Vol.2 No.2 【特 集】 農作物品種開発の新展開 |
作物育種研究の今日的課題 | ||
農林水産省農林水産技術会議事務局 中谷 誠 | ||
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イネの育種展望と新品種−1)食用加工用品種 | ||
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 作物研究所 石井 卓郎 | ||
農研機構では,業務用多収品種,米粉用品種の育成を主な目標として,水稲食用加工用品種の育成を進めている。業務用多収品種として,「あきだわら」「やまだわら」等を育成した。また,米粉パン用品種として「ゆめふわり」,米粉めん用品種として「越のかおり」を育成した。 (キーワード:水稲育種,業務用品種,米粉用品種,多収,低コスト) |
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イネの育種展望と新品種−2)飼料用品種 | ||
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米の消費量の減少に対応するため,飼料用の水稲を作付することが注目されている。飼料用米・イネ発酵粗飼料(WCS)用として多くの品種が育成されている。飼料用米向け品種の「モミロマン」と「もちだわら」は,登熟期間が長く,耐倒伏性が極めて強く,粗玄米収量が高い。イネWCS向け品種の「たちすずか」と「たちはやて」は,極長稈で茎葉が多収となるWCS専用品種である。炭水化物を消化されやすい茎葉中に蓄積するため可消化養分総量(TDN)が高い。今後は,ゲノミックセレクション等の新しい育種法を取り入れながら,多収やエサとしての価値の向上を目指す。また,漏生イネの防除を目的とした除草剤感受性の飼料用のイネへの導入も検討する。 (キーワード:飼料用米,イネ発酵粗飼料(WCS),登熟期間,耐倒伏性,粗玄米収量,極長稈,茎葉が多収,漏生イネの防除) |
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多収化に向けたダイズ育種と最近の新品種 | ||
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 作物研究所 高橋 浩司 | ||
ダイズの国内生産量や作付面積は減少傾向で,単収の伸びはみられていない。しかし,国際価格の高止まりなどもあり,国産ダイズの重要性はますます高まっている。ダイズの品種開発においては,遺伝子情報を利用して耐病虫性や難裂莢性等を主要品種に導入するピンポイント改良により3品種が育成され,普及に向けた取り組みが始まっている。また,収量性の向上や安定生産に向けた品種開発では,海外遺伝資源の積極的利用や早播栽培による安定多収化をめざしている。今後は,生産者や実需者,関係機関が一層連携して,品種開発と普及を進めていくことが求められる。 (キーワード:ダイズ,育種,新品種,遺伝子情報,多収性) |
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カンキツ育種の展望と利用が期待される新品種 | ||
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 吉岡 照高 | ||
わが国の温州ミカンの品種開発は,これまで枝変わりなどによる優良変異体の探索および珠心胚育種により発展してきた。今後は,より安定的に高品質果実生産が可能な品種が求められる。一方,温州ミカン以外のカンキツの品種開発は,「清見」の育成以後,交雑育種により大きく発展した。現在では良食味個体の獲得は困難ではなくなってきており,普及が期待される新品種も充実してきている。今後は,DNAマーカー等の利用による育種の効率化を進め,省力・低コスト栽培に関連のある隔年結果性や栽培性を重視した育種が必要となる。 (キーワード:温州ミカン,中晩生カンキツ,育種目標,隔年結果性,DNAマーカー) |
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日本におけるリンゴ品種改良の現状と展望 | ||
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 阿部 和幸 | ||
リンゴの品種改良は果実品質の改善を目標とする交雑育種によって進められ,「ふじ」,「つがる」などの国産品種が選抜育成され,現在もわが国の主要品種として栽培されている。最近は「ふじ」の子孫品種が多数育成され,「シナノスイート」などの良食味品種の栽培が増えつつある。今後のリンゴ育種では品質改善に加えて,気候温暖化,生産従事者の高齢化,果実消費量の漸減などに対応するために,着色性,省力栽培に向く樹形,調理・加工適性などを育種目標として,新たな良食味品種を育成することが重要課題である。果皮着色性や省力栽培に適する樹形に関する知見が蓄積しており,育種への応用による品種育成の進展が期待される。 (キーワード:リンゴ,品種改良,交雑,品質) |
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果菜類の育種展望と新品種 | ||
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所 野口 裕司 | ||
栄養成長と生殖成長を同時進行し収穫期間の長い果菜類では,環境制御の可能な施設での栽培が増加しており,養液栽培適性,省力化,抵抗性,高品質化が重要な育種目標となっている。農研機構では,主要な果菜類について施設栽培適性が高い,あるいは消費者や生産者のニーズに対応した品種の開発を進め,養液栽培適性の高い高糖度・高生産性トマト系統,調理用トマト品種,単為結果性ナス,完全ブルームレスキュウリ系統,省力型メロン品種,温暖地適応性の高い四季成り性イチゴ品種,高ビタミンC含量および強芳香性イチゴ品種などを育成している。 (キーワード:果菜類,施設栽培,省力,高品質,機能性) |
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葉根菜類の育種展望と新品種 | ||
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所 松元 哲 | ||
野菜の加工・業務用需要の増加に伴い,周年安定供給に向く品種や特色のある品種が強く求められている。短葉性ネギ「ゆめわらべ」は幅広い期間で栽培することができ,辛味成分も少ない,良食味品種である。これまで困難であった劣性形質の根こぶ病抵抗性遺伝子の導入がDNAマーカーの活用により可能になり,広範な病原型の根こぶ病菌に抵抗性を示すハクサイF1品種「あきめき」が育成された。「だいこん中間母本農5号」は,4MTB―GSLを全く含まないために加工品の保存時に問題となる黄変が生じない。「はくさい中間母本農6号」や「つけな農2号」の晩抽性に関与する量的遺伝子座が同定され,今後DNAマーカーの活用により,品種化の加速が期待されている。 (キーワード:DNAマーカー,ネギ,ダイコン,ハクサイ) |
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花きの品種育成と育種展望 | ||
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 花き研究所 小野崎 隆 | ||
育種は花きの消費拡大や花き産業発展の原動力であり,品種開発の重要性はますます高まっている。花きの品種登録出願件数は出願全体の79.1%を占め,種苗会社や個人からの出願が多い。2012年のオランダフェンロー国際園芸博覧会の花き品種コンテストではわが国の育成品種が多数受賞するなど,わが国の花き育種力は高く,国際的にも高い評価を得ている。本稿では,花き育種の特徴や育種目標,民間種苗会社,生産者,公的機関,農研機構における花き育種とその動向,展望について解説した。遺伝子組換え花きについて,花色の改変を中心に近年の開発状況を解説した。 (キーワード:品種登録,育種目標,民間種苗会社,生産者育種,遺伝子組換え花き) |
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チャの新品種と育成展望 | ||
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所 根角 厚司 | ||
飲料の消費はその国の食生活やライフスタイルに大きな影響を受けると考えられ,茶の需要拡大のためには,高度に多様化したわが国の食やライフスタイル,あるいは多様な海外の食文化や安全基準に対応していくことが求められる。そこで,農研機構では味,香りあるいは機能性に特徴を有する品種開発を目標に育種を進め,香気に特徴を有する「そうふう」,うま味の強い「はるみどり」,耐病性で夏茶品質も優れる「さえあかり」,炭疽病,輪斑病,クワシロカイガラムシに複合抵抗性の「なんめい」,栽培地域を暖地に特化した「しゅんたろう」,アントシアニン含量が高い「サンルージュ」など,多様な品種を開発している。 (キーワード:チャ品種,多様化,病虫害複合抵抗性,機能性,需要拡大) |
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