Vol.1 No.8 【特 集】 農村の6次産業化を支える地域特産作物と利用加工技術 |
麺類やスプラウトに適したダッタンソバ品種の育成と利用 | ||
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ダッタンソバはソバ属の栽培植物の一種でルチン(ポリフェノールの一種)を高含有する。しかし別名「苦ソバ」と呼ばれ,麺などの加工食品は一般的に苦くなるとされる。また強力なルチン分解酵素活性を持つため,たとえば製麺時等に粉へ加水すると,ルチンの大部分が瞬時に分解してしまう。新品種「満天きらり」はルチン分解酵素活性が従来品種の数百分の一とかなり弱くまた粉が苦くないため,ルチンが多く良食味の麺等の食品を製造できる。「北海T9,10号」はそれぞれスプラウト(発芽野菜)の茎が太い/赤色が鮮やか等の特徴があり,またルチンが従来品種より多いため,スプラウトやその乾燥粉末(食品副原料や青汁用途)に適する。 (キーワード:ダッタンソバ,品種開発,ルチン,苦み,発芽野菜) |
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おいしい焼き芋の周年安定供給技術の確立 | ||
茨城県鹿行農林事務所 森田 有紀 | ||
消費者は「焼き芋」に対して,「いつ食べてもおいしく,どこでも手頃な価格で買える」ことを望んでいる。そのようなニーズに応えるべく,茨城県JAなめがた甘藷部会では,2003年から取引先量販店と連携した「店舗内焼き芋販売」に取り組み,販売単価の維持・向上,シェア拡大を実現している。茨城県行方地域農業改良普及センターでは,焼き芋を核にした販売戦略を構築するため,産地・県研究所と連携しながら,焼き芋の焼き方研究,食味安定化技術の開発,周年安定供給のための貯蔵技術の普及,焼き芋需要に合う規格生産技術の確立などを一体的に取り組み,産地の周年安定良食味出荷技術確立を支援してきた。 (キーワード:焼き芋,良食味,周年安定供給,店舗内焼き芋販売,消費者) |
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本土向けサトウキビ品種「黒海道」による既存産地の活性化と産地拡大 | ||
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 寺内 方克 | ||
本土において江戸時代に普及したサトウキビは今も栽培され,和三盆糖などの特産品作りに利用されているが,低品質・低収量の解決が課題となっている。これらの課題は,本土向け品種「黒海道」によって原料の高品質化を図り,また,植え付け時の透明マルチによって生育を促進することで改善できる。一方,収穫されたサトウキビは,使用する器具や石灰添加の有無によって多様な黒糖に仕上げることが可能で,他にも様々な加工品を開発することができる。種苗供給システムの確立など,課題も多いが,原料生産および加工の技術改善をはかることで既存産地の活性化や新たな産地形成が期待できる。 (キーワード:さとうきび,黒糖,製糖,品種,ポリマルチ) |
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黒ダイズ品種「クロダマル」を活用した6次産業化モデルの構築〜マーケティングサイエンスからの挑戦〜 | ||
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター 後藤 一寿 | ||
地域農業を活性化する手段として,農商工連携や6次産業化に注目が集まっている。これらを成功させる要因の一つに,新品種の活用がある。そこで,九州向けに育成された黒ダイズ新品種「クロダマル」を用いて,九州に新しい黒ダイズのブランド産地を形成したプロセスや成功の要因について解説する。特に社会科学研究者の関与による具体的な成功事例を示しながら,コーディネーターの役割やコンソーシアム形成の方策,成功する6次産業化モデル構築の必要性などについて解説し,新品種普及のための新しい考え方に基づく取り組みである,「九州黒大豆プラットフォーム」について紹介する。 (キーワード:クロダマル,6次産業化,マーケティングサイエンス,プラットフォーム) |
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ハトムギ新品種「あきしずく」と新用途開発による国内生産の拡大 | ||
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター 手塚 隆久 | ||
ハトムギは耐湿性を持つので,ダイズが栽培できない水田でも転作作物として栽培できる。ハトムギ産地は北海道から九州まで点在し,6次産業化を支える特産作物として作付けられている。用途はペットボトル茶としての需要が多く,さらに精白粒を加工した菓子類が販売されている。ハトムギ子実は漢方薬ヨクイニンとして処方されてきたことから,最近では化粧品や飲む化粧品の開発も行われている。ハトムギ品種"あきしずく"の育成によって原料の安定供給が可能になった。 (キーワード:ハトムギ,特産作物,品種,あきしずく,6次産業化) |
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春まきソバ品種「春のいぶき」を用いた生産・販売の拡大と地域振興 | ||
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター 原 貴洋 | ||
春まき栽培は,3〜4月に播種し6月中旬ころまでに収穫するソバの新しい作型であり,夏の需要期に新ソバを出荷でき,国内産ソバの安定供給に寄与できる。新品種「春のいぶき」は,九州の春まき栽培で最も多収な品種で,食味に優れる。春まき栽培で多収となる既存品種に比べ,「春のいぶき」は穂発芽が少ない。大分県豊後高田市では,「春のいぶき」を用いた春まき栽培69haが,主に水稲前作やソバ二期作で行われ,観光資源との連携,乾麺加工・販売,そば祭,そば打ち講習会,手打ちそば店の認定制度等により,6次産業化が進められている。熊本県,鹿児島県,長崎県,佐賀県でも春のいぶきを活用した6次産業化が進んでいる。 (キーワード:品種,穂発芽,九州,輪作,食味) |
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ナタネ・ゴマの育成優良品種の特性と新産業創出への寄与 | ||
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 作物研究所 大潟 直樹 | ||
ナタネとゴマは日本で古くから栽培されてきた油料作物であり,地域特産農産物としての活用が期待されている。農業・食品産業技術総合研究機構はナタネとゴマの新品種を開発してきた。各地域に適したナタネとゴマの新品種の栽培特性や成分特性を示し,農村地域の6次産業化に向けたナタネとゴマの有効性について明らかにした。 (キーワード:油料作物,無エルシン酸,リグナン,6次産業化) |
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