Vol.5 No.4 【特 集】 第17回民間部門農林水産研究開発功績者表彰受賞者の業績 |
コンテナ収容式キャベツ収穫機の開発 | ||||||
ヤンマー株式会社 アグリ事業本部 丸山 高史 | ||||||
キャベツは農業産出額で1,000億円(2015年)に達し,国民生活に欠かせない主要野菜である。近年の需要は加工・業務用が家計消費向けを上回り,不足分は輸入に頼っている状況にある。一方,生産現場では10a当たり8tにもなる収穫作業の労働時間が全体の30%を占めており,規模拡大や生産コスト低減を図るためには,キャベツ収穫機の実用化が不可欠である。この課題に対して,長年の研究開発の蓄積を踏まえて改良を重ね,キャベツを刈取って,選別調製と大型コンテナへの収容を機上で一貫してできる高能率なキャベツ収穫機を開発した。これにより,収穫に要する労働時間の削減,軽労化,段ボールなどの出荷経費の削減が達成できた。 (キーワード:キャベツ,収穫機,省力化,軽労化,コスト削減) |
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プリン体に作用する乳酸菌を活用したヨーグルトの研究開発 | ||||||
株式会社明治 研究本部 山田 成臣・狩野 宏・坪井 洋・ 高林 拓也・伊澤 佳久平 |
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尿酸値の上昇は痛風の発症リスクを高めるだけでなく,メタボリックシンドロームなどとの関連も報告されている。そこで尿酸値が上昇する要因の中で,食物に含まれるプリン体の過剰摂取に着目し,腸管から吸収されるプリン体の量を低減するヨーグルトの研究開発を行った。プリン体を腸管で吸収されにくい構造に分解する活性に着目してスクリーニングを行いLactobacillus gasseri PA-3(L.gasseri PA-3)を発見した。さらにL.gasseri PA-3はプリン体を菌体自身に取り込むこと,動物でプリン体の吸収量を低減させることから,ヒトにおいても同様に腸管から吸収されるプリン体の量を低減させ,その結果,尿酸値が低減する可能性が示唆された。そこでL.gasseri PA-3を含むヨーグルトの継続摂取をさせたヒト試験を行い,尿酸値が改善されることが明らかとなったことから,L.gasseri PA-3を含むヨーグルトを発売するに至った。 (キーワード:乳酸菌,Lactobacillus gasseri PA-3,プリン体,尿酸値,ヨーグルト) |
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連続的加熱成型による水産練り製品の製造 | ||||||
日本水産株式会社 吉富 文司・水城 健・橋立 知典 | ||||||
魚肉ソーセージ,チーズかまぼこなどに代表される水産練り製品は,原料をケーシング(内装フィルム)に充填後,ボイル等の外部加熱方式で製造されている。そのため,喫食や業務用用途の際にはケーシングを剥離する必要があり,その工程改善が望まれていた。そこで,原料を垂直吐出しながらマイクロ波で内部加熱することで連続的な加熱成形を可能とし,ケーシング包装を不要とする画期的な製造技術を確立した。この技術によって,ケーシング剥離工程が不要となり,資源およびエネルギーの節約を実現できた。得られた製品の二次加工も容易となり,高付加価値化や原価低減にも貢献した。 (キーワード:マイクロ波加熱,水産練り製品,垂直加熱,連続加工,ケーシングレス) |
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飼料用米破砕機の開発 | ||||||
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飼料用米については,籾殻を含めた籾米として利用するか,玄米として利用するかに分かれる。また籾米については乾燥して利用するか,未乾燥のまま保存し発酵させたソフトグレインサイレージ(以下イネSGS)を利用する場合がある。飼料用米を籾や玄米のままで牛や豚に給与すると,消化が悪いので飼養の効果がさがる。そのため,籾や玄米を事前に破砕する必要があり,水分の高い未乾燥米から乾燥米まで低コストで効率よく粉砕できるV字型のダブルロール方式を採用した破砕機の開発を行った。 (キーワード:飼料用米,ソフトグレイン,自給率向上,耕畜連携) |
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農産物や食品の簡易迅速なDNA分析技術の開発 | ||||||
株式会社ニッポンジーン 峯岸 恭孝 | ||||||
遺伝子検査は,農産物や食品の生物学的検査において,特異性や検出感度が求められる場合に用いられる手法の一つである。しかしながら,その実施には実験設備の整った検査室が必要なうえ,操作が煩雑で結果を得るまでに半日〜1日程度の時間を要する等,簡単ではない。そこで本研究では,遺伝子検査に要する労力と時間の削減を目的として,DNAの精製工程を省略する等,目的に応じた分析技術の改良を行った。その結果,PCR阻害物質の影響を受けにくいダイレクトリアルタイムPCR技術とコシヒカリを迅速簡便に判別する技術の2種類のDNA分析技術を開発,実用化した。 (キーワード:遺伝子検査,コシヒカリ,LAMP法,リアルタイムPCR法) |
