Vol.29 No.12 【特 集】 高生産性水田輪作システムに向けて |
水田輪作システムに向けて |
(独)農業・生物系特定産業技術研究機構 中央農業総合研究センター 有原 丈二 |
水田で水稲を栽培し、畑地に転換しながらムギ、ダイズを栽培する水田輪作は広く行われるようになってきたが、新たな問題も発生している。 それらは、水稲の高温による登熟不良、収量水準の低下、コムギにおける低タンパクムギ、登熟不良、収量低迷、ダイズにおける収量の低迷と変動、 青立ち、品質不安定、障害粒の発生、病害の増加などであり、そのほかにも多くの問題が顕在化してきていると考えられる。 |
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北海道道央地域におけるダイズの田植え後播種技術 |
(独)農業・生物系特定産業技術研究機構 北海道農業研究センター 北海道水田輪作研究チーム 大下 泰生 |
北海道の水田作ダイズにおいて、熟期の早いダイズ「ユキホマレ」を用いて田植え作業後の5月下旬から6月上旬までに遅播きする田植え後播種は、 5月20日ごろに播種する標準播き比べて収量の低下がなく、熟期は中生品種「トヨムスメ」並みとなる。 また、田植え後播種によりダイズわい化病の感染率が低減され、カビ粒の発生も抑制される。さらに、田植え後播種の導入により水稲移植作業との労働競合が回避され、 水稲・コムギ・ダイズの水田輪作における規模拡大と労働時間の平準化が可能になる。 |
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立毛間播種によるムギ・ダイズ二毛作化および ダイズの有芯部分耕播種 |
(独)農業・生物系特定産業技術研究機構 東北農業研究センター 東北水田輪作研究チーム 天羽 弘一・吉永 悟志・小泉 信三 |
東北地域における土地利用型の水田転作作物の栽培は気象条件などの影響を受け、概して1年1作で、収量や品質が全国平均より劣っている。そして、 これは本地域における低コスト・高生産性の土地利用型水田輪作体系を確立する阻害要因となっている。ここではこの阻害要因を解消する技術として、 ムギ・ダイズまたはソバ・ナタネの立毛間播種とダイズの有芯部分耕栽培を紹介する。ムギ・ダイズまたはソバ・ナタネの立毛間播種はこれまで1年1作であった本地域でのこれらの作物の2毛作化を可能にする。 ダイズの有芯部分耕栽培は耕起、播種および施肥の作業を同時に行え、水田の転換畑初年目のダイズ栽培における湿害と乾燥害を軽減し、増収効果を示す。 |
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排水不良地における耕うん同時畝立て播種技術 |
(独)農業・生物系特定産業技術研究機構 中央農業総合研究センター 北陸水田輪作研究チーム 細川 寿 |
耕うん軸をホルダー型にしたアップカットロータリの耕うん爪の曲がりの方向をダイズ播種条に揃えて取り付け、後方に播種機を装着することにより、 耕うんと同時に畝立てと施肥播種が可能となる作業機を開発した。畝立てによる湿害回避や同時播種による過乾燥回避により苗立ちが安定し、 生育中の土壌中酸素濃度が維持されて建立活性が良好となり、収量が増加した。北陸や東北地域、長野などにおける実証試験により広い範囲で効果が確認された。 作業技術の概要と効果、普及状況、問題点などとともに、水田輪作との関連について述べる。 |
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不耕起播種機および小明きょ作溝浅播種機利用による水田輪作 |
(独)農業・生物系特定産業技術研究機構 中央農業総合研究センター 関東東海水田輪作研究チーム 渡邊 好昭 |
不耕起播種機、浅耕播種機を用いた水田輪作体系では、土壌水分の影響を受けにくく、適期に作業ができる。また、作業の省略により低コスト化を図ることができる。 独立懸架ディスク駆動式汎用不耕起播種機はイネ、ムギ、ダイズへの対応が可能で、安定した収量が得られるが、排水の悪い圃場や排水対策の不十分な圃場ではダイズの苗立ちが不安定になりやすい。 一方、降水量が多い地域で、耕うんすると土壌が細かくなりクラストを生じる土壌では、小明きょ作溝同時浅耕播種機による表面排水を促進した栽培法が適する。 |
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中山間地域における水田輪作技術 |
(独)農業・生物系特定産業技術研究機構 近畿中国四国農業研究センター 中山間耕畜連携・水田輪作研究チーム 尾関 秀樹 |
近畿中国四国地域の水田農業は、中山間地域という不利な条件のもと、経営規模が小さく、農業労働力の高齢化テンポが速い。従って、これら中山間地域の特性に応じたイネ・ ムギ・ダイズの省力・低コスト・安定生産技術の開発が求められている。このため、当センターは、ムギ作後のダイズ栽培を安定的に行うための不耕起狭畦無中耕無培土栽培技術、 水稲種子を鉄粉でコーティングした鉄コーティング種子の湛水直播技術などを核に、ダイズなどの肥培管理技術、乾湿害・病害対策、さらには、多収コムギ品種の開発などに総合的に取り組んでいる。 |
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温暖多雨地帯特有の気象条件を活かした水田輪作 |
(独)農業・生物系特定産業技術研究機構 九州沖縄農業研究センター 九州輪作チーム 田坂 幸平 |
近年、九州・沖縄地域においては、水稲作では夏の高温や台風による登熟不良および収量・品質の低下が、また、 ダイズ作では播種期が梅雨末期と重なることから過湿による播き遅れや出芽不良が大きな問題となっている。そこで、これらの状況を概観し、 その対応策について検討する。また、全国的に普及が拡大している水稲湛水直播技術について、九州における問題点を指摘するとともに、 地域としての取り組みを紹介する。 |
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