Vol.24 No.4
【特 集】 遺伝子組換え作物・食品の安全性研究


遺伝子組換え植物の安全性研究の現状と展望
鎌田 博
 遺伝子組換え農作物の環境影響や食品としての安全性確保については、世界中の科学者が現存の生物学の知識を駆使して同じ懸念をもとに基準を作成している。 食品としての安全性確保においては実質的同等性の懸念が、環境影響においてはファミリアリティーの懸念が提唱されており、その懸念に基づく安全性評価が各国の政府によって実施されている。 しかし、その根元的な考え方が一般市民にうまく伝わっていないために誤解が生じている。一方、環境浄化を目的とした新しい遺伝子組換え植物が育成されつつあり、 新しい概念を構築することが必要である。また、遺伝子組換えの表示についてもその基礎となる考え方を広めることが重要である。
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組換え作物研究の最前線
渋谷 直人
 遺伝子組換え作物は、光合成効率の向上や種々のストレス耐性付与などにより農業生産力の飛躍的向上に結びつく可能性を持っている。また、 さまざまな生物由来の遺伝子を活用できるという特徴を活かして、植物における有用物質の生産や健康機能性の付与、さらには環境負荷物質の分解除去など、 全く新しい分野への応用も考えられている。遺伝子組換え作物の安全性を確保しながら、こうした広範な可能性を追求することが重要な課題となっている。
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海外における組換え体の利用と規制などの調査報告
萱野 暁明
 1980年代に組換え農作物が開発されて以来、その安全性については環境に対する影響および健康への影響、さらには、組換え農作物の開発による社会科学的影響も議論されてきた。 わが国においては、最新の科学的知見に基づき、環境や健康への影響について十分な評価を行って研究を推進しているが、海外諸国においては、それぞれの事情により、 組換え体の安全性評価システムの実情も少しずつ異なっている。各国の状況について解説するとともに、各国の現状を踏まえ、21世紀におけるわが国の課題について考察する。
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組換え作物の環境影響研究の現状
三田村 強
 遺伝子組換え作物の栽培に伴う環境影響問題は、一般消費者からも関心がもたれるようになり、さまざまな視点から論議がなされているが、論議の内容が相互に関連しているため、 問題の焦点がつかみにくい。しかし、これらの論議のなかで、作物のもつ特性、すなわち組換え作物が雑草化する課題と、組換え作物が近縁野生種と交雑し、 導入遺伝子が拡大するという、二つの課題を中心に、害虫抵抗性、除草剤耐性など導入遺伝子の機能に関わる影響を考察すると、全体像が理解しやすい。
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遺伝子組換え体の検知技術開発の現状
松岡 猛・日野 明寛
 遺伝子組換え技術を利用して開発された農作物が、わが国でも食品として利用されるようになっているが、一部の消費者は不安を拭いきれずにいる。 2001年4月からは新しい表示制度が実施される。この表示を行うためには信頼性と実用性が高い遺伝子組換え体の検知技術が必要となっているが、 分析を実施するためには遺伝子組換え農作物に関するさまざまな要因を理解する必要がある。そのような問題を解決する一つの方法として、 遺伝子組換え体を定性・定量的に検知する技術が食品総合研究所を中心としたグループにより開発された。
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組換え食品の安全性とその評価
手島 玲子
 わが国における遺伝子組換え食品の安全性評価の現状を特にアレルギー誘発性に関して詳しく述べるとともに、私どもが、 ここ3年の間に遺伝子組換え食品の後世代交配種のフォローアップ的研究として行ったアレルゲン性試験並びに免疫毒性試験について報告する。 具体的には、1)新規産生蛋白質のin vitro での分解性の検討、2)アレルギー患者血清を用いる新規産生蛋白質のアレルゲン性の検討、 3)亜急性毒性試験の期間投与した動物における免疫毒性並びに抗体産生の検討であるが、現在まで、国内で安全性確認済みの組換え食品については、 アレルゲン性並びに免疫毒性影響は観察されていないと考えられる。
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