Vol.27 No.9 【特 集】 未利用資源の新たな利用法 |
※下記文中の「(独)農・生研機構」は「独立行政法人 農業・生物系特定産業技術研究機構」の略です。
おからなどの副産物を原料にした耐水性生分解性素材の開発 |
(独)食品総合研究所 五十部誠一郎 |
本研究においては、トウモロコシ種子タンパク質の一つで疎水性残基が多く水不溶性のタンパク質ゼインに注目し、精製ゼインはコストが高いことからこれを多く含むコーングルテンミールを主剤として、 また、強度向上と原料コストの低減化のために、おからなどを副材料として用いて、生産性の高い射出成形法での生分解性固形素材の製造法を開発した。 開発した生分解性素材は完全な生分解性を有し、コストも安価であり、苗ポット、農産物や食品などの容器としての適用について検討を進めている。 |
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卵殻・卵殻膜を利用した商品の広がり |
キューピー(株) 石井 祐子 |
キユーピーグループでは鶏卵を主原料として、マヨネーズをはじめさまざまな卵加工品を製造している。1年間に使用する鶏卵の量は、 キユーピー8工場およびグループ会社を含めて約23万t(約40億個)、製造過程で発生する卵殻は、およそ2万3千tにも及ぶ。これらの卵殻は、 以前は廃棄物として埋め立てられていたが、環境保全のため早くから再生利用への取り組みに着手し、現在ではキユーピーグループで発生する卵殻を100%再資源化している。 さらに、卵殻と卵殻膜を分離して、それぞれの特性を活かした用途開発を推し進めている。 |
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チーズホエーを利用したヨーグルトタイプ飲料の開発 |
(独)農・生研機構 畜産草地研究所 橘内 克弘 |
チーズ製造の際に副成するホエー(乳清)は特有の不快臭を持つため、そのままでは人の飲用には適さない。このため、従来は大規模施設で処理できないホエーの多くが捨てられてきた。 この問題を解決すべく、まず、ホエー中に存在する不快臭の原因物質を見いだし、除去することに成功した。さらに、これに牛乳などを加え、乳酸菌で発酵させることにより、 非常に爽やかでのどごしの良い、ヨーグルトタイプの飲料を開発することができた。この飲料の製造には、特殊な器具を必要とせず、チーズ製造と同時並行で行える。 また、乳成分のほとんどが利用可能となり、ゴミを出さない、環境に優しいチーズ製造が可能になると考えらえる。 |
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新規機能性材料としてのサケ白子由来DNAの開発 |
(株)ニチロ中央研究所 関戸 治知 |
近年、DNA自身の持つ種々の特性を活かした機能性材料としての研究開発が進められ、ナノテクノロジー関連の新しい素材としての可能性が示されている。 当社ではDNA資源として安定確保が可能なサケ白子を原料として、新規機能性材料として必要な二重らせん構造を保持した高分子量のDNAの製法を確立した。 現在は廃棄物としてほとんど省みられることのない白子資源を原料としたDNAが、天然由来の新規機能性材料として様々な用途に広く利用され、漁業廃棄物の有効利用にも繋がることが期待される。 |
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生まれ変わったカニ殻「クラビオン」 |
オーミケンシレーヨン株式会社 吉川 政敏 |
近年、地球環境保護への関心が高まり、リサイクル、生分解性といった言葉をよく耳にする。キチン・キトサンは、カニ・エビなどの甲殻類、昆虫類、 貝類などの骨格成分として自然界において生成されており、セルロースにつぐバイオマスであり、地球上で年間10〜1,000億t生産されているとも言われている。 キチンを脱アセチル化したものがキトサンである。われわれは植物性(陸)バイオマスであるセルロースと、動物性(海)バイオマスであるキチン・キトサンとを融合し、 人と地球に優しい繊維「クラビオン」として新しく生まれ変わらせた。 |
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未利用樹皮からのタンニン成分の高効率抽出法 |
(独)産業技術総合研究所 井上 誠・小木 知子 |
オセアニア地域で大規模に植林されているラジアータパインは、利用された後に大量の樹皮を排出する。現在未利用で放置されているこの樹皮中には、 木材接着原料として有用なタンニンが多量に含まれている。樹皮からタンニンを効率的に抽出するのに、従来の加熱還流法とは異なる加圧熱溶媒による抽出を試みた。 溶媒に1%水酸化ナトリウム溶液を用いた場合、短時間に省エネルギーでタンニンが抽出できた。また水のかわりにメタノールを用いると、より低温で高品質のタンニンが得られることがわかった。 抽出されたタンニンは木材接着剤として利用でき、今後有望であると考えられる。 |
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バナナの廃材を利用した紡績糸および織物 |
東京都立産業技術研究所 樋口 明久 |
世界129カ国・地域で栽培後、廃棄されているバナナの茎部(10億t)を資源として、糸や織物に再利用する技術を開発した。バナナ繊維は繊維間の膠着物質や夾雑物のために硬く、 綿糸や麻糸のような柔らかい糸に加工することが困難であった。当研究所では、紡績技術を応用して、バナナ繊維をわた状態に加工し、紡績糸や織物を新たに作製した。 本技術を途上国に無償で技術移転して、経済的自立や地球環境保全への貢献を行う。 |
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サツマイモの加工残渣および副産物のバイオリサイクル |
(独)農・生研機構 九州沖縄農業研究センター 吉元 誠・山川 理 |
サツマイモの未利用部分の成分特性を明らかにし、その特性を活かした利用の可能性について検討している。澱粉滓は整腸作用や有害成分の体外への排出作用を有する機能性食物繊維、 澱粉廃液中のβ−アミラーゼはマルトース生産や澱粉の老化防止剤のための酵素製剤として利用できる。サツマイモ葉は、高濃度でしかも薬理活性の高いポリフェノール類を含んでおり、 野菜としてだけでなく機能性食品素材・家畜飼料、薬剤などの新用途が考えられる。 |
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