Vol.25 No.11 【特 集】 よみがえる雑穀−その魅力 |
雑穀類における国内状況と課題 |
農林水産省生産局農産振興課 阿部知康・松井良成 |
アワ・キビ・ヒエなどの雑穀は、わが国では古来から栽培されながらも、時代とともに減少し、近年では、その作付けも僅かとなっている。
しかしながら、最近になって雑穀のもつコレステロールや血糖値の低下作用、アレルギー患者に対する代替食などその機能性が徐々に明らかにされており、
健康志向の高まりと相まって、雑穀が見直されてきているところである。 また、こうした雑穀と同様、ハトムギやアマランサスについても、その機能性が評価されてきている状況にある。 本稿では、こうした機能性を持ち合わせた、雑穀類の生産状況などについて紹介する。 |
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世界の雑穀類と栽培状況 |
東京学芸大学環境教育実践施設 木俣 美樹男 |
世界各国において多数のイネ科穀類が栽培されてきた。しかし、緑の革命によって、栽培される穀類の種とその品種が限定、画一化されるとともに、コムギなどの生産量と世界貿易量が増加し、 この影響によって雑穀類の栽培面積は減少してきた。今日も雑穀類は、アフリカ大陸やインド亜大陸などの国・地域においては食料や飼料としての重要性を変えることなく、他方、 アメリカ合衆国やオーストラリアにおいてはトウモロコシなどの生産量が増加し、重要な貿易品となっている。今後とも雑穀類に関わる生物多様性保全や伝統的な智恵の保存のための研究が望まれる。 |
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雑穀の栽培・調製技術 |
岩手県農業研究センター県北農業研究所 飯村 茂之 |
アワ、キビ、ヒエ、アマランサスの播種から収穫・調製までの栽培技術を紹介し、改善するべき方向を提示した。雑穀栽培の改善には、作業の効率化と、農薬にたよらない中間管理が必要であり、 このために真空播種機、乗用管理機、汎用コンバインなどを用いた機械化体系、およびヒエの水田移植栽培法を開発した。 |
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新しい雑穀−ハトムギの新品種育成 |
(独)農業技術研究機構 東北農業研究センター 加藤 晶子 |
ハトムギは江戸時代に日本に導入されたといわれている比較的新しい雑穀である。ハトムギは薬用植物として小規模に栽培されてきたが、湿田でも栽培できる水田転作作物として脚光を浴び、 広く栽培されるようになった。新品種の育成が開始されて約20年になり、これまでに、「はとちから」「はとむすめ」「はとひかり」「はとじろう」「オホーツク1号」の5品種が育成された。 ここでは、近年のハトムギをめぐる栽培および利用の状況と、新品種の育成について紹介する。 |
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雑穀遺伝資源の収集保存と利用 |
(独)農業技術研究機構 作物研究所 勝田 眞澄 |
かつてわが国では、地域に特有で、多様な利用法に即した様々な雑穀の品種が成立していた。しかし、アワ、キビ、ヒエなどの栽培が激減するなかで、そのほとんどは姿を消してしまった。
農林水産ジーンバンク事業では、20年以上にわたり国内各地で在来品種の収集調査を行っており、自家用などにごく小面積での栽培を継続している農家を探し出して、
失われつつある遺伝資源を保全する努力を続けてきた。 雑穀における新たな需要が醸成され栽培復興にむけての動きが生れつつあるなかで、これらの遺伝資源は新規な栽培系統開発の素材として、有効利用が期待できる。 |
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キビ、アワ、ヒエの機能性 |
岩手県農学部農業生命科学科 西澤 直行 |
雑穀の魅力は無農薬で栽培できる安心・安全と、おいしいことである。キビ、アワ、ヒエの成分と健康機能についてまとめた。キビ、アワ、ヒエの一般成分はコメと比較すると、 概して蛋白質、ミネラル、および食物繊維含量が多く、ビタミンのそれはコメとほぼ同じ含量といえる。これらの機能性として、キビ蛋白質の血中HDL-コレステロール濃度を上げ、 肝障害を抑制する作用、また、ヒエの抗体産生抑制作用などの健康機能性を見出した。さらに、このような大学の基礎・応用研究成果を地域産学連携新食品開発によって、食パン、 蒸しパン、伝統和菓子として商品化・事業化した。 |
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つぶつぶクッキング −雑穀の食材としての可能性と活用術 |
いるふぁ・未来食アトリエ風 大谷 ゆみこ |
食糧の確保、環境の保全、食の健全化という3つの問題解決のための鍵として、作物の多様性の回復と保全へのとり組みが国際的問題になっている。とりわけ、環境適応力が強く、 少ない水と肥料で栽培できる伝統穀物の復活へのとり組みが各国で始まっている。作物の多様化を促進するには、作物の利活用方法の多様化、すなわち食文化の多様化が鍵になる。 本稿では簡単でおいしい雑穀の料理への活用事例を紹介する。 |
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