Vol.30 No.6 【特 集】 農水産物のおいしさと鮮度・熟度 |
農産物のおいしさと鮮度評価の現状と展望 |
元京都大学大学院 農学研究科 加藤 宏郎 |
おいしさや鮮度の定義は必ずしも確立していないが,摂取者の状態や環境的要因も含め,食物について得られた五感による情報が統合された総合評価指標が 「おいしさ」と考えられる。時間的な鮮度指標は「品質が最高となった時点をスタートとする基準的な保存条件における経過時間」と定義できるが, 鮮度の計測は生化学・光学・電気・力学などに関する農水産物の性質が,時間的な鮮度により変化することに立脚しており,各種農水産物について, 生化学的鮮度指標,光学的鮮度指標,電気的鮮度指標,力学的鮮度指標などがあり,それぞれに対応した方法で鮮度が測定されており, その方法について簡単に解説し展望を述べた。 |
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米のおいしさを鮮度でとらえる |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所 食品素材科学研究領域 大坪 研一 |
米のおいしさは食味や物理化学的測定によって評価される。米は殻類であり貯蔵性に優れているが,保管中に生物的, 化学的あるいは物理的に品質劣化(古米化)が進行する。古米化は発芽率,酵素活性測定,抽出液のpH低下,脂肪酸度増加,においセンサー, 米飯物性測定などによって検知される。低温貯蔵は米の品質劣化防止に有効であり,最近では氷温貯蔵や寒冷気導入サイロなどの新しい貯蔵方法も登場している。 |
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野菜の鮮度・熟度とおいしさの評価 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所 野菜・茶の食味食感・安全性研究チーム 永田 雅靖 |
日本では約150種類の野菜が食べられている。食用とされる野菜の部位は,葉や蕾から果実や根まで多様性に富んでいる。 また,野菜は収穫した後も呼吸などの生命活動を続け,時間とともに内容成分が変化していくため,すべての野菜に共通して「鮮度」「熟度」「おいしさ」を評価できる手法は存在しない。 最近では,食の安心に関わる重要な情報として,栽培履歴のみならず流通履歴にも関心が高まっている。ここでは野菜の特性をもとに「鮮度」「熟度」「おいしさ」評価の考え方と評価法に関する最新の知見を紹介する。 |
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果実のおいしさと鮮度、熟度 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 果実鮮度保持研究チーム 中村 ゆり |
消費者の求めるおいしい果実を提供するためには「鮮度」と「熟度」が重要である。「鮮度」は新鮮さの度合いで,収穫時に最高であり, 時間の経過とともに低下する。一方,「熟度」とは果実の成熟の度合いで,果実の生育期後半の成熟に伴って,「未熟」→「適熟」→「完熟」→「過熟」へと不可逆的に進行する。 果実品質を決定するこの2つの概念について考察するとともに,その評価法について最新の情報を加えて紹介する。 |
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食肉の熟成・鮮度指標と鮮度保持技術 −牛肉の色素と脂質過酸化を中心に− |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 畜産物品質研究チーム 佐々木 啓介 |
と畜後の食肉では,熟成による品質向上と鮮度の低下がおきる。特に牛肉において,熟成は味や香り,および食感を改善する。 熟成中に生じる味および食感に関する一部の因子は熟成指標としての活用が期待される。鮮度の指標としては,消費者の購買意欲と関係する肉色や, 肉色との関連も深く,かつオフフレーバーの原因となる脂質過酸化物が有力なものの一つである。さらに,家畜の段階で抗酸化ビタミンを給与して筋肉に蓄積させることで, 肉色劣化や脂質過酸化を抑制して鮮度を長く保つ食肉が生産できる。 |
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魚介類のおいしさと鮮度評価 |
(独)水産総合研究センター 中央水産研究所 岡崎 惠美子・大村 裕治・木宮 隆 |
魚介類の鮮度,すなわち「活きのよさ」は,その商品価値をほぼ決定づける重要な要因である。魚介類の死後変化において,解糖反応によるグリコーゲンの分解と乳酸の生成, pHの低下,ATP関連化合物の分解,死後硬直,肉質の軟化は,それぞれ深く関連し合っている。近年は品質情報を含めた水産物トレーサビリティシステム構築への要望が高まるなか, バイオサーモメータ,トリーメータ,近赤外分光分析法などの現場対応型の鮮度評価技術に対する期待も高まっている。 |
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