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Vol.5 No.5 【特 集】 第12回若手農林水産研究者表彰受賞者の業績 |
| 経口投与が可能な豚丹毒菌生ワクチンの開発 |
| 農業･食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門 小川 洋介 |
| 経営の大規模化が進展する養豚産業においては，省力的なワクチンが求められている。そこで，豚に敗血症，じんましん，関節炎などを引き起こす豚丹毒菌に対する新しい省力的な弱毒生ワクチンを開発するため，豚丹毒菌のゲノム解読結果を基に病原因子を欠損させて遺伝学的に弱毒化機構が明らかになった弱毒生ワクチン候補株を開発した。本ワクチン候補株は，経口投与により豚に免疫を付与できる省力型ワクチンである。また，この株を接種したマウスおよび豚に対して臨床症状を全く示さず，安全性が高いワクチンでもある。今後，この安全なワクチン候補株は，経口投与型多価ワクチンを開発するためのワクチンベクターとして利
用できる。
(キーワード：豚丹毒菌，弱毒生ワクチン，経口投与，ワクチンベクター） |
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| ガスプラズマを用いた殺菌技術の農産物への応用 |
| 琉球大学 医学部 作道 章一 |
| 我が国では収穫後の農産物に対する農薬を使った殺菌が禁止されており，代替となる有効な殺菌方法もないことから，微生物汚染による食品ロスが発生している。そのため，収穫後の農産物を安全かつ効率的に殺菌できる技術の開発が求められている。そこで，著者らは，農薬を使用しない新しい農産物の殺菌方法としてガスプラズマ技術に着目した。本総説では，著者らの研究成果を中心にガスプラズマの農産物殺菌への応用についてまとめる。最近，著者らはガスプラズマ殺菌が広範な病原体や毒素の不活化に有効であることを証明するとともに，その殺菌機序を明らかにした。さらに，実用化に向けて，選果中に利用できるガスプラ ズマ殺菌装置として「ローラーコンベア型プラズマ装置」を製作した。 |
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| デジタル土壌図と農地放射性物質濃度分布図の作成 |
| 農業･食品産業技術総合研究機構 農業環境変動研究センター 高田 裕介 |
| 農業の生産性や環境への影響などを評価する際には，土壌の種類ごとの分布状況が分かるデジタル化された農地土壌図があると便利である。しかし，我が国では最新の農地の分布状況を反映したデジタル農地土壌図は整備されていなかった。そこで本研究では，既存の農地土壌図と最新の地目情報を空間的に統合することで，日本全国のデジタル農地土壌図を作成するとともに，その他の土壌情報を併せて「土壌情報閲覧システム」，「e-土壌図」および「土壌のCO２吸収量見える化サイト」としてWEB公開した。また，当デジタル農地土壌図を基図として，東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う農地土壌放射性物質濃度分布図を作成し，作物の吸収抑制対策や市町村別の除染を必要とする農地面積の推計などに貢献した。
(キーワード：デジタル土壌図，土壌情報，土壌情報閲覧システム，農地土壌放射性物質濃度分布図） |
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| 土石流シミュレータの開発と防災対策への適用 |
| 京都大学大学院 中谷 加奈 |
| 土石流による被害の防止軽減には影響範囲の把握が求められ，シミュレーションは有効なツールとなる。山地渓流から扇状地までの多様な条件を一つのシステムで計算可能なフレームワークとして統合モデルを構築した。GUIの実装やGISとの連携により，情報の入出力を視覚化して直感的な理解を助けることで，専門家以外のユーザーにも扱いやすい汎用性の高い土石流シミュレータを開発した。開発したシミュレータは，国内外で砂防施設の配置や危険箇所把握などの防災対策の検討に幅広く適用されている。さらに現状で研究段階の現象のモデル化が進み，プラットフォームに統合・置換することができれば，各地域の特性を考慮した検討が可能となる。 (キーワード：土石流，防災，シミュレータ，GUI，GIS） |
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| イサダからの新規肥満抑制8-HEPEの同定および抽出方法の開発 |
| 公益財団法人岩手生物工学研究センター 山田 秀俊 |
| 三陸地域では毎年春にイサダ漁が行われる。最盛期には10万トンの水揚げ量があったイサダだが，需要低下に伴う漁獲制限のために，現在の漁獲量は3万トンまで減少している。漁業者の安定収入に貢献していたイサダが，現在では未利用資源になりつつあり，イサダの需要増加は喫緊の課題である。我々は，利用用途拡大によるイサダの需要増加を目指して，健康機能性研究に取り組み，イサダから新規抗肥満物質：8-HEPEを同定した。8-HEPEにはエイコサペンタエン酸（EPA）より10倍高い脂肪燃焼促進活性があり，魚には含まれないオキアミ特有の成分である。現在は，イサダを原料とした8-HEPE素材の実用化に向けて，研究開発を進めている。 (キーワード：イサダ，8-HEPE，抗肥満，機能性素材，三陸） |
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