Vol.6 No.8 【特 集】 資源としての竹の利用技術 |
特集の目的と概要 | |||||||||||||||
JATAFFジャーナル編集部 | |||||||||||||||
本号では,中山間地域におけるコミュニティ機能の低下に伴って進行している竹林分布域の拡大とそれに伴う諸問題,そして資源としての竹の有効利用技術について特集を企画した。歴史的にみると竹は我々の生活や産業の一部であったものが,地域の衰退とともに里山を中心に拡大を続け,今日では地域の再生にとって大きな障害となっている。このため,竹の資源管理のあり方,分布域の評価,新たな資源としての利用技術の可能性について論じた。 (キーワード:竹林,高齢化,里山管理,耕作放棄,獣害) |
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里山における竹資材管理のあり方 | |||||||||||||||
京都大学大学院 柴田 昌三 | |||||||||||||||
竹林は,我が国の里山を構成する一要素として重要な位置を占めてきた。それらは家族労働力によって小規模に維持される場合が多く,効率的な資源獲得を目指した独特の管理技術が編み出されてきた。現在の竹資源利用を考える上でも,これらの技術を参考にすることは重要である。本稿では,これまでの竹資源利用の変遷とそれに伴って培われてきた技術を概観した上で,変質した現在の里山における竹資源利用とその管理方法について考察したい。 (キーワード:竹材生産,筍生産,竹林管理,新たな資源利用) |
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竹の駆除は容易ではない | |||||||||||||||
森林研究・整備機構 森林総合研究所関西支所 鳥居 厚志 | |||||||||||||||
日本各地で竹林の放置や拡大が問題視されている。利用が見込みにくい現状では,タケを駆除すべき場合もあるので,駆除法を検討した。竹林を皆伐してその後再生する稈を刈り続ける方法では,年2回以上の刈り払いを5〜7年間継続する必要があると考えられた。また伐採した竹稈を林外へ搬出することが,再生稈の刈り払いの効率を上げることを見出した。除草剤の使用は,駆除完了までの年数を大幅に短縮できるが,一度の施用で竹林を完全に駆逐できるわけではない。いずれの方法でも,一見駆除が完了したようでも,その後の観察は必要である。 (キーワード:放置竹林,駆除,モウソウチク,刈り払い,除草剤) |
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里山における竹林分布の拡大 | |||||||||||||||
駒澤大学 文学部地理学科 鈴木 重雄 | |||||||||||||||
近年,日本各地の里山や都市近郊においても竹林の拡大が進行をしている。これは,竹林利用が減少したことはもとより,竹林を取り巻く耕作地や造林地の放棄も大きな要因となっている。生物多様性や森林保水力の低下と行った問題も引き起こす竹林の拡大は,農村に暮らす人々の土地利用意欲を低下させることにより,さらなる竹林の拡大の余地を生むという負のスパイラルをもたらしており,早急かつ有効な対策が必要となっている。 (キーワード:空中写真,放棄耕作地,造林放棄地,植物多様性,タケ) |
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気候変動に伴うモウソウチク・マダケ竹林の 潜在生育域拡大の予測 |
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里山の生態系・生物多様性への脅威となっているモウソウチクとマダケの生育に適した環境が,温暖化の進行と共に拡大することが気候モデルで予測された。パリ協定に準じて温暖化を1.5℃以下に抑えると,4℃気温が上昇した場合に比べてタケの生育に適した環境の増加が緩やかだった。こうした影響評価は,現在とりまとめが進められているIPCC1.5℃特別報告書などに貢献することが期待される。気候変動・温暖化を抑制する緩和策と同時に,外来種予防三原則に基づいた生態系管理などの「適応策」を進めることも重要である。 (キーワード:産業管理外来種,気候変動影響,種分布モデル,非静力学領域気候モデル,パリ協定) |
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山口県における竹のバイオマス利用に向けた取り組み | |||||||||||||||
山口県 農林水産部 山田 隆信 | |||||||||||||||
山口県は,繁茂・拡大し問題となっている竹林を地域の未利用資源として有効かつ大量に利用するため,既存の林業機械を活用して竹チップを既設の木質バイオマス発電所へ供給し,発電利用を実証した。その結果,木質バイオマスに対し5〜8%程度の竹の混焼では,クリンカー等による燃焼障害は起こらなかったが,竹の供給は高コストであった。竹の低コスト安定供給のためには,竹の特性に対応した竹専用の機械・作業システムの開発と,竹供給適地の抽出が課題であることを明らかにした。そこで,民間による竹利用を促進するため,竹林の分布・賦存量を調査し供給適地を解析・公開した。 (キーワード:竹,バイオマス利用,供給適地,機械化,賦存量) |
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伐採竹(モウソウチク)の飼料としての加工と利用 | |||||||||||||||
石川県立大学 生物資源環境学部 石田 元彦 | |||||||||||||||
伐採竹の主成分は繊維であり,ニワトリ,ブタなどの単胃動物での利用性は低い。繊維を利用できるウシにおいても消化率,嗜好性ともに低い。そのために竹を蒸煮処理したり,ペレット化したりすることも検討された。粉砕竹をサイレージ化する技術が確立されており,その給与による家畜の健康維持,成長促進,飼料費低減などの効果に関して一層研究が進めば利用拡大の可能性がある。枝葉は稈よりも消化率が高いと推察され,枝葉の割合の高い部分を利用することによって,栄養価の高い粗飼料を生産できるとも考えられる。 (キーワード:伐採竹,モウソウチク,飼料,サイレージ,機能性) |
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竹から取り出した繊維を複合材料の強化材として使う | |||||||||||||||
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比強度や比剛性で比較すれば,靭皮繊維や葉脈繊維はガラス繊維の性能に迫る。そのため,これらの繊維の需要が増えている。しかし,このような天然繊維の需要が増せば,生産は追いつかない。木材とは異なり,竹からは麻のように長い繊維が取れる。竹は我が国のみならず,世界的にも極めて豊富にある。そこで,竹繊維を麻系繊維の代替として活用できる可能性がある。しかし,問題点も指摘されている。本報告では,(1)なぜ,今竹繊維なのか,(2)竹繊維の取り出し法とその性能,(3)複合材料の強化繊維として竹繊維の活用と限界について紹介する。 (キーワード:竹,繊維,高分子系複合材料,FRP・FRTP,スタンパブルシート) |
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竹材の建築部材への有効利用技術 | |||||||||||||||
日本文理大学 工学部 井上 正文 | |||||||||||||||
竹材の有効利用は,放置竹林への対応および大気中の温室効果ガス削減の両面から重要な社会的課題となっている。この課題解決の手法として,建築部材への竹材の有効利用技術を紹介する。具体的には,丸竹で構造物を構築する場合に重要となる丸竹同士の接合法,解体を見据えた木材接合における竹材利用技術および圧密による竹材の強度性能向上技術を中心として紹介する。さらにここで紹介する竹材利用技術の実建物への適用事例も紹介する。併せて竹材を用いた部材や接合部の製作上の課題や実建物への技術導入に伴う法令上の課題についても述べる。 (キーワード:竹材強度,丸竹接合,竹製接合具,耐久性,建築基準法) |
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