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ヒガンバナの仲間

ヒガンバナ科(Amaryllidaceae


 ヒガンバナ科には、どんな植物が含まれるかといいますと、秋に真っ赤な花を咲かせるヒガンバナはもちろん、馴染みのある種類としては、スイセン、アマリリス、クンシランなども入るのです。

 このお馴染みの植物は、ヒガンバナの仲間ではなくユリの仲間と思われていることがありますが、それもそのはずで、ヒガンバナ科はユリ科やアヤメ科に近縁のグループなんです。

 ヒガンバナ科は、75種約1000種もの植物が分類される大家族です。

赤色のヒガンバナ、黄色のスイセン、橙色のクンシランなど原色の綺麗な花を咲かせる種類が多い科ですが、ヒガンバナにアルカロイドが含まれるのと同様に毒のある種類が多いのでご注意下さい。


★ ヒガンバナ科コレクション ★
*ガランツス属
Galanthus
*キルタンツス属
Cyrtanthus
*クリヴィア属
Clivia
*スイセン属
Narcissus ナルキッスス)
*ゼフィランテス属
Zephyranthes
*ヒッペアストルム属
Hippeastrum
*レウコユム属
Leucojum

各写真をクリックすると大きな画像が見られます。


ガランツス属(Galanthus


★ プロフィール ★

ヒガンバナガランツス属(Galanthus)  ガランツス属は、一般に「スノードロップ」と呼ばれている球根植物です。狭い意味のスノードロップは、Galanthus nivalis(ガランツス ニウァリス)という種で、 英名も「common snow drop」と呼ばれていますが、広い意味では本属全体をスノードロップと呼んでいます。

 スノードロップはもちろん英名で、「雪の滴」という意味だという説と「雪の耳飾り」という意味だという説があります。 その他に「Mary's tapers(メアリーの小ろうそく)」や「Febrary fairmaids(二月の乙女)」などの想像力豊かなかわいらしい英名が付けられています。

 早春に下向きに白い小さな花を咲かせる姿はとても清らかで、そよ風に揺れる姿はまさに妖精の耳飾りのようです。

 Galanthusという属名はギリシャで乳という意味の「ガラ(gala)」と花という意味の「アントス(anthos)」に由来しますが、これも白い花のイメージから付けられたとのことです。

 和名は「マツユキソウ(待雪草)」というのですが、同じヒガンバナ科のいわゆるスノーフレーク(「レウコユム属」を参照下さい)もマツユキソウと言われているので混同しないように学名か英名を呼ぶことをお勧めします。

 本属の花は咲き方がとても感動的です。最初は二枚の葉の中に包まれていますがその中から紡錘形の蕾がひょっこりと出てきて、蕾の写真ように花柄で耳飾りのようにぶら下がり、それから開花の写真ように花弁を広げます。

 本属は、ギリシャ、トルコ、フランスからコーカサス山が原産地で、18種が分布しています。更に、品種として400品種も育成されているということを知って驚きました。品種の育成は主にイギリスで行われています。 イギリス人がいかにスノードロップを愛しているかがこの品種数を見てわかる気がします。

G.elwesi(ガランツス エルウィジー) G.elwesii
(ガランツス エルウィジー)
 種名は、本種をトルコから採取しイギリスに初めて紹介したイギリス人のエルウェイズ(J.H.Elwas)に由来します。

 本属は、花がすべて小型で白色なのでよく似ていて、よく観察しないと種による違いがわかりにくいです。その中で、本種の花には、筒状の花弁の付け根と先端に緑色の斑点模様があり、 G.nivalis(ガランツス ニウァリス)には先端だけに斑点模様があるので区別がつきます。

 英名は「giant snowdrop」、和名は「オオマツユキソウ(大待雪草)」です。
G.nivalis(ガランツス ニウァリス) G.nivalis
(ガランツス ニウァリス)
 本種を親にして実に多くの品種が育成されました。

