Vol.2 No.10
【特 集】 中山間等の小規模営農に対応した農業機械


小型除草ロボットの開発
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター    中元 陽一
 畦畔管理で行われる草刈り作業は,そのほとんどが刈払い機による人力作業で行われている。とりわけ,高齢化など担い手が不足している中山間地域においては,重労働であり農作業事故が多い作業となっており,省力・軽労化の要望が高い。このため,遠隔操作による草刈り作業を行う小型の除草ロボットを開発した。開発した小型除草ロボットは,軽トラックに搭載可能な機体を有し,おおむね傾斜40度までの法面において,自走して草刈り作業を行える。
(キーワード:畦畔管理,草刈り,ロボット,遠隔操作)
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法面作業道の造成と被覆植物の導入による畦畔管理技術の省力・軽労化
鳥取県農業試験場 作物研究室    三谷 誠次郎
 中山間地域における水田等法面の除草作業は重労働であり,鳥取県はこの作業の省力のため,「法面作業道の造成」と「被覆植物による畦畔管理」についてマニュアル化し,広く推奨している。「法面作業道の造成」については,既に完成した技術であり,その有用性と導入事例等について紹介する。一方,「被覆植物による畦畔管理」は,センチピードグラス(ムカデシバ)を用いたものであるが,現在も低コストで省力的な早期定着化について継続して検討を行っている。
(キーワード:畦畔管理,省力,軽労化,法面作業道,センチピードグラス)
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表層散播機による麦およびソバの省力多収栽培技術
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター    土屋 史紀
 アップカットロータリを活用した表層散播は,一工程で耕耘・畝立・施肥播種が可能な省力的な播種作業体系で,耐天候性が高いので降雨による播種作業への影響が少なく,播種後も湿害軽減効果も高い,さらに麦やソバでは密播栽培することで生育量の確保や雑草抑制効果が得られ,収量増に結びつけれる栽培技術である。表層散播機は近年市販が開始され,これからのさらなる普及が期待される。
(キーワード:アップカットロータリ,耐天候性,湿害,雑草抑制)
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小型汎用コンバインの開発と岩手県沿岸地域における現地実証試験
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター    梅田 直円・嶋津 光辰
 イネ,ムギ,ダイズ,ソバ,ナタネ等の多様な作物が収穫でき,中山間地や圃場が小区画で分散した地域でも利用可能な小型汎用コンバインが開発された。本機は4条刈り自脱コンバインと同等の大きさで,4tトラックで運搬可能である。刈り幅は1,700mmであり,水稲では5条収穫できる。保安基準に適合した機体構造をしており,公道を走行可能である。部品の組換え,調整・清掃が容易な構造であり,少ない労力で多様な作物への切換えが可能である。また,岩手県沿岸地域において本機を基軸とした収穫作業体系の実証試験を実施しており,現場へ普及・拡大することで生産費が低減されることが期待されている。
(キーワード:汎用コンバイン,中山間地,小区画,分散圃場,収穫作業体系)
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WCS用稲の収穫・調製コスト削減を目指す基地調製体系
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター    高橋 仁康
 WCS用稲は水田保全や,自給飼料供給にとってなくてはならない転作作物となっている。現在,収量性や栄養価の高いWCS用稲品種「たちすずか」の登場,2016年春市販予定のワゴンタイプ収穫機による基地調製型体系の導入などによって,WCS用稲の需要増や生産費の低コスト化への可能性が高まっている。本報では,中四国地方の中山間地域で一般的な専用収穫機体系と,中山間地域を舞台として実証試験されている基地調製体系について,作業の特徴やコストを比較した。
(キーワード:WCS用稲,収穫,調製,ロールベール,サイロ)
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青切り用調製機を用いたタマネギ収穫・調製作業の省力化
香川県農業試験場 企画・営農部門    西村 融典
 暖地のタマネギ産地では,収穫後の調製作業(葉切り,根切り)が依然として手作業で行われており,特に,作業が短期に集中する青切り出荷の現場では調製作業の省力化が大きな課題となっている。そこで,青切りタマネギを対象とした電動2連式の調製機を開発し,その省力化効果を調査した。本機は軽トラックに搭載できる大きさであり,屋内での定置利用のほか,軽トラック等に搭載してほ場内で利用することもできる。開発機の処理能力は1連当り毎秒1個程度で,適切り率(成功率)は,葉と根が十分残った状態であれば90%以上である。また,本機を利用することで収穫・調製に係る作業時間を慣行体系の5〜6割に削減することができる。
(キーワード:タマネギ,収穫,調製,根葉切り,省力化)
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小ギクの一斉機械収穫技術の開発
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター    田中 宏明
 小ギク生産における収穫作業は,圃場全体を見回って1本ずつ採花する選択収穫方式であるため多大な労力を要する。このため,開花の斉一性を高める栽培技術に対応した小ギクの機械収穫技術の開発に取り組み,収穫作業の省力化を図った。刈り取り部と切り花収容部,およびフラワーネット回収装置を備えた収穫機は,切り花に損傷を与えることなく刈り取りでき,慣行の収穫布を用いて切り花を結束できる。搬出台車との組み合わせにより,収穫作業時間を38%〜65%削減できた。
(キーワード:小ギク,開花斉一化,機械収穫,フラワーネット,搬出台車)
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