Vol.31No.9 【特 集】 機能性に富むおいしいきのこの魅力 |
きのこはおいしく、機能性成分が多い |
(独)森林総合研究所 きのこ・微生物研究領域 関谷 敦 |
近年,きのこ単価は下落し,生産者の経営は厳しい。これまできのこの育種,栽培技術の開発は,主に生産性の向上を求めてきたが,今後,
きのこはおいしい,機能性成分が多いなど,きのこが本来持っている特徴をいかした育種,栽培技術の開発を行うことが重要であると考えている。 (キーワード:きのこ,おいしさ,機能性成分) |
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おいしいブナシメジおよびタモギタケの開発 |
北海道立林産試験場 きのこ部 原田 陽 |
全国的に生産されているブナシメジは,食味の改良が課題とされていたが,食味の品種間差を客観的に評価するための食味評価法を確立し,
本技術を開発品種の評価に導入することが可能になった。
また,北海道が主たる産地であるタモギタケは,うま味成分が多く,特徴的な風味を持っているものの,食感の向上が課題であったことから,
品種改良に取り組んだ結果,市場性の高い品種を開発することができた。 (キーワード:ブナシメジ,タモギタケ,食味評価,品種開発) |
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香りを高めた乾シイタケ |
(独)森林総合研究所 きのこ・微生物研究領域 平出 政和 |
乾シイタケは古来より食されているが近年その消費量は減少しており,食材としての魅力は以前より低下していると考えられる。
消費者にとって魅力の高い食材とは費用対効果が高い物であり,価格に見合った栄養価等を備えているか否かであり,
それにはアジ及びニオイ等の要素も深く関わっている。
特に,乾シイタケは特有のニオイを有しており,評価に大きな影響を与えていると推測されるが,ニオイを考慮した製品の作出は現在行われていない。
そこで,本稿では嗜好調査等により消費者の嗜好に合致した製品の開発方向を定めると共に,その作出方法について概説する。 (キーワード:乾シイタケ,ニオイ,嗜好調査,官能評価,ニオイ成分) |
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ビタミンB1とトレハロースの多いきのこの開発と普及 |
千葉県農林総合研究センター 森林研究所 寺嶋 芳江 |
菌床培地へビタミンB1とを添加することにより,子実体内ビタミンB1と含有量が通常よりも多いきのこ
(ビタミンB1ときのこ)を栽培する技術を開発した。
このビタミンは,体内で糖質代謝に関与する重要な栄養素で,通常高カロリー食品に多く含まれる。
新しいきのこは,低カロリーでありながら,ビタミンB1とを多く含む食品となった。さらに,トレハロース含有量の多い
シイタケ栽培技術を開発した。
トレハロースは体内でカルシウムの溶出を抑制するなど,近年脚光を浴びている食品素材である。
「ビタミンB1ときのこ」については,千葉県衛生短期大学と千葉県の普及組織との連携に基づく試験販売を経て,生活協同組合ちばコープの協力
も得ながら,千葉県ブランドとして一定レベルの含有量を維持するための認定制度の整備を行政とともに進めている。 (キーワード:ビタミンB1と,トレハロース,シイタケ,ヒラタケ,マイタケ) |
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コレステロールを下げるシイタケ |
静岡大学 農学部応用生物化学科 杉山 公男 |
シイタケは日本で古くから親しまれてきたキノコであるが,エリタデニンという血漿コレステロール濃度を低下させる化合物を含んでいる。
エリタデニンはラットでは極少量の投与で血漿コレステロール濃度を低下させるのが特徴である。
そのメカニズムについては不明な点が多かったが,その全容がある程度見えてきた。
また,エリタデニンは動脈硬化の危険因子である血漿ホモシステイン濃度も低下させることも明らかになった。
エリタデニンは血漿コレステロールとホモシステインの低下という2重の機構で動脈硬化抑制に寄与しうる可能性がある。
近年,品種改良によるエリタデニン高含有シイタケの開発も進められている。 (キーワード:シイタケ,エリタデニン,コレステロール,ホモシステイン) |
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ヤマブシタケの抗認知症食品としての可能性 |
静岡大学 創造科学技術大学院 統合バイオサイエンス部門 河岸 洋和 |
ヤマブシタケから抗認知症効果が期待される神経成長因子合成促進物質であるヘリセノン類やエリナシン類,
小胞体ストレス抑制物質であるリン脂質が得られた。
また,エリナシンA投与によって脳内の神経成長因子の量が増加することが動物実験によって示された。
さらに,ヤマブシタケによる臨床試験において認知症に対する効果を示唆する結果が得られつつある。 (キーワード:キノコ,ヤマブシタケ,ヘリセノン,認知症,臨床試験) |
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骨粗しょう症、前立腺肥大症への朗報となるマンネンタケ |
九州大学 大学院農学研究院 近藤 隆一郎・劉 潔・清水 邦義 |
わが国では,高齢化社会の到来並びに食事の欧米化が進み,高齢性のホルモン性疾患が増加している。
そこで,われわれは,高齢化社会を迎えるにあたり,今後ますます増加傾向にある高齢性男性ホルモン依存性疾患である前立腺肥大症ならびに
エストロゲン欠乏に起因する高齢性骨粗鬆症に着目し,予防・治療に有効な素材の探索を行った。
マンネンタケは,前立腺肥大抑制効果を示し,さらに,骨密度低下抑制効果も示した。
すなわち,マンネンタケは,高齢性ホルモン性疾患である前立腺肥大症並びに高齢性骨粗しょう症の予防・治療に有効な素材であることが示された。 (キーワード:高齢性疾患,前立腺肥大症,骨粗しょう症,霊芝,マンネンタケ) |
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血圧降下作用を持つブナハリダケ |
キリン ヤクルト ネクストステージ株式会社 商品開発部 佐藤 拓 |
ブナハリタケは主に東北地方で食用とされているきのこであり,特徴的な香りと食感を有している。
腐朽性の低い品種の選抜とビール仕込み粕の培地への利用で,このきのこの菌床栽培が可能となった。
ブナハリタケから抽出された熱水エキスは高血圧ラットの血圧を降下させることが確認され,その作用メカニズムにはACE阻害が関与することと
主要な降圧成分はイソロイシルチロシンであることが確認された。
ヒトでの血圧降下作用の確認として,血圧高めの方によるプラセボを用いた二重盲検法による比較試験が行なわれ,
ブナハリタケエキスの摂取により有意に血圧低下することが確認された。これらの知見をもとにしてブナハリタケエキスを利用した
「血圧高めの方向け」の特定保健用食品が上市されている。 (キーワード:ブナハリタケ,血圧効果作用,ACE阻害,イソロイシルチロシン,特定保健用食品) |
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