 本種は、花弁の先端だけに斑点模様があるのが特徴です。

 英名は「common snowdrop」、和名は「マツユキソウ(待雪草)」です。
G.'Foxton'(ガランツス 「フォクストン」) G. 'Foxton'
(ガランツス 「フォクストン」)
 本種は、遅咲きの品種で、他の種と比べて長い紡錘形の花を付けるのが特徴です。

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キルタンツス属(Cyrtanthus


★ プロフィール ★
 Cyrtanthusという属名は、ギリシャ語の曲がったという意味の「キルトス(kyrtos)」と花という意味の「アントス(anthos)」に由来しています。これは、花が曲がっていることから付けられたとのことです。

 キルタンツス属は、南アフリカの東海岸が原産地で、約50種が分布しています。

 耐寒性の球根植物です。品種も多く、ほとんどの種は下向きに咲きますが、中には上向きに咲く種や、火事の直後にしか開花しないという変わった種もあります。

 英名は「fire lily」です。


C.elatus (キルタンツス エラタス) C.elatus
(キルタンツス エラタス)
 本種は、南アフリカのケープ地方の原産です。

 本種の異名つまり別名は多くて、すこしややこしいのですが、属名にCrinum(クリヌム属)、Amallis(アマリリス属)及びVallota(ヴァロータ属)と3つあり、 それに加えて種名にC.purpureus(キルタンツス プルプレウス)などがあります。これはこの順で属名が変わり、更に種名も変わったためで、古い学名が未だに使われていることによるものです。 従って、苗を買う時などは名前に注意する必要がありますね。

 本種の英名は、「Scarborough lily」です。(Scarboroughはイギリスの地名です)

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クリヴィア属(Clivia


★ プロフィール ★
 クリビア属と言いましても聞き慣れない名前で、クンシラン(君子蘭)と言った方が馴染みがあると思います。
 Cliviaという属名は、19世紀のイギリスのクライブ家(Clive)出身の公爵夫人にちなんでつけらました。

 自生地は南アフリカのナタール地方の森林で、球根は作らないで太い肉質の根を持ちます。

 日本には100年前に渡来し今日まで親しまれてきました。このクンシランという和名は最初ノビリス種(C.nobilis)に付けられました。 その後、C.miniata(クリビア ミニアタ)が渡来して花が上向きに咲くので「ウケザキクンシラン(受け咲き君子蘭)」と呼びましたが、 C.miniata(クリビア ミニアタ)の方が豪華なのでこちらを「クンシラン」と呼ぶようになったとのことです。


C.miniata(クリビア ミニアタ) C.miniata
(クリビア ミニアタ)
 一般にクンシランと呼ばれる種です。

 常緑の葉が左右交互に出て、葉が16枚になると葉の間から花茎を出して豪華な花を咲かせます。

 花は、室内に置くと2月に開花し、写真のようにオレンジ色の花を10輪以上も付けるので寒い冬に暖かみを与えてくれます。

 園芸品種の花は、オレンジ色の他、黄色もあります。

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スイセン属(Narcissus ナルキッスス)


★ プロフィール ★
  スイセンは、まだ寒い春先のガーデンや部屋の中をぱっと明るくしてくれる花として古来より人気があります。

 日本でも越前海岸などで自生している「ニホンズイセン」が見られますね。 このニホンズイセンの正式な学名はNarcissus tazetta ssp chinensis (ナルキッスス タゼッタ キネンシス)という房咲きスイセンの1種で、古来原産地から中国を経るという長旅をして日本に渡ってきたものとのことです。 スイセン属の原産地に日本は入っておらず、スペイン、ポルトガル、地中海沿岸、北アフリカが原産地となっており、原産地には約30種が分布しています。

 N.tazettaは、日本だけではなく、スイセンの中でも最も古くから人間との関わりを持っていて、古代ギリシャの人々に好まれていたことやエジプトでは葬式の花輪として使ったということがわかっています。

 ところで、和名のスイセンは漢字で「水仙」と書きますが、これは中国でスイセンを「水の仙人」と呼ばれたことに由来します。 何故「水の仙人」かと言いますと、中国で水辺に自生しているスイセンが清らかで仙人にたとえられたことによるものとのことです。

