Vol.31No.2 【特 集】 第8回民間部門研究開発功績者の業績 |
アジサイ「ミセスクミコ」種苗登録をはじめとしたアジサイ育種開発 |
(有)さかもと園芸 坂本 正次 |
従来,鉢ものアジサイ生産現場では,樹の高さ,花の色合い,作りやすさなどが課題となっていた。
また,国内ではほとんど育種がされておらず,8年の歳月をかけてアジサイ「ミセスクミコ」を作出し,日本人初の種苗登録をし,育種手法も公開した。
また,開花コントロール法も開発し,3月中旬から5月中旬までと幅広く出荷することを可能とし,母の日にアジサイ需要が定着することを可能とした。県内でオリジナル品種も提供し,アジサイの普及に貢献できた。 (キーワード:アジサイ,種苗登録,花き育種,開花コントロール,ミセスクミコ) |
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スクロースを原料として酵素で作られたイヌリンの性質と食品への利用 |
フジ日本精糖(株) 和田 正 |
スクロース(砂糖)の有効活用研究を進めるなか,生活習慣病予防など生理機能が知られている水溶性食物繊維「イヌリン」を効果的に生産できる微生物由来の酵素を発見した。
その酵素を用いて砂糖からイヌリンを安定的,効率的に生産する方法を開発した。この製法により作られるイヌリンは植物由来のイヌリンに比べ品質が安定しており,水に溶けやすく取り扱いが容易であり食品加工に適する特性を有している。
また,脂肪に似た食感もあり脂肪代替機能もあることから,肥満や糖尿病につながる生活習慣病予備軍の人々の健康を増進するだけではなく,メタボを意識した加工食品の低脂肪化など食品業界において幅広く利用され得る素材である。 (キーワード:イヌリン,スクロース,酵素,脂肪代替,生活習慣病) |
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白ネギの連続紙筒による省力的な育苗・移植方式の開発 |
日本甜菜製糖(株) 白ネギ育苗・移植開発グループ 谷村 正志 |
慣行法による白ネギの育苗・移植は裸苗を手植えで溝に移植する方式であり,重労働,非効率であった。また,農家の高齢化などから,多くの労力が掛かる白ネギの育苗・移植に対して省力・簡便な方式が求められていた。
従来の紙筒は個々の筒に分離する構造であり,省力を目的とした簡便な自動化が難しい状況にあった。
この問題を解決するためにチェーン状に連結した連続紙筒を開発するとともに人力で牽引する低コストの簡易型移植器を開発し,省力で簡便性が高い白ネギの育苗・移植方式を構築した。 (キーワード:白ネギ,育苗・移植,連続紙筒,簡易移植器) |
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牛ヨーネ病原因菌検出のための遺伝子検査試薬の開発 |
(株)島津製作所 兒嶋 浩一・西村 直行 |
ヨーネ病は牛や羊などの反芻獣が感染する疾病で家畜伝染病に指定されている。いまだに有効な予防法や治療法は開発されていない。
現在の防疫対策は早期発見・殺処分であるから,早く正確に患畜を見つける検査法が実効ある対策の要である。
遺伝子増幅法に基づく検査法は,迅速な新しい検査方法として期待されているが,ヨーネ菌の結核菌としての特徴である菌体の堅牢性などが実用化を困難にさせていた。
本研究で,このような問題を解決し遺伝子増幅法を用いてふん便中のヨーネ菌を検出する実用的な方法を開発したことを報告する。 (キーワード:ヨーネ病,ヨーネ菌,遺伝子検査,核酸調製,遺伝子増幅) |
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米の醸造発酵技術による新規機能性素材ライスパワーエキスの開発 |
勇心酒造(株) 徳山 孝仁・徳山 孝 |
筆者らは「創造と科学の合一」ということをテーマに,米の総合利用研究に取り組んでおり,麹菌,酵母などによる発酵法の組合せにより,米から新しい機能をもつ素材ライスパワーエキスを開発することに成功した。
従来の醸造発酵を基礎にして独自に創出したこの技術を「日本型バイオ」と呼び,現在まで36種類のライスパワーエキスを開発し,10種類を実用化している。
