績


ダリアの画期的な新品種育成と普及
秋田国際ダリア園    鷲澤 幸治
 ダリアは,従来花壇用の品種が主であり,切り花用としては小輪系品種がわずかに生産されているだけであった。ダリアの普及を図るため,花持ちが良く,生産性などの切り花特性の高い品種の育成に取り組んだ。これまでに1,000品種以上を育成し,その中で「虹」は,フランスナショナルダリアショーの外国部門でファーストグランプリを受賞した。また「黒蝶」はこれまでの切り花にない黒紫色の花色で,流通しているダリア品種の24%を占有している。また,国内の産地で栽培方法の勉強会を行い,栽培技術の高位水準化を目標としてダリアの普及拡大に努めている。
(キーワード:ダリア新品種,切花,市場占有率,交配育種)
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牛ボツリヌス症ワクチンの開発
株式会社微生物化学研究所    網本 勝彦・久保田 整・佐藤 博昭
 近年,わが国の牛で流行を繰り返し,畜産農家に大きな被害をもたらしていた牛ボツリヌス症に対するワクチン開発に取り組んだ。本ワクチンは,ボツリヌス菌の培養液に含まれる毒素を無毒化したトキソイドを有効成分としているが,本毒素の製造には費用が掛かるという問題があった。また,牛に対して予防に必要な抗体量が明らかされていなかったことから基礎的な研究が必要であった。これら問題点を解決してワクチンは2010年8月に発売され,同年には当初の予想を上回る68,950頭分が販売された。2012年11月末までの累計販売量は12万頭分を超えたが,現在までに本ワクチン接種牛に副作用が発生した報告はなく,用法・用量に従ってワクチンを注射した牛にボツリヌス症が発生した情報もない。
(キーワード:京都微研,キャトルウィンBO2,牛ボツリヌス症,ボツリヌス毒素,ワクチン)
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減農薬栽培の普及に貢献した農業用被覆資材の開発
日本ワイドクロス株式会社    廣橋 敏次
 元来,人間が生活していく上で食事は必要不可欠なものであり,「食の安全性」は有史以来の重要なテーマである。しかし,近年では残留農薬,遺伝子組み換え,食品添加物,食中毒,環境ホルモンなどといった諸問題が世界中で社会問題と化している。それらの問題の中でも当社は特に「残留農薬」に注目し,減農薬栽培による安全・安心な農業業を実現するための製品開発に取り組んだ。その結果,従来品の農業資材の原料や製法の改良により開発した減農薬・無農薬で農作物を守る防虫ネット「サンサンネット」は,累計販売数量約43,000万㎡と日本全国に広く普及し,また危険性が指摘される除草剤を使用せずに防草効果を発揮する「アグリシート」も評価され,累計販売数量は約9,000万㎡と普及している。
(キーワード:サンサンネット,寒冷紗,モノフィラメント糸,色彩効果,アグリシート)
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ディスク式中耕培土機の開発と普及
小橋工業株式会社  長屋 克成・遠藤 準
井関農機株式会社  永井 隆・永井 真人
鋤柄農機株式会社  鋤柄 忠良
 梅雨時に行うことが多い中耕培土作業では,従来機(ロータリ式中耕機)の湿潤土壌適応性や作業速度が低い問題があった。そこで,前後に設けた2対のディスクが作物条間を通過する際に回転し,土を横に反転移動させることにより中耕培土を行う機械を開発した。開発機は,従来機の2倍以上の高速作業ができ燃料消費量を半減できること,土の反転性が良く従来機に比べ雑草をほぼ半減できること,湿潤な土壌条件では,従来機に比べ土の練り付けや圧縮が少なく砕土が良好なため,同条件で作業する場合の作物収量を高められることなどの特徴を持つ。開発機は2009年に市販化され,普及が進んでいる。
(キーワード:中耕,培土,ディスク,ロータリ,湿潤土壌,雑草,大豆)
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高湿高鮮度庫「チルドマン®」の開発
オリオン機械株式会社    太田 正明・神津 和重・七海 和幸・大竹 史哲・赤堀 好宏
 "ノンラップで乾かない"をキャッチフレーズにフードサービス業界に新風を吹き込んだオリオンチルドマンは世界初のエアパス5面冷却方式の業務用高湿冷蔵庫である。一般的な冷蔵庫は庫内にエバポレータと呼ばれる冷却器と送風ファンを有し,直接冷風を循環させることにより庫内を冷却する。しかし,この冷風により食材は乾燥し細胞の変性が進み,冷凍機のON―OFFやデフロストによる大きな庫内温度変化は,激しい速度で食品の鮮度劣化を進行させていた。このような状況に鑑み,庫内の温度変化が極力小さい高湿チルド保存庫の開発が望まれ,チルドマンはエアパス5面冷却方式の採用により,加湿器を使用せず90%以上の高湿度維持と庫内温度精度±0.5℃という制御を実現した。
(キーワード:チルドマン,エアパス5面冷却,高湿冷蔵庫,高湿90%,庫内温度±0.5℃)
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イチゴのクラウン温度制御法の開発
