Vol.24 No.9
【特 集】 農産物・食品の先端計測


MRI(核磁気共鳴イメージング)による米粒内部構造の計測
永田 忠博・堀金 明美
 米粒の登熟と炊飯の過程をMRI(核磁気共鳴イメージング)により計測した。登熟過程では形態変化に加え、貯蔵デンプンの質的変化、 さらには従来の推論であった水の移動経路をMR画像により可視化した。炊飯米の計測では、加熱による水の動態とデンプン糊化の様子を示すことができた。 加えて飯粒のMR画像から1粒ごとに複数の空洞が存在することがわかり、この空洞の形成メカニズムも明らかにできた。また3次元画像から空洞容積を定量し、 コメ5品種の炊飯過程の容積変化を調べた。

 本稿ではコメを例に、作物の生長と食品の調理という段階の計測結果を紹介するが、MRIの非破壊分析法としての利点を活かした多方面での応用が期待される。
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ラマン分光法による農産物の計測技術
大久保 優晴
 ラマン分光法は、レーザー、検出器などラマン分光を行うための周辺機器の発展に伴い、装置の小型化・高感度化が進み、操作性の向上と共に、 その測定対象が急速に広がりつつある。ここでは、ラマン分光法および最近の装置的な発展についての紹介と、農産物への応用として水稲種子の発芽特性とラマンスペクトルの相関について検討した結果を紹介する。 今後、ラマン分光法の持つ、微少領域の非破壊測定という特長を生かした応用範囲の拡大が期待される。
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食品分析における質量分析法の利用
渡井 正俊
 質量分析計は、一般に化学物質の構造決定の一手段として使用されているが、食品中の化学物質を定量する際には、クロマトグラフと組合せて用いられている。 ガスクロマトグラフ−質量分析計(GC/MS)は、分析装置の低価格化及び小型化により、すべての科学分野において重要な分析装置の1つとして定着している。 また、近年高速液体クロマトグラフ−質量分析計(LC/MS)が一部に制約があるものの、装置的に実用化の域に達し、急激に利用頻度が増えつつある。 ここでは私どもの分析試験の中で、GC/MSやLC/MSがどのように利用されているかを紹介したい。
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赤外分光法による農産物の成分分析
堀金 彰
 光には、私たちの目に見える可視光線や、波長が長く目には見えない赤外線などがある。赤外線を種子などの農産物に当てると、 タンパク質のアミド基や脂質のカルボニル基の振動に対応する赤外線が吸収される。測定した一定領域のデータを2次元的に集めると、 種子中の成分量や分布状態などを視覚的に分かりやすい画像、すなわちマッピングで表すことができる。ここではコムギを1例としてデータを得るまでの手順、 すなわち種子サイズの計測、計測データを基にした種子固定用ホルダーの設計および作製、ホルダーに固定した種子の平滑な切片調製技術、 切片の切断面の赤外分光による成分分析のマッピングの手法を順を追って具体的に紹介する。
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食肉の光学的計測
入江 正和
 食肉の品質は変動が大きく、価格のみならず、味、保存性、人の健康等にも影響する。現在、肉質は主に見た目で判断されているが、 迅速に評価できる科学的方法の確立が急務である。光学的計測法は迅速、客観的かつ低コストで商品価値を損なわない長所があり、最も実用化が期待される。 そのうち光ファイバ法は光の物理性を利用して肉質を測定する方法で、低品質肉や脂肪の質、結合組織量の評価、あるいは肉色や脂肪色の変化原因を追及する手段としても使用できる。 画像解析法は赤肉量や脂肪交雑などの評価に応用できる。わが国独特の肉質特性を客観的かつ迅速に評価できれば、生産・流通・加工・消費サイド、 さらには品質向上にも役立つだろう。
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味センサによる食品の簡易迅速な計測
佐藤 勝史・池崎 秀和・谷口 晃
 食品の新製品開発や製造ラインでの品質管理において、人の感じる味を検出してパネルをサポートする味認識装置の開発が望まれていた。そこで、 生体の味受容機構に習い、味細胞の膜の主要構成成分である脂質を利用した人工の味覚センサを用いることにより食品の味の評価が期待できる。 味覚センサは、従来のセンサのもつ「高選択制」という概念と異なる「広域選択性」とでも呼ぶべき概念をもつセンサである。味覚センサはこれまでビール、 日本酒、コーヒー、牛乳、味噌、醤油等へ適用され、その銘柄差のみならずロット(製造工場、製造日)間差の識別も行うことができ、 官能とのマッチングも取れるようになってきた。味を数値で評価でき、それを記録に残すことで、食品の品質保証の向上に大いに貢献できる。
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