Vol.2 No.5 【特 集】 酪農における自給飼料の生産と給与技術 |
酪農における飼料生産の現状と課題 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 塩谷 繁 |
日本の酪農では,個体乳量の増加を目標に育種改良を進めるとともに穀類などのエネルギー含量の高い飼料の利用が増え,輸入飼料への依存度が高まってきた。また,規模拡大に飼料畑の集約が追いつかず粗飼料の輸入依存度も高まり,労働時間が増加している。これらの問題を解決するには,高栄養の飼料を効率的に多収で生産する技術が必要であり,それらの作業を受託するコントラクターやTMRセンター等の支援組織の役割が大きくなる。 (キーワード:酪農,濃厚飼料,粗飼料,飼料自給率,支援組織) |
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飼料作物の多収作付体系 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 菅野 勉 |
わが国において畜産経営の濃厚飼料依存度を低下させるためには飼料用トウモロコシやソルガムといった高栄養粗飼料の増産が重要である。こうしたことから,近年,トウモロコシを基幹とした多収作付体系として暖地2年5作体系および温暖地トウモロコシ二期作体系の開発が行われ,それらの作付体系の有効性が明らかにされた。一方,中山間地等ではトウモロコシの獣害被害が問題となるため,トウモロコシと代替する高栄養の飼料作物としてスーダン型ソルガムの高消化性新品種「涼風」が有望であり,この品種を活用した周年作付体系の開発が進められている。 (キーワード:作付体系,獣害回避,ソルガム,トウモロコシ,二期作,2年5作) |
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イアコーンサイレージの生産利用技術 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター 大下 友子 |
近年,北海道において新たな国産濃厚飼料として,飼料用トウモロコシの雌穂をサイレージ化して利用するイアコーンサイレージが期待されている。イアコーンサイレージは,自走式ハーベスタに取り付けるヘッドをホールクロップ用のロータリーヘッドから,雌穂収穫専用のアタッチメントであるスナッパヘッドに交換することで,ホールクロップサイレージと同様の作業工程で収穫できる。また,イアコーンサイレージはホールクロップサイレージに比べ,乾物率とでんぷん含量が高く,TDN含量も約12ポイント高い。 (キーワード:自給濃厚飼料,イアコーンサイレージ,生産性,飼料価値) |
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飼料用米および稲発酵粗飼料の生産・給与の現状と将来展望 |
山形大学 農学部 農学部附属やまがたフィールド科学センター 吉田 宣夫 |
水田政策の見直しのなかで飼料用米,稲発酵粗飼料が注目されている。現地への技術普及は画期的な技術開発に支えられた稲発酵粗飼料が約10年先行し,酪農はじめ大家畜経営で不可欠な粗飼料となった。飼料用米は鶏・豚への給与が進み,大家畜での利用は飼料加工と給与技術から限定的である。両者ともにこれまで以上の稲育種,飼料加工,流通化技術の進歩が期待されており,飼料自給率向上と経営安定に向けた取り組みの強化が求められる。 (キーワード:酪農,飼料用米,専用品種,稲発酵粗飼料,サイレージ適性) |
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発酵TMRの調製と給与 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 野中 和久 |
飼料生産の外部委託化の進展にともない,TMRセンター等で混合調製し酪農家に配送して給与する発酵TMRの利用が増加している。発酵TMRは,粗飼料と濃厚飼料をベースに,食品製造副産物(エコフィード)や農産副産物を混合してサイレージ調製したわが国特有の飼料である。近年,その調製法や給与面での効果に関する研究が進んでいることから,発酵TMRやその材料となる飼料の特徴,利用に当たっての留意点などについて紹介する。 (キーワード:エコフィード,TMRセンター,乳牛,発酵TMR) |
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新たな地域自給飼料生産システムの構築 |
九州大学大学院 農学研究院 福田 晋 |
飼料生産コントラクターは,酪農等畜産経営の中においてその重要性が増す一方で,新たな形態と利用システムへと展開してきた。すなわち,飼料生産作業受託組織から飼料生産販売組織への展開であり,畑作地帯での拡大から稲発酵粗飼料の生産拡大に伴う水田地帯での普及である。さらには,最終飼料商品であるTMRを生産するTMRセンターの新たな展開により,一層その重要性が増してきた。本稿では,その展開過程を考察し,今後のコントラクター,TMRセンターの課題について明らかにした。 (キーワード:飼料生産コントラクター,TMRセンター,耕畜連携) |
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自給飼料利用による酪農の6次産業化をめざして |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター 上田 靖子 |
自給飼料を給与することによって生産された牛乳を,成分によって特徴付け,差別化することは可能であろうか。牛乳の香りの成分を構成する乳揮発性成分を分析することにより,放牧牛乳には生草に含まれるクロロフィル由来のジテルペノイド類が多く含まれることから,放牧牛乳の差別化に利用できる可能性がある。また,近年自給濃厚飼料として栽培・利用が始まっているトウモロコシ雌穂(イアコーン)サイレージ給与乳についての揮発性成分の特徴についても紹介する。 (キーワード:放牧牛乳,揮発性成分,イアコーンサイレージ,自給飼料) |
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