Vol.24 No.6 【特 集】 農業における機械化・ロボット化の最前線 |
車両系農業機械のロボット化 −現状と将来展望− |
野口 伸 |
生産資材である農業機械の重要な役割に作業の軽労化、高効率化、高精度化がある。この農業機械の究極の姿をロボットに求めた研究開発は国際的にもホットなトピックである。 農業機械のロボット化研究はどこまで進んでいるのか? 実用化するうえで何が残された課題か? さらに、ロボットを中核にした農作業技術が実用化した暁には、 どのような新たな生産技術が展望できるのか? など、本稿では車両系農業機械、とくにトラクタのロボット化の現状と将来展望について紹介する。 |
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自動走行田植機による移植作業 |
長坂 善禎 |
位置計測にRTKGPSシステムを、姿勢計測にFOGセンサを使用し、コンピュータ制御により無人で作業を行う自動走行田植機を試作し、田植え作業を行った。 作業時に代かき田の凹凸により田植機が前後左右に傾き、位置計測に影響するので、姿勢の計測を位置計測と同じタイミングで行い、これを補正する。 また、位置と方向の情報をもとに、田植機の各部を電動アクチュエータで操作して、自動作業を行う。目標経路からの最大誤差10cmで、 作業効率は10aあたり20分程度で作業を行うことができる。 |
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野菜における収穫作業の機械化 |
小林 恭 |
担い手の高齢化、輸入野菜の急増、消費の伸び悩みなどの状況のなか、野菜の収穫作業は作業能率の向上に加えて、作業姿勢、重量物ハンドリングなどの労働負担の点からも機械化が強く求められている。 収穫作業の機械化は生研機構を中心とするいわゆる「緊プロ」事業で加速され、これまでに重量野菜を中心に多くの野菜収穫用機械が開発され一部は市販されるようになった。 また、本来の技術として選択収穫を行う野菜収穫ロボットの研究も進められている。しかし、収穫機の普及台数はまだ非常に少ない。今後、機械化を進めるためには、 機械と、その利用技術の開発・改良に加え、機械化栽培に適した品種や栽培法の研究、流通形態や出荷基準の見直しなどの総合的な対策が一層重要である。 |
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耕うんロボットの現状 |
行本 修・松尾 陽介・山本 聡史 |
生研機構では、過去10年以上にわたり、耕うん・整地などのトラクタ作業を無人で行う作業車の研究を続けてきた。その結果、1997年までに、
圃場内の自己位置及び進行方位を認識し、有人の場合と同程度の作業効率で、無人耕うん・整地作業を行う耕うんロボットを開発した。 耕うんロボットはその後、各種農作業への展開や利用方法の研究により、播種や代かきなど多くの作業に適用できるようになった。また、 安全で信頼性の高い無人作業を行うために、センサやアクチュエータの動作確認などを行う自己診断機能や、作業中の各種トラブルに対するアラーム機能を充実させて、 車両系作業の無人化をより確実で安全性の高いものに発展させた。 |
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茶栽培における管理作業の自動化と情報化 |
深山 大介 |
近年、茶は、その機能性が高い評価を受け、緑茶缶飲料の増大など、新たな需要が伸びており、国内生産は比較的安定している。しかし、
生産者の高齢化や担い手不足から管理が不十分な茶園が見られるようになっている。また、茶栽培では多肥栽培が行われてきたため、環境負荷軽減が大きな課題となっており、
環境に配慮した茶園管理が必要となっている。 このような状況のなか、作物や圃場などの状態を正確に把握し、それに応じて栽培管理をきめ細かく行い、生産性の向上と資材の適正投入による低コスト ・環境負荷軽減を同時に可能とする自動化・情報化研究が進んでいる。ここでは、茶栽培管理作業に関する最近の研究動向を紹介する。 |
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収穫ロボット |
藤浦 建史 |
農業分野におけるロボット化の研究は、多岐にわたっているが、ここでは果実と野菜の収穫ロボットについて、特徴、構成、研究例を述べる。 果実や野菜は、位置、大きさ、熟度などが一定でないため、果実や野菜の収穫ロボットは、ビデオカメラや三次元視覚センサを用いて対象物認識して収穫する方法を用いている。 果実は一般に茎葉近くに存在し、ロボットで収穫しようとすると茎葉が障害となることがある。このため、果実収穫ロボットでは、果実と葉や茎が分離する栽培様式や作目を対象とした研究や、 障害となる茎葉も認識して避けて収穫する研究も行われている。 |
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搾乳作業のロボット化 |
本田 善文 |
搾乳作業は酪農家の管理労働時間の過半を占めており、また、一日も欠くことができない多労な作業である。これを自動化・無人化する搾乳ロボットは酪農家にとって夢の機械であったが、 電子機器類の低価格化と牛の行動を巧みに制御する牛舎レイアウトの発案によって、実用的なロボットが市販化されるに至った。ここでは、 搾乳ロボット開発の歴史と現在実用化されているロボットの構造・機能を紹介するとともに、日本へ適用するための技術的な課題を概説する。 |
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