 Narcissusという属名は、ギリシャ神話に登場する「ナルキッソス」という少年に由来するというのが有名ですが、ギリシャ語の麻痺、昏睡という意味の「narce」に由来するという説もあります。

 園芸品種は次の12のグループに分類されています。


ラッパズイセン 副花冠(中心にある筒状の部分)の長さが花弁(正式には「花被片」)以上に長いグループ
大杯スイセン ラッパズイセンと小杯スイセンの中間のグループ
小杯スイセン 副花冠の長さが花弁の1/3以下の長さのグループ
八重咲きスイセン 副花冠が花弁になって二重や八重になったグループ
トライアンドラス・スイセン 1茎多花
シクラミニウス・スイセン 花弁が反転
ジョンキラ・スイセン イトバスイセンの交配種
房咲きスイセン  
口紅ズイセン 副花冠が紅色
原種交配品種  
スプリットコロナ・スイセン 副花冠が深裂
その他  

(注)
 学名についている「ssp」は亜種という意味で、同じ種の中で少しの違いがある場合に亜種と付けられます。
 例えば、ニホンズイセンですとNarcissus tazetta ssp chinensisは「ナルキッスス属タゼッタ種キネンシス亜種」を表します。


N.cv` Cloud Nine’(ナルキッスス 「クラウド・ナイン」) N.cv ` Cloud Nine'
(ナルキッスス 「クラウド・ナイン」)

 大杯スイセンのグループ。
N.cv`Dutch Master ’(ナルキッスス 「ダッチ・マスター」) N.cv `Dutch Master'
(ナルキッスス 「ダッチ・マスター」)

 大杯スイセンのグループ。
N.cv`Tahich’(ナルキッスス 「タヒチ」) N.cv `Tahich'
(ナルキッスス 「タヒチ」)

 八重咲きスイセンのグループ。
 花弁が黄色で副花冠が紅色のユニークな品種です。
N.tazetta ssp papyraceus ` Paper White`(ナルキッスス タゼッタ パピラケウス 「ペーパー ホワイト」) N.tazetta ssp papyraceus ` Paper White`
(ナルキッスス タゼッタ パピラケウス 「ペーパー ホワイト」)

 長い学名ですが、この学名は「ナルキッスス属タゼッタ種パピラケウス亜種で品種名が 「ペーパー ホワイト」」ということを表しています。

 香りがある房咲きスイセンで、草丈は30〜40cmほどです。花弁ばかりでなく副花冠も白くて、小型の花なので白い妖精のようです。

 英名は品種名と同じで「paper white narcissus」と言われています。

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ゼフィランテス属(Zephyranthes


★ プロフィール ★
 ゼフィランテス属は、アフリカ中心の西半球が原産地で、約35種が分布しています。

 Zephyranthesという学名は、ギリシャ語の西風を意味する「ゼフィロス(zephyros)」又は西風の神を意味する「Zephyros」と花を意味する「アンテス(anthos)」とからで、ヨーロッパの西側が原産の花であることから付けられたとのことです。

 英名には、「fairy lily」や「rain lily」などがあります。


Z.candida(ゼフィランテス カンディダ) Z.candida
(ゼフィランテス カンディダ)
 種名のカンディダとは純白という意味です。

 和名は、「タマスダレ(玉簾)」というので、日本原産の植物と思われがちですが、日本には南米ペルーから明治の初期に到来した帰化植物とのことです。

 開花期は、8〜9月です。

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ヒッペアストルム属(Hippeastrum


★ プロフィール ★
 一般にアマリリスと言われている種類は、分類学的には実はアマリリス属ではなくヒッペアストルム属なのです。別の種類にアマリリス属があり紛らわしいのですが、 これは、古い属名のアマリリスがそのまま残ったもので、一般には混同しないようにアマリリス属という学名ではなく「ホンアマリリス」または「ベラドナリリー」と呼ばれています。

