Vol.31No.8
【特 集】 施設園芸のめざす省エネ先端技術とは


施設園芸の最新省エネ技術の現状と展望
東海大学 開発工学部    林  真紀夫
 施設園芸において,暖房費削減およびCO2排出削減のための,省エネへの取り組みは緊急課題である。省エネ技術は,次の3つに分類できる。(1)温室の保温性の向上に関する技術である。 これにより暖房熱量(暖房負荷)を抑制する。 (2)暖房システムに関する省エネ技術である。エネルギー利用効率の高い暖房方式や代替エネルギー利用などの暖房技術である。 (3)作物の生理・成育反応に基づく投入エネルギー当たりの生産量を高める温度管理で,変温管理,地下部・株元などの局所加熱などの管理技術がある。これらの技術について,現状と展望を概説する。
(キーワード:施設園芸,温室,暖房,省エネルギー)
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収量・品質を維持した大幅な石油削減
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所    川嶋 浩樹
 石油価格の高騰により,施設園芸における省エネルギー技術の開発は緊急の課題であり,栽培技術の改善による対策が図られてきた。 変温管理は,ある時間ごとに温度を変えて施設内の温度を管理する方法であり,その目的は,光合成を旺盛にし, 光合成産物の転流を促進するとともに呼吸による消耗を少なくすることにより生産性を向上させることである。 特に,変夜温管理は,収量や品質を低下させることなく省エネルギーが可能な技術として発達した。 栽培技術面からのアプローチにより作物の生理生態的特性を高度に生かした合理的省エネルギー技術の開発が望まれる。
(キーワード:施設園芸,省エネルギー,変温管理,収量,品質)
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空気膜二重被覆により30%の省エネ・節油効果がある
宮城県農業・園芸総合研究所    岩崎 泰永
 省エネルギー技術として注目されている空気膜二重被覆の保温性について無加温および加温栽培における実験データから考察した。 空気膜二重被覆の保温性は慣行一重被覆より高く,慣行一重被覆+開閉式保温カーテンとほぼ同等であると判断される。 気象条件やハウス管理,栽培管理によっては地表伝熱量の増加や潜熱移動の減少によって空気膜二重被覆の保温性が高くなる場合があると考えられる。 空気膜二重被覆にさらに開閉式保温カーテンを組み合わせると,燃料消費量は慣行一重被覆+保温カーテンの70〜90%となる。
(キーワード:空気膜二重被覆,省エネルギー,保温性,パイプハウス)
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暖房機とヒートポンプのハイブリット運転による省エネ技術
ネポン株式会社    馬場  勝
 ヒートポンプは,従来の石油式暖房機に比べ,エネルギーをより高い効率で利用でき,二酸化炭素排出量も低減できる暖房装置である。 ただし,設備費用が高く,単純な代替では必ずしも経済的に有利とはならない。そこで,従来の石油式暖房機とヒートポンプを併用してハイブリッド運転をさせる省エネ技術が開発されている。 初期投資を圧縮しながら,省エネ運転で暖房コストの節減が可能になり,さらに二酸化炭素排出量も削減できる,環境対策を兼ねた実用的な経済性に優れたシステムになっている。 また,栽培に適した温度環境を維持するだけでなく,ヒートポンプによる冷房運転を利用した夜冷や除湿運転まで含めた,周年的な利用も可能である。
(キーワード:暖房設備,省エネ,節油,ヒートポンプ,ハイブリッド)
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バイオマス等代替エネルギーによる省エネ・脱石油の最前線
東京都農林総合研究センター    島地 英夫
 石油代替燃料としては,従来は,LPガスや石炭,産業廃棄物などが挙げられている。施設園芸の暖房用のバイオマス燃料としてメタンガスの利用について現状の課題を述べる。 産業廃棄物利用としてのタイヤボイラーは,2007年の時点で,暖房費が1/10であった。 コジェネシステムや,太陽熱利用による空気膜構造の暖房ハウス・システムについて,省エネルギー,脱石油の可能性を考察した。
(キーワード:バイオマス,コジェネレーション,廃タイヤボイラー,太陽熱利用,空気膜ハウス)
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木質ペレットの活用による省エネ技術
筑波大学生命環境科学研究科    山口 智治
 原油価格の高騰を背景に様々な省エネルギー・脱石油対策が展開されているが,施設園芸における暖房用代替熱源として, 木質系バイオマス資源から製造される木質ペレット燃料の利用が注目されている。 ペレットの製造原材料として年間2,500万t発生する未利用資源の活用促進が必要である。 施設園芸現場に導入された木質ペレット焚き温風機・ボイラーについては,室温制御性の更なる改善,機器の初期導入コストの低減化が,木質ペレット燃料については, 品質維持と安定供給,低価格化あるいは適正な政策的補助が必要とされる。
(キーワード:木質ペレット,バイオマス資源,燃料,温室暖房,温風機,ボイラー)
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LCA手法を用いた施設園芸の環境影響評価への取り組み
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター    小綿 寿志
 施設園芸においては新しいタイプの温室や栽培方式の導入が進み,また原油価格の高騰に伴い省エネ技術に期待が寄せられている。 環境に配慮した農業生産が注目されるなかで,これらの新技術導入にあたっては経済性ばかりではなく環境に与える負荷を評価することが求められている。 その手法の一つとしてLCA手法を用いた環境影響評価について研究の現状と実施事例を示し,今後の課題と方向性を紹介する。
(キーワード: LCA,インベントリ分析,温室,構造部材)
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