海洋水産資源の持続的利用の現状と展望 |
(独)水産総合研究センター 和田 時夫 |
世界的に水産物需要が増大する一方,海洋水産資源の減少が懸念されている。海洋水産資源は再生産過程の適切な管理により持続的利用が可能である。
しかしながら,環境変動に伴い再生産過程が変動するほか,海中にある資源状態を直接観察することが難しいため,海洋水産資源の管理には不確実性が伴う。
このため,効果的な資源管理を目指して,さまざまな手法による確度の高い資源状態の把握や,資源や漁業の状況に適合した管理手段の選択や組合せが進められてきた。
今後は,管理効果を評価しその結果を管理方策へフィードバックさせる順応的な管理の推進や,エコラベルなどを通じた資源管理への消費者の参画を図る必要がある。
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わが国周辺海域の水産資源評価手法 |
(独)水産総合研究センター 檜山 義明 |
水産庁は委託事業としてわが国周辺海域の資源評価を行っており,対象資源は44の種(および数種を含む類)に及ぶ。
その主対象は,漁獲可能量(TAC)によって年間漁獲量の総量規制が行われている,いわゆるTAC対象種である。
TAC対象種は,スケトウダラ,サンマ,スルメイカ,ズワイガニ,マアジ,マイワシ,マサバ,ゴマサバであり,
マサバとゴマサバはあわせてさばとしてTACが設定される。本稿では,これらTAC対象種の資源評価手法と提言されている資源管理方策を紹介する。
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音波・電子標識を用いたまぐろ類の行動生態研究 |
(独)水産総合研究センター 小倉 末基 |
水産資源生物の行動生態情報は,資源評価の高度化に欠かせない重要な情報であり,直接観察として,テレメトリー技術と記録式機器による手法が用いられている。
高度回遊性魚類のまぐろ類では,超音波発信機を用いたテレメトリー手法と,アーカイバルタグやポップアップタグと呼ばれる記録式標識による研究が盛んに用いられている。
これまで,クロマグロやビンナガで大規模回遊の実態が明らかになり,まぐろ類の鉛直行動実態の解明は資源評価の高度化やメバチやキハダの小型魚保護につながる漁獲技術の
開発に貢献している。
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沿岸水産資源の増殖と管理 |
東京海洋大学 海洋生物資源学科 北田 修一 |
これまでの栽培漁業の技術開発研究は,種苗生産・放流技術および放流効果の向上を目的としてきた。
この重要性は現在も全く失われることはないが,今後は種苗放流を天然資源の管理ツールの一つとして捉え,有効に使っていくという考え方が必要である。
この論稿では,栽培漁業(種苗放流)が水産資源の増殖や管理を果たすうえで問題となるいくつかの論点を考える。
栽培漁業の理念,種苗放流の目的と機能,資源変動と種苗放流,資源管理ツールとしての種苗放流の役割について議論し,今後を展望した。
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黒潮親潮域における浮魚類の資源変動と海洋環境の関係・将来予測・資源管理 |
(独)水産総合研究センター 北海道区水産研究所 谷津 明彦 |
わが国の太平洋側に分布するマイワシ,カタクチイワシ,マサバ,スルメイカの資源変動と海洋環境の関係およびモデリングの現状を概観し,
持続的利用に向けた資源管理の方策と将来予測について検討した。調査研究の進展により水産資源や海洋生態系の動態への理解は深まるが,
内在する不確実性を大幅に減じることは困難である。そのため,順応的管理と漁業者の知識とインセンティブに基づく生態系アプローチの
採用が有用と考えられた。
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地球温暖化と海洋生態系変動 |
(独)水産総合研究センター 中田 薫 |
気候変動に関する政府間パネル「IPCC」は,2007年,6年ぶりに第4次評価報告書をまとめた。
わが国の排他的経済水域内でも顕著な水温上昇や海面水位の上昇など,温暖化の徴候と考えられる現象が観察されている。また,海洋の酸性化など,
これまであまり注目されてこなかった現象についても評価報告書は触れている。こうした変動が海洋生態系と水産資源への影響の現況について述べる
とともに開発されつつある予測技術,海洋生態系と関係する温暖化対策技術,水産資源の持続的利用のための適応化技術などについて解説する。
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