Vol.1 No.9
【特 集】 種苗・食品産業の海外展開


野菜種苗産業の現状と今後の国際戦略
タキイ種苗株式会社    初田 和雄
 わが国の野菜栽培面積は35年間で約10%減少し,品目的にも嗜好の変化などによって大きな差が生じている。一方,国民一人当たりの野菜の消費量は食生活の変化により年々減少している。農業就業者は20年前の半分近くに激減し,平均年齢は高齢化の一途をたどっているが,野菜栽培農家は漸減にとどまっており産地では若年層への取り組み,一農家当たりの栽培面積の増加も認められる。野菜種子市場は,移植作物では専門業者から苗を購入,直播作物では播種機の改良や間引き労力の削減によって播種量が減少するなど市場全体では漸減傾向にある。種苗の販売面ではホームセンターが家庭菜園市場だけではなく,専業農家向けにも販売を拡大しており,既存種苗店との競争が激化,小売種苗店の減少が生じている。育種面では新技術の活用による育種年限の短縮,また海外育種メーカーの参入もあり,ますます競争が激化傾向にある。国内主力メーカーは海外市場開拓を進めているが,海外メーカーも寡占化が進み競争は激化している。その中で生き延びる為には育種・販売の両面で現地化と,よりきめ細 かな品種対応が必要不可欠になってきている。
(キーワード:野菜種子市場,家庭菜園市場,海外市場開拓)
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わが国花き種苗産業の現状と今後の世界展開
株式会社ミヨシグループ    三好 正一
 昨今の日本の種苗会社の世界での活躍はわが国の花き業界においてあまり知られていない。しかし品目や地域によっては海外での流通品種の上位を日本の育種開発陣の品種が席巻している。国際的には育種を中心とした種苗会社の合併やM&Aなどの合従連衡が激しく進んで企業規模が肥大化している中で,日本の種苗会社は四季のある日本の環境や技術志向の高い生産者ニーズに対応する事で育種開発力を高め,いまだ独自の企業形態を保っている。そして日本独特の流通の中で培ってきたその開発力をベースに世界基準(=自動化や鮮度保証など)に合わせた開発をして海外販売につなげている。
(キーワード:営農指導,需要低迷,輸入切り花,花もち保証,認証制度,自動化)
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オランダ種苗産業調査結果の概要
農林水産省食糧産業局    大島 立大・小林 万記
 オランダでは,種苗産業における競争力の底上げを図るため,「Plantum」を中核とした産官学共同による海外遺伝資源の探索・収集や,先端技術開発・共同利用の拠点である「KeyGene」による各種サービスの提供,ワーゲニンゲン大学を中心とした産学連携による種苗産業に関わる人材の計画的育成,種苗会社や卸売市場等が共同で行う育成者権侵害対策など,種苗産業全体として取り組んでいる。
(キーワード:オランダ種苗産業,Plantum,Keygene,ワーゲニンゲン大学)
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食料・農業植物遺伝資源条約(ITPGR)の締結について
農林水産技術会議事務局    鈴木 富男
 今般,第183回通常国会において,「食料及び農業のための植物遺伝資源に関する国際条約(ITPGR)」が採択された。本条約は,条約加盟国のジーンバンクをネットワーク化して,各国が保有する植物遺伝資源を相互に利用できるよう,取得方法や利益配分等のルールを定めるものである。今後,わが国においては,多数国間の制度の対象となっていない一部の野菜や花き等も含め,本条約の枠組みを利用 して植物遺伝資源の国際的な融通を積極的に推進するとともに,途上国ジーンバンク等との協力関係をさらに強化し,未探索の有用な植物遺伝資源を入手できる環境の整備にさらに取り組む必要がある。
(キーワード:植物遺伝資源,ITPGR,CBD,育種)
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キッコーマンの海外展開について
キッコーマン株式会社    山下 弘太郎
 日本の食品企業の中で,早くから海外での事業に携わり,2013年3月期には売上の46%,営業利益の66%を海外事業が占めるに至ったキッコーマンの海外展開について述べる。その前史からはじめ,販売会社によるアメリカでの本格的市場開拓,そしてアメリカに工場を建設する過程については少し詳しく説明した。そして,その後のグローバル展開の中で,弊社が何を考え,どのような姿勢で展開を行ってきたかを含め,食文化の国際交流を通じた浸透をめざすグループの姿を紹介する。
(キーワード:潜在需要の顕在化,万能調味料,経営の現地化,グローバルビジョン2020,食文化の国際交流)
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