Vol.35 No.2 【特 集】 農作業ロボット技術の新展開 |
農作業ロボット開発の歴史と課題 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター 西村 洋 |
わが国の農業構造は,農業者の高齢化や後継者不足,さらにはTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)を始めとする熾烈な国際競争に晒されつつある農産物価格など,多くの問題を抱える中で,近年大
きく変化しつつある。そのような農業情勢を踏まえる中で,農作業ロボットの開発の歴史と主要な農作業ロボットの研究開発事例を紹介するとともに,ロボット開発の課題と展望について述べる。
(キーワード:農作業ロボット,農業機械,車両,マニピュレータ,施設,作業アシスト) |
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車両系農作業ロボットの開発動向 |
北海道大学大学院農学研究院 野口 伸 |
農村地帯では若年層の流出により,過疎化が進むとともに我が国社会全体に先行して高齢化が進行している。今後さらに高齢化が進むと予想され,農業生産における労働力不足は深刻な状況である。こ
のような背景から,農業経営の経済的な採算性に適合するようなロボット化を含めた超省力技術の開発が,日本農業を持続的に維持・発展させる上で必須である。本稿では北海道大学で開発したロボットを通
して,トラクタロボット化の到達点,そして昨年度からスタートした委託プロジェクト研究「農作業の軽労化に向けた農業自動化・アシストシステムの開発(略称:アシストプロ)」についてその概要を紹介する。さらに
測位システムの安定性向上に資する準天頂衛星システム利用についてもその可能性を解説する。
(キーワード:ロボットトラクタ,安全性,農水省アシストプロ,準天頂衛星システム,LEX補強信号) |
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車両系アシスト装置の開発動向 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター 塙 圭二 |
農業用トラクタに単眼カメラ,画像処理装置,自動操舵装置などを後付け装着したアシスト装置により,前方の目標地点に置いたターゲットに向かって直進走行する機能と,前行程の作業跡やマーカ跡に
直線的に追従走行する機能の実現を目指して開発を進めている。直進走行では単眼カメラの画像から,前方のターゲットと共にトラクタの横方向の移動量を高精度に検出する。また,追従走行では単眼カメラ
の画像から圃場の地表面の凹凸を立体的に検出し,作業跡やマーカ跡を検出し,これらの情報を基にトラクタの走行制御を行なう。圃場における作業試験により,オペレータの負担軽減や作業精度向上などの
有効性を確認した。
(キーワード:カメラ,画像処理,自動操舵,直進走行,追従走行) |
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国内における農業用GPSガイダンスシステムの普及状況 |
㈱ニコン・トリンブル 熊野 憲太郎 |
近年,北海道の農家を中心に,GPSガイダンスシステムが急速に普及しており,その数はここ3年近くで1,000台を超える勢いであり,内地の農家にも導入が進む傾向にある。このGPSガイダンスシステム導入による有効性をユーザからのヒアリングやそれぞれのデータを元に現在の利用方法と今後の可能性について考察する。 (キーワード:GPSガイダンスシステム,精密農業,可変施肥,資源コスト削減,自動操舵補助システム,VRS-RTK) |
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施設イチゴ生産のロボット化 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター 山本 聡史・林 茂彦 |
イチゴ収穫ロボットが実用化され,施設イチゴ生産の省力化へ一歩前進した。しかし,その普及に当たっては,自動で収穫作業を行う動作環境を整えるだけではなく,収益性の観点から既存の生産体系を根本から見直して,省力化,低コスト化および多収化を図る必要がある。現在,農林水産省の委託プロジェクト研究においてイチゴの超省力・多収生産システムの開発が進められ,イチゴ収穫ロボットの普及可能性を高める成果が得られている。その中で,イチゴ生産の労働時間の約3割を占める選別出荷作業の省力化を図るため,画像処理を用いたイチゴの自動選別パック詰め技術を開発した。 (キーワード:イチゴ,収穫ロボット,超省力・多収生産システム,選別パック詰め) |
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イチゴ収穫ロボットとオオバ選別ロボットの実用化 |
シブヤ精機㈱ 栗田 充隆・二宮 和則 |
昨今,産業分野のみならずサービス,医療や介護など様々な分野を対象としたヒューマノイド型ロボットの開発が進められるなか,農業分野では果菜類の「収穫ロボット」や「選果・選別ロボット」の実用化に期待が集まっている。施設イチゴの生産においては収穫作業の省人・省力化が課題であり,収穫ロボットの必要性は高い。高設栽培用イチゴ収穫ロボットは,開発9年目を迎え,実用化への取り組みを進めている。また,これまでハンドリングが困難であったオオバの選別ロボットを開発した。実際に導入・稼働している事例を紹介する。これらのロボットは,作業