株式会社ナチュラルステップ    伏原 肇
 イチゴの一部である株元(クラウン)だけの温度を制御することで,花芽分化が安定して早くなり収量が増加し,環境調節のための光熱費も大幅に削減出来た。温度調整した水を専用のチューブ(2連チューブ)内を往復で通水することで長い栽培床でも温度ムラを少なくするとともに,そのチューブをイチゴのクラウン部に接触させることで,設置が容易で効果的な温度制御法を確立した。専用の制御装置を使って通水する他に,地下水が豊富な場所であれば地下水をそのまま利用することが出来,コストのさらなる削減も可能となった。
(キーワード:イチゴ,クラウン温度制御法,局所温度制御,コスト削減,多収)
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障害者に配慮した農業機械の開発
京丸園株式会社    鈴木 厚志
 農業には,その有する自然環境は大きな福祉の力を持っており,障害者福祉の観点から,農業における障害者の雇用の推進を図ることが求められている。不景気の影響から障害者の研修すら受け入れる企業が減っているのが現状である。そこで,農業分野において,障害者の特性を活かした仕事を創り出し,農業の作業効率化と障害者雇用の推進につなげられないかと模索し,「虫トレーラ」および「リハビリ機能付き作業機」を開発した。
(キーワード:障害者福祉,農業機械,虫トレーラ,リハビリ機能付き作業機)
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高品質発行TMRの生産供給技術の開発による地域内資源循環の達成
(独)農業・食品産業技術総合研究機構畜産草地研究所   岡田 建史・藤原 基男
那須TMR利用者懇談会    人見 二三夫
 酪農家の多くが,流通飼料購入費の増加,自給飼料生産における過重労働,機械設備投資の増大,糞尿排出量の増加など個別農家では対応困難な問題を抱えている。これらを解決するため,(株)那須の農(なすのみのり)では,那須TMR利用者懇談会との共同で,①飼料資源を低コストにTMRに調製し酪農家に供給するTMRセンターと,②稲発酵粗飼料やトウモロコシサイレージなどの粗飼料生産と堆肥利用を担うコントラクターを統合し,水田作を中心とする粗飼料生産-TMR製造・供給-家畜生産-堆肥還元の各作業を地域内で一元化することにより,耕畜連携の輪を確立した。
(キーワード:発酵TMR,稲発酵粗飼料,耕畜連携,コントラクター,TMRセンター)
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ポテトチップス用馬鈴しょ「きたひめ」の開発
ホクレン農業協同組合連合会     安田 慎一・北 智幸・在原 章公・五十嵐 敏
児玉 幹司・後藤 正宣・長谷川 久記・大坂 雅博
 優れた加工適性と収量性を兼ね備えたポテトチップス用馬鈴しょ品種「きたひめ」を開発した。  本品種は難糖化性を持つシストセンチュウ抵抗性品種として初めて品種登録出願,北海道優良品種として採用された。従来品種ではチップカラーの維持が困難であった6℃貯蔵でも良好な品位を保つことがで き,近年新たに実用化されたエチレン貯蔵への適性も高いことが明らかとなり,メーカーからの増産要請は大きい。
(キーワード:馬鈴しょ,ポテトチップス,還元糖,チップカラー,エチレン貯蔵)
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傾斜地作業の労力軽減に貢献する狭幅作業道造成機の開発
マメトラ四国機器株式会社    豊田 和範・岩上 久仁男
 歩行型管理機をベースにして,耕うん爪の配置,走行速度,動力伝達機構を改良し,傾斜25度以上の斜面を走行しながら等高線方向に幅30~50cmの作業道を造成できる機械を開発した。これにより,傾斜地果樹園での運搬作業などの労力軽減と能率向上を実現した。さらに,水田畦畔法面では草刈り用足場の確保に利用され,作業姿勢の改善と安全性の向上が図られた。
(キーワード:傾斜地,作業道,歩行型管理機,片排土ロータリ)
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自然界から分離された高製パン性「とかち野®酵母」の開発と商品化
日本甜菜製糖株式会社    田村 雅彦・三雲 大・石栗 秀
 製パン材料のすべてを地域内で賄うことができる北海道十勝地方において,製パンに最も重要な原材料であるパン酵母も"オール十勝産"とすべく商品開発をおこなった。十勝地方に育つ花や果実から分離された酵母の中から選ばれた「とかち野®酵母」は無糖生地と高糖生地での発酵力に優れ,穏やかな香味を有し,さらに長期保存可能な乾燥酵母として商品化した。日本の食糧基地である北海道十勝地方のフードバレー構想や地産地消にも貢献する素材であり,農産品の付加価値向上にも役立って行くことが期待される。
(キーワード:とかち野®酵母,菌株,培養条件,地域資源)
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