 一方、一般名と英名で呼ばれている「アマリリス(amaryllis)」は、ローマの詩人ベルギリウス(Vergilius)の牧歌中に出てくる田舎の羊飼いの名前の「アマリリス」に由来するといわれています。
 また、amaryllisの他に 「Barbados(西インド諸島にある国名) lily」という英名もあります。

 Hippeastrumという少々言いにくい属名は、騎士を意味する「ヒペクス(hippecus)」(または馬を意味する「hippos」)と、星を意味する「アストロン(astron)」を組み合わせて付けられた名前と言われています。 アマリリスと騎士は結びつきにくいのですが、これには、四枚の葉を騎士のもつ剣に見立てたという説と花を正面から見た形を星になぞらえたという説があります。

 本属は、メキシコからアルゼンチンにかけてが原産地で、約70種が分布していますが、ブラジルとアルゼンチンに集中しています。

 原産地からヨーロッパへ導入されたのは17世紀末で、以後オランダを中心に盛んに育種され、今日、実に多くの豪華な品種が作出されています。

 品種のグループ分けは、「ルドウィッヒ系」、「レティクラタム系(葉が白斑)」、「小輪系」と3つあり、一般的な品種はルドウィッヒ系に入ります。  華やかな色だけでなくベルベットのような質感の花弁が人気の理由かもしれませんね。


H.×hybridum(ヒッペアストルム ヒブリドゥム「初夏の輝き」) H. ×hybridum
(ヒッペアストルム ヒブリドゥム「初夏の輝き」)

 
H. ×hybridum(ヒッペアストルム ヒブリドゥム「ダブル・リボン」) H. ×hybridum
(ヒッペアストルム ヒブリドゥム「ダブル・リボン」)

八重品種
H.×hybridum(ヒッペアストルム ヒブリドゥム「ユナイテッド・ネイション」) H. ×hybridum
(ヒッペアストルム ヒブリドゥム「ユナイテッド・ネイション」)

 
H.×hybridum(ヒッペアストルム ヒブリドゥム「ピコティ」) H. ×hybridum
(ヒッペアストルム ヒブリドゥム「ピコティ」)

ピコティという品種名のとおり白地に赤い糸覆輪が入る品種です。

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レウコユム属(Leucojum


★ プロフィール ★
 レウコユムというのは聞き慣れない名前ですが、スノーフレークと言えば馴染みがあると思います。

 本属は、中央ヨーロッパ及び地中海沿岸が原産地で、9種が分布しています。

 Leucojumという属名は、ギリシャ語で白いを意味する「leukos」とスミレを意味する「ion」を組み合わせて付けられた名前と言われています。 これは、白い花でスミレのような芳香があることからつけられたとの説とこのスミレがそもそもいわゆるスノーフレークを示すという説があります。

 和名には、「オオマツユキソウ(大待雪草)」の他、「ユキノハナ」、「スズランスイセン」があり、前者は同じヒガンバナ科のGalanthus elwesii(ガランツス エルウィジー)と同じ和名で、 開花時期も近いので混同されそうです。また、スズランスイセンは、花がスズランに似ていること、葉がスイセンに似ていることから付けられました。

 英名は、一般名になっている「snowflake」で、雪片という意味のとおり、雪がひらひらと落ちるように花が着きます。


L.aestivum(レウコユム アエスティウム) L.aestivum
(レウコユム アエスティウム)
 アエスティウム種は、本属の中で一番馴染みのある種で、「スノーフレーク」といえば本種のみを示す場合と、本種にL.autumnale (レウコユム アウツムナレ)及び L.vernum(レウコユム ヴェルヌム)を加えた3種を示す場合があります。

 本属は、オーストリア、ハンガリーなどが原産地で、日本には1930年代に渡来しました。

 本種の種子は少し変わっていてます。本種は、湿地や小川の周辺に自生していますが、種子が空気の袋を持っていて水に浮いて運ばれて自生地を広げるのに役立っています。 このような植物の進化には本当に関心させられますね。

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