都市建築物緑化の最新動向と今後の展望 |
明治大学農学部 輿水 肇 |
都市建築物の緑化はアーキテクチュアルフロントへの緑化という戦略的な意味がある。建築物の性格と屋上利用の形態の違いによりふさわしい緑の形態がきまる。
それは森,公園,庭園,菜園,芝生・花壇,地被などであり,アメニティデザイン,エコロジカルデザインか,インテンシブ,エクステンシブな設計・管理か,などの組み合わせを選択することである。
これらを実現する基本技術は開発されているが,ふさわしい植物や土壌の特性は実験的に明らかにする必要がある。都市の自然再生,環境改善,建築物の修景や省エネなどに貢献することから,
行政的な支援も積極的に行われている。
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屋上緑化の効果計測 |
和歌山大学システム工学部 山田 宏之 |
屋上緑化によるヒートアイランド軽減効果を考えた場合,直接効果と間接効果に分けることができる。直接効果は,緑化により都市の外気の昇温を抑制する働きであり,
実測的には0.7℃程度の低減効果が把握されている。間接効果は,地上の緑地にはない屋上緑化独特のものであり,緑化によって建物内部の熱環境を改善して,空調負荷を低減し,
エネルギー消費量および空調排気を軽減することにより,間接的にヒートアイランド化を抑制する働きである。実測事例では,7〜30%程度の電力消費量の削減効果が報告されている。
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屋上緑化の技術的課題と展望 |
(株)竹中工務店技術研究所 今野 英山 |
屋上緑化には地上とは異なる様々な技術的課題がある。植物にとって屋上は,水分の過不足が生じやすく,熱環境も厳しい。風も地上より強く、台風時には緑化基盤ごと吹き飛ばされる恐れもある。
また建物には積載荷重の制限があり、屋上緑化の形態や設置面積は積載荷重によって左右される。防水・耐根に対する技術や維持管理の問題も大きい。
こうした技術上の課題を克服して初めて健全な緑化が可能となり,都市環境改善のさまざまな効果につながる。ただし,個々の屋上緑化の推進だけでは都市環境問題の根本的解決にはならない。
屋上緑化の効果が最大限発揮できるような利用性の高く、景観的にもつながりのある都市の構造そのものの改善が求められる。
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人工軽量土壌の特性 |
鹿島建設(株) 技術研究所 工藤 善 |
屋上緑化は古くは60年以上前から行われているが,人工軽量土壌は,約30年前に初めて用いられた。現在では多くの製品が流通しているが,その土壌の性質はそれぞれ違うので,
それぞれの性質を知った上で利用することが望ましい。現在流通している代表的な人工軽量土壌の物理・化学的性質の分析データより,それぞれの土壌の特徴を述べ,屋上緑化で利用する際の留意点を紹介する。
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屋上緑化用の植物の種類と特性 |
(財)日本花の会 田中 俊行 |
屋上緑化に適した植物やその管理法は一般の庭園や花壇とは違う場面が多々ある。屋上緑化に向いた植物の種類,その管理法,土,水,施肥管理や病害虫対策,
そして乾燥・寒風あるいはポットなどの転落・落下の防止など屋上緑化特有の問題について解説する。
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屋上緑化の実例 |
NPO法人 屋上開発研究会 王子木材緑化(株) 藤田 茂・山田 三杉 |
建築物の緑化においてはその環境条件,立地条件,建築条件,利用目的,管理体制,安全面など種々の条件により最適な技術,資材を選択し計画を進めなければならない。
現在数多くの技術,資材が世に出回っているが,どの場面でどのような技術,資材を使うかといったソフト面の技術が重要である。また,作成の段階,維持管理においても,
住民参加など種々の取組みがなされている。そこで屋上緑化の実例のうち,多様な技術,資材を取りいれた例を挙げて検証したい。
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屋上緑化の支援制度 |
(財)都市緑化技術開発機構 佐藤 忠継 |
都市環境を向上・改善するため新たな都市緑地空間として,建築物屋上の緑化が期待されている。新たな用地の確保が困難な既存市街地のオフィス街などにあっては,
民有地の緑化を推進し,民有地緑化の自発的な取り組みを支援していくため,屋上緑化の普及推進にむけてさまざまな支援制度が整備されている。建築容積率の緩和制度,
緑化施設の工事費に係る固定資産税の減税,屋上緑化に係る費用の一部を助成する制度,低利子融資制度などである。これらの支援制度により,屋上緑化導入の動機付けや建設コストの低減にもつながり,
企業の事務所ビルを始め個人住宅まで,屋上緑化の普及推進に寄与している。
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