ライスパワーエキスは優れた効果と安全性を兼ね備えた素材であり,化粧品・トイレタリー商品から,飲食品・アルコール飲料に至るまでさまざまな製品に使用できる利用範囲の広い素材である。 (キーワード:ライスパワーエキス,日本型バイオ,米,醸造発酵) |
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ぶどうの欧州系新品種「瀬戸ジャイアンツ」ほか7品種の育成と普及 |
花澤ぶどう研究所 花澤 茂 |
1960年ごろより,岡山県の主力品種「キャンベルアーリー」の代替品種の必要を感じ,既存品種の収集試作などを経て,1973年から欧州系2倍体品種群による交雑育種を開始,今日までに「瀬戸ジャイアンツ」ほか7品種を育成,種苗登録し,その普及と産地振興に努力している。
「瀬戸ジャイアンツ」は日本の気候風土に適した,超美味で高級感にあふれた皮ごと食べられる種なしぶどうで,消費者・生産者ともに求めていた品種である。そのため,岡山県はもとより全国各地の先進的農家を通じて増植が進み,ぶどう産地の回復・発展に大きく貢献している。 (キーワード:ぶどう,瀬戸ジャイアンツ,桃太郎ぶどう,ぶどう産業,農業振興) |
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マメ科作物の安定生産に有用な微生物資材の開発と普及 |
十勝農業協同組合連合会 梶 孝幸 |
十勝農業協同組合連合会は,1954年の販売開始以来,わが国で唯一の機関として根粒菌資材を供給している。粘土鉱物を主体とした従来の根粒菌資材は,保管状態が良くない場合には製品水分が低下しやすく,菌の生存および接種効果に影響する恐れがあった。
それらを大幅に改善すべく研究を重ね,菌の生存性を高めたピート型種子粉衣材「まめぞう」を開発した。また,大豆菌とアゾスピリラム菌の混合資材「まめぞう大豆用」を開発し,窒素2kg/10aの標準施肥量下で根粒菌単独資材よりも増収効果を高めることができた。
農家の評価は高く,北海道内におけるまめぞう普及率は,2006年に23%と増加しており,リゾビウム(根粒菌接種)加工種子と合わせた北海道内根粒菌普及率は95%に達している。 (キーワード:根粒菌資材,菌の生存性,接種効果,ピート,アゾスピリラム菌) |
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自走式養殖網水中洗浄ロボットの開発 |
ヤンマー舶用システム(株) 尾坂 滝太郎 |
魚類の海面養殖業において,付着生物による養殖網の汚れ対策が養殖業者の長年の課題となってきた。この課題を解決すべく,養殖網を水中で高圧水洗浄できる自走式の養殖網水中洗浄ロボットを新たに開発した。
このロボットは水中に設置した養殖網の面を自在に走行しながら網の汚れである付着生物を洗浄することができ,省力化や薬剤の使用量削減などの経済効果が得られ,環境にやさしく安全安心な養殖魚の生産に役立っている。
現在,国内はもちろん,海外の養殖業者にも普及し始めている。 (キーワード:養殖,付着生物,養殖網,網洗浄) |
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天然型N-アセチルグルコサミンの量産化・機能性研究及び用途開発 |
焼津水産化学工業(株) 坂井 和男・又平 芳春 |
カニ・エビ殻由来の天然多糖類キチンを原料として,天然型N-アセチルグルコサミンの開発を行った。緩やかな酸分解と酵素分解を併用してNAGを遊離させ,さらに逆浸透(RO)膜を利用した膜型バイオリアクターシステムによる効率的製造方法を構築した。
NAGはショ糖の約半分の甘味をもち,水溶性であり,pHや温度変化に対して安定である。経口投与されたNAGは吸収・代謝され,その一部は皮膚組織や軟骨組織に存在するムコ多糖類の合成に利用される。臨床試験によって肌質の改善作用,変形性関節症改善効果などの生理機能性が認められ,機能性食品や化粧品素材として幅広く応用されている。 (キーワード:N-アセチルグルコサミン,NAG,キチン,変形性関節症,ヒアルロン酸) |
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