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麦ごはんがおいしく炊ける炊飯技術の開発 | ||||||
タイガー魔法瓶株式会社 金丸 等・遠藤 学・朝岡 修平・ 井上 友見・長崎 泰子 |
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脂質の多い欧米型食習慣によるカロリーの過剰摂取,食物繊維の摂取不足などによる生活習慣病が増えている。そこで「水溶性食物繊維(βグルカン)」の機能情報を基に同成分を多く含む食品として大麦(押麦,もち麦)に注目した。白米と麦の吸水特性の研究から開発した麦めしメニューでは理想とされる80%前後の吸水率を実現し,ふっくらとしたおいしさとにおいの約半減に成功。さらに翌年は「もち麦」のおいしさ追求に取り組み,弊社独自の「本土鍋」の特性を生かした高温連続沸騰炊きでにおい成分をしっかり揮発させた。圧力制御によって揮発成分を炊飯ジャーの外部へ飛ばす脱臭減圧の開発は,弊社独自の可変2段階圧力技術を活かした。内ふたに先進的な親水内ふたを採用し,内ふたへのつゆつきを低減。麦めしコース搭載の炊飯ジャーは2017年4月までの累計で約65万台の出荷を見込んでいる。 (キーワード:押麦,もち麦,土鍋,圧力炊飯,水溶性食物繊維) |
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有機性汚水を浄化する伏流式人工湿地の開発 | ||||||
株式会社たすく 家次 秀浩 | ||||||
全国の生乳生産量の約5割を占める北海道においては,酪農排水による水環境の悪化が問題となっており,これに対応して,弊社は酪農排水を浄化する簡易活性汚泥処理法を開発したが,高濃度の汚水までは処理できなかった。このため,伏流式人工湿地に着目し,このシステムの高濃度有機性排水処理への応用に取り組んだ。当初は搾乳施設から排出される洗浄水とそれに混入する糞尿,牛乳などの比較的濃度の薄いものから,養豚糞尿などの濃度の濃い排水処理を農研機構,北海道大学,道立農業試験場と協力して国内で初めて開発し,寒冷地での実用化に成功した。また,農研機構や北海道大学,道立農業試験場との協力により,システムの浄化機能は冬期を含めて5年〜10年の長期にわたり安定していることを検証した。 (キーワード:伏流式人工湿地,汚水処理,浄化方法) |
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トマト高軒高低コスト耐候性ハウスおよびハイワイヤー誘引栽培技術の開発 | ||||||
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トマトの8月定植で11月から翌年6月まで収穫できる促成長期どり栽培を導入するため,我が国特有の夏の猛暑,秋の強風,冬の降雪など厳しい気象条件にも耐えることが可能な日本型の高い軒高の低コスト耐候性ハウスを開発した。さらに,独自の誘引器具と高所作業台車を開発し,作業の軽労化と収量向上を実現するハイワイヤー誘引栽培技術を確立した。これらによりトマト経営の安定化に大きく貢献するとともに,技術内容を公開することで全国に広く普及した。 (キーワード:トマト,高軒高低コスト耐候性ハウス,ハイワイヤー誘引,誘引器具,高所作業台車) |
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露地栽培環境向け耐候性LED電球の開発 | ||||||
株式会社エルム 桐原 弘・竹内 秀樹・橋口 満洋・ 神浦 由美子・内田 克彦 |
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南西諸島では無加温によるキクの露地電照栽培が盛んであるが,風雨等の過酷な露地環境に耐え得るLED電球がなかった。こうした環境でも使用可能な防水機構を採用し,筐体材料の工夫による小型・軽量化,LED電球内部の制御回路の工夫による高力率・低消費電力を実現した耐候性LED電球を開発した。これにより,省エネ効果と台風等による停電に伴うリスクの低減を実現し,キクの安定生産に貢献した。 (キーワード:電照栽培,耐候性,LED電球,小型発電機,高力率) |
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パイプハウスの低コスト強靱化金具の製品化 | ||||||
佐藤産業株式会社 直木 武之介 | ||||||
我が国の施設園芸の面積約5万haのうち約8割は比較的強度の低いパイプハウスが占めている。パイプハウスはアーチ状に曲げた小径鋼管で骨組みを組むものが多いが,部材間の連結強度が脆弱なため,側方からの強風や積雪により容易に倒壊する。近年の大型台風や大雪によるハウスの倒壊被害は全国各所で発生しており,低コストかつ効果的な構造強化技術の開発が求められている。その場合,新設ハウスの高強度・低コスト化に加えて,コストを抑えるために既存のパイプハウスの構造強化も重要な課題である。 (キーワード:自然災害,パイプハウスの構造強化,強靭化) |
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