Vol.24 No.11 【特 集】 木材資源の新しい活用 |
木材資源の有効利用技術と新用途開発 |
海老原 徹 |
木材は再生産可能な持続的資源であり、循環型社会の構築に向け木材資源の合理的な利用法の確立が重要になってきている。 最近、木材資源の多様な利用法、例えば、新しい木質材料の製造法、プラズマ処理、表面プラスチック化、表面圧密化などによる表面処理技術、 WPC化、木材・無機質複合化、木粉・プラスチック複合化によるハイブリッド化、木材を可塑化・可溶化してプラスチックに変換する技術、 木材を液化し接着剤や発泡体として利用する技術、さらには、木材由来の化学成分から機能性素材を創製する等の技術開発が急速に進んできたが、 実用化に向け研究の一層の進展が求められている。 |
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振動吸収性木質ボードの開発 |
海老原 徹 |
木質材料を高機能化するためには、付加したい機能を持った他材料を複合化することが一つの方法である。 本研究では、残廃材や低質材などからできる木材チップとポリ塩化ビニルを基材とした振動吸収材を複合して、振動吸収性パーティクルボードを開発した。 一般的な木材と比較して、開発した振動吸収性ボードの振動吸収性能は一桁向上し、木質材料としては非常に高い水準にあり、住宅、家具、 家電製品などの部材として振動を抑えたい部位に用いることができる。 |
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割裂細片積層材(SST)の開発 |
藤井 毅 |
割裂細片積層材(SST)の原料には、スギ、ヤナギなど生長が早くて軟らかい小径木、林地残材、工場端材、建築廃材等を用いる。 小丸太や厚板を4mm×10mm断面に割裂細片化したストランドを乾燥させて接着剤を塗布した後、木材の繊維走行を揃えて積層したストランドマットを熱圧成型してSST製品を造る。 このプロセスを機械化すると、丸太から製品まで所要時間が30〜40分、加工歩留まりが90%程度である。スギ製材背板やヤナギ小径木を原料とし、 適正条件で熱圧成型すると、一般製材品の1.2〜1.5倍のヤング係数、1.5〜2.0倍の曲げ強度をもつSSTを製造することができる。 ストランドとセメントや発泡性樹脂との複合により、防耐火性や断熱性など特殊な機能をもつ木質新素材を造ることができる。 |
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グリオキザール樹脂処理木材の性能 |
伊藤 貴文 |
木材は環境にやさしい材料といわれているが、水分の吸脱着に伴う寸法変化が極めて大きいこと、耐朽性に乏しいことなどが原因で、その使用範囲は著しく制約を受けている。
また、アルミニウムなどの代替材の進出にあって、用途は狭まりつつあるのが現状である。 このような状況の中で、できるだけ簡便な方法により、木材に寸法安定性と耐朽性を付与する技術の確立を目指してきた。ここでは、 木綿繊維の改質剤であるグリオキザール樹脂を用いて化学修飾を行った木材の寸法安定性、耐朽性、強度等の性能や実用化例について報告する。 |
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表面光安定化による木材の耐候性向上 |
木口 実 |
デッキなど屋外で使用するエクステリアウッドの需要が伸びてきているが、耐候性の低い木材は無処理では短期間で変色し、透明塗装でも数年で塗膜剥離を生じてしまうため、 木材の色調を好む我が国では、木材の耐候性の向上が強く求められている。木材は紫外線を吸収しやすく、これにより劣化するため、木材表面の光安定化が重要である。 木材の化学成分と反応する紫外線吸収剤を直接木材にグラフト重合させることによって、屋外での木材の光劣化を抑制できることを明らかにした。 このグラフト手法を木材単板に施し、これを木材やその他のエクステリア材料にオーバーレイすることによって、木材の色調を屋外でも長期間保持できる処理技術を開発した。 |
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有機溶媒処理による木材成分の分離技術 |
島田 謹爾 |
木質バイオマス資源の高度利用をはかるため、有機溶媒処理による木材成分の効率的分離技術として、プロピオン酸による常圧下での連続抽出法を検討した。 その結果、成分分離の難しい針葉樹材に対し、優れた脱リグニン効果が認められ、分離された成分の新規な特色を明らかにした。また、 本処理がなぜ脱リグニン効率が優れているのかを究明するとともに、分離成分の特性を利用した新しい成分総合利用のための分離法としての意義について考察した。 |
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紫外線吸収性を有するリグノセルロースフィルム |
平林 靖彦 |
1985年末にオゾン層の破壊を示すオゾンホールの存在が発表され、地上に到達する有害紫外線量が増加すると警告されて世界に衝撃をあたえた。 それ以来、フロンガスの製造と使用禁止によるオゾンホールの拡大防止策が進められ、紫外線防御技術も注目されるようになった。 自動車の窓もUVカットガラスが標準仕様の時世である。紫外線吸収フィルムは時代の申し子ともいえる。以下は、 自然界に存在するリグニンの紫外線吸収機能に着目して紫外線吸収性を有するリグノセルロースフィルムの開発を行った経験を述べる。 |
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繊維状木材の低温炭化による油吸着材の開発 |
梅原 勝雄 |
北海道立林産試験場では、木質ファイバーを低温炭化することにより、水を吸わずに油だけを選択的に自重の18〜32倍吸着する木質油吸着材を開発した。 実用生産機の開発について、林産試験場と共同研究を行った北海道森林組合連合会は、工場を建設して木質油吸着材の生産・販売を行っている。この油吸着材を用いた製品は、 すでに海上保安庁の型式承認を取得しており、海上での公式利用が可能となっている。北海道森林組合連合会は河川の油事故処理をターゲットに絞った販売を全国的に推進し、 注目を浴びている。この木質油吸着材を不織布に入れたマット製品(1枚180g、内容量150g)は、油の種類によって5分間で2.8〜4.1kg吸着する。 |
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