Vol.23 No.6 【特 集】 新バイオマスエネルギーの生産と利用 |
化学変換によるバイオ液化燃料製法の技術革新 |
坂井 正康 |
草本類・木本類のバイオマスは毎年生産される豊富なエネルギー資源であると同時に,カーボンニュートラルであることから,21世紀に向けた化石燃料代替のエネルギー源として最大の期待が寄せられている。 しかし,利用技術としては,直接燃焼が大半を占めており,今後は自動車をはじめとする機械動力源としての液体燃料生産へ展開する必要がある。 液体燃料化は発酵法によるエタノール燃料,植物油のエステル化によるバイオディーゼル油の技術があるが,多量の残渣物を残し,生産性も低い。そこで, 草木を原料として部分燃焼によって合成ガスを発生させ,このガスからメタノールに燃料を合成する技術を開発した。この製法では草木の種を問わず, 全量を原料とすることができ,高い収率が期待できる。ここではバイオマスのエネルギー利用における世界の動向を踏まえ,新しい液化燃料製法の技術内容と意義について述べる。 |
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海外のバイオマスエネルギー開発・実用化の現状 −米国の稲わらエタノール2001年工業化計画など− |
斉木 隆 |
EUは1997年に公表した再生可能エネルギー源白書に基づき,また米国は1999年の大統領令に基づき,2010年までにバイオマスエネルギーの使用を3倍化する計画を推進している。 ブラジルも1975年以来国家アルコール計画によりエタノール燃料が大規模に使われている。欧米,ブラジルにおけるバイオマスエタノール, バイオディーゼルの技術開発と実用化の状況を概説した。 |
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バイオマスのエネルギー変換利用可能性を評価する視点 |
松田 智 |
バイオマスのエネルギー利用可能性に関する議論を正確に進めるには,常に次の二つの面を同時に考慮しなければならない。すなわち, (1)バイオマス資源の量と分布(→実際に,どこにどれだけのバイオマス資源が存在し,そのなかでエネルギー利用可能な量はいかほどか)と, (2)利用の仕方(→エネルギー利用の形態,技術とシステム)の両者である。本稿では,こうした観点から,バイオマスのエネルギー利用可能性を評価するうえでの考慮因子を, 具体的に整理してみた。 |
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牧草・飼料作物によるバイオメタノール生産 |
中川 仁 |
熱帯草地はバイオマス生産量が高く,大気中の二酸化炭素削減効果は熱帯雨林に匹敵する。この原動力となる熱帯牧草や温帯牧草のバイオマス生産量を検討した。 亜熱帯圏ではネピアグラスなどの多年生栽培によるバイオマス生産が有効であり,温帯圏では長大作物の一年生栽培などが有効である。 ここに示した収量データは飼料生産のための品種あるいは栽培試験で得られたものであるため,今後最大収量を得るための品種育成や栽培体系の確立が必要である。 育種に関しては遺伝子組換え技術やエンドファイト利用も有効であろう。牧草類は劣悪環境にも強く,ガス化合成によるバイオメタノール生産に適した原料である。 |
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藻類や水生植物はバイオマスエネルギー資源となりうるか |
都筑 幹夫 |
水界の光合成生物は,分類学的にも大きさの点でも多様である。水界は地上と異なりCO2の拡散は遅いが,海藻などでは栄養分は身体全体から吸収される。 コンブなどの褐藻類や緑藻のアオサ,単細胞性緑藻のクロレラ,糸状性ラン藻など,また,湿地にはえるヨシや池などで増殖するホテイアオイも十分高い光合成活性を有している。 収穫の容易さや栽培(培養)の容易さなどを考慮して,今後バイオマスエネルギーのための資源化が図られる可能性は高い。 |
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森林由来のバイオマス資源のエネルギー利用 |
原田 寿郎 |
林地残材,間伐材,里山広葉樹,竹,笹など十分に活用されていない森林資源量や,工場残廃,解体材,古紙等で再利用されず焼棄却されている資源量を統計資料や各種報告から推計すると, 1年間に利用可能な森林由来のバイオマスエネルギー資源の潜在量は約4,300万tあり,これは年産1,800万tの石油に相当する。森林資源のエネルギー利用の取組みは, 各地で途につきはじめており,その現状と今後の課題についても述べる。 |
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