Vol.2 No.3 【特 集】 第14回民間部門研究開発功績者の業績 |
免疫賦活多糖を産生する乳酸菌を活用した機能性ヨーグルトの開発 | ||||
株式会社明治 食機能科学研究所 牧野 聖也・指原 紀宏・狩野 宏 | ||||
日本では少子高齢化が急速に進行しており,高齢者の健康長寿,子供の健やかな成長が今後ますます望まれる。高齢者や子供は免疫力が弱く,常にインフルエンザなどの感染症の脅威に曝されている。そこで,免疫力を高める機能性ヨーグルトの開発を目的として,免疫賦活多糖を産生する乳酸菌の選抜,ヨーグルトへの活用を試みた。その結果,Lactobacillus delbrueckii ssp.bulgaricus OLL1073R―1を見出し,本乳酸菌で発酵したヨーグルトは高齢者の免疫力を高め,風邪症候群への罹患リスクを低下させた。また,大学生を対象とした試験ではインフルエンザワクチンに対する増強効果が示唆された。
(キーワード:免疫力,乳酸菌,多糖,ヨーグルト,風邪症候群) |
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茶園の各種常用型管理作業機の開発 | ||||
松元機工株式会社 松元 芳見 | ||||
1956年当時,茶園栽培における茶生葉の収穫は手ばさみによるものが主であった。その後,我が国のお茶生産が拡大する中,茶園での摘採や薬散などの茶園管理作業に多くの労力を要し,茶業経営の拡大並びに茶産地形成上の最大の隘路となっていた。そこで鹿児島県茶業試験場より平坦地茶園専用の乗用トラクター(ホイル型)の考案試作を依頼され,試作第2号機まで完成させた。引き続き,同試験場の協力により,ホイル型トラクターの弱点である雨天時の走行不能,刈り刃の調節の困難性,踏圧によるうね間土壌の物理性悪化を克服するため,無軌道のクローラ型車体に各種茶園作業機を装着する専用作業機を試作,同時にこれら試作機を改良した実用機を次々と開発,完成させた。 (キーワード:乗用型茶摘採機,茶園専用各種作業機,コスト削減) |
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キク科オステオスペルマムの新品種育成と海外展開 | ||||
(有)はなせきぐち 関口 政行 | ||||
1975年頃のオステオスペルマム導入当初は,赤紫と白の花色しかなく,また,一定以上の照度がないと花が開かない等の欠点があったため,異なる花色や終日開花性のものがあれば有利販売や需要の拡大が見込めると考え,品種育成を開始した。1999年から2011年までに23品種を品種登録した。育成した品種は,日本だけでなくヨーロッパ・北米でも種苗登録し,2000年から苗の販売を開始し,ピーク時にはヨーロッパ・北米で年間1,000万本以上,国内では約20万本の苗が販売された。 (キーワード:オステオスペルマム,品種育成,海外展開,有利販売) |
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エンジン水平保持機構付単軌条運搬機「モノラック」の開発 | ||||
株式会社ニッカリ 池田 彰美・石原 暉久・朴 明日・茅原 則明 | ||||
急傾斜地45度の,山超え・谷超えが可能な空冷2サイクルエンジン搭載型の単軌条運搬機に加え,空冷4サイクルガソリンエンジンでのエンジンオイル潤滑の弱点を克服したエンジン水平保持機構付単軌条運搬機「モノラック」を開発した。このことにより,軌条設置の迂回,スイッチバックの導入が必要なくなり設置費用のコストダウン,エンジン性能の安定化および運搬効率の向上が図られた。 (キーワード:急傾斜農地,モノラック,単軌条運搬機,水平保持機構,コストダウン) |
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切り花市場での新分野を創出した革新的ヒマワリ「サンリッチ」の開発 | ||||
タキイ種苗株式会社 羽毛田 智明 | ||||
ヒマワリは世界的に重要な有用植物であり,食用,油糧用の他,園芸的には鑑賞植物として主に花壇等の植栽用に利用されてきた。しかし,切り花としての利用はこれまで本格化したことがなかった。そこで,筆者はヒマワリの持つ切り花としての可能性を引き出すべく新品種の開発を進め,形態及び開花の生態等に特長を持つ品種「サンリッチ」を育成した。その結果,1991年の品種発表以降,ヒマワリは切り花用花きとして主要品目の一角を占めるに至り,切り花生産の振興,需要の拡大に寄与することができた。開発した「サンリッチシリーズ」の世界シェアは発表以来約80%を維持し,広く国内外に普及し今日に至っている。 (キーワード:ヒマワリ,切り花,市場の新分野,細胞質雄性不稔性,サンリッチ) |
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美容食品・化粧品原料「こんにゃくセラミド」の開発 | ||||
ユニチカ株式会社 向井 克之・白井 宏政・別府 仁美・名和 和恵・宮西 健次 | ||||
セラミドは表皮角質層において,バリア機能と保湿作用を担っている物質で,アトピー性皮膚炎患者などでは表皮のセラミドが減少していることが分かっている。こんにゃくセラミドは,コンニャク芋から抽出した植物性セラミドであり,経口または経皮摂取することでバリア機能の向上と皮膚保湿性が向上し,皮膚状態の改善が実感できる。こんにゃくセラミドは,腸管から吸収され代謝を受けてできるスフィンゴイドが皮膚に到達し,表皮のセラミド量を増加させることにより皮膚状態を改善する。 (キーワード:コンニャク,セラミド,角質層,バリア機能,保湿) |
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施設園芸用ハイブリッド暖房システム制御装置の開発 | ||||
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園芸用施設の加温設備のエネルギー源は,大部分が石油を利用しているが,近年の石油価格上昇による暖房経費増大への対応策として,ヒートポンプを使ったハイブリッド暖房システムの導入が進みつつある。しかし,ヒートポンプの暖房設定温度を石油暖房機のそれよりも高めに設定する必要があるため,暖房機の稼働状況によって暖房管理温度が変わるという問題がある。そこで,暖房管理温度を一定に保ちつつ,ヒートポンプを優先的に運転することが可能な制御装置を開発した。 (キーワード:施設園芸,ヒートポンプ,ハイブリッド暖房,制御,省エネルギー) |
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ヒュウガナツの自然交雑実生を活かした黄色系新柑橘品種「はるか」の育成 | ||||
農業 石井 徳雄 | ||||
かんきつの品種は,橙色ないし朱色の果皮のものが主力を占め,黄色系には優良品種がまだ見つかっていないと言われていた。新品種育成の着目点でもあり,偶発実生の苗を高接ぎして結実した黄色の果実を調査・育成し酸が低く糖度も高い「はるか」の品種登録にこぎつけた。 | ||||
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乾電池で作動する防霜用散水・止水制御装置の開発 | ||||
株式会社日本計器鹿児島製作所 加藤 正明・仲 覚太郎・渡辺 明人・池崎 勉・山崎 淳一 | ||||
農作物を霜害や害虫から守るためのスプリンクラーの散水・止水を,高精度センサーとプログラミング制御による組込み技術で完全自動化した。また散水・止水の間隔制御(連続・間欠・タイマー散水)の最適化により,手動に比べ散水量を1/3に抑えると同時に,制御装置の低消費電力技術の開発により,電源に乾電池を使用でき,商用電源が不要になり,山間部など様々な形状の圃場への設置を可能にした。これにより,降霜時期における農業従事者の散水・止水作業を大幅に軽減でき,水資源の有効利用,農産物の高品質・多収生産の向上も図られた。 (キーワード:茶,防霜,散水氷結法,スプリンクラー,凍霜害) |
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利用者の目線にたった飼料用米破砕システムの開発・実用化 | ||||
ウスイプロジェクト 臼井 節雄 | ||||
市販の飼料用米破砕機は破砕機単体で破砕作業が出来ず,リフト,コンベア,動噴等の付属機械を必要とし,かつ,飼料に調整する場合は多くの人員を確保しなければならない。また作業面積や飼料用米の保存に広いスペースを必要とすることもネックとなっていた。このことから新しい破砕方式の飼料用米破砕機の開発とこの破砕機を使った飼料用米破砕システムを考案し,実用化した。この破砕機は,従来の押しつぶす,磨りつぶすといった破砕方法ではなく,フリーハンマーを回転させて破砕する方式であり,破砕中に破砕した米が機械の中で詰まることもなく,安定的に破砕が出来ることおよびシンプルな構造という特徴を持っている。 (キーワード:飼料用米,破砕機,簡易なシステム,フレコンバック,耕畜連携) |
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生分解性原料を用いた堆肥化可能な農作物用ネットの開発 | ||||
山弥織物株式会社 刑部 榮三・鈴木 仁 | ||||
近年,合成樹脂製の農作物用ネットなどの農業系産業廃棄物の処分が問題になる中,農家の高齢化や環境保全の観点から,新たな素材による農作物用ネットの開発に取り組んだ。従来より,ナガイモ等の蔓葉を保持するために農作物用ネットが用いられているが,主にポリエチレン製であり,農作物収穫後のネットは産業廃棄物として適正に処分する必要がある。これに対し,本開発の農作物用ネットは,生分解性原料を用いた堆肥化可能なものであり,特に,堆肥化速度が速いことを特徴としている。 (キーワード:農作物用生分解性ネット,堆肥化,綿と竹繊維の撚糸,環境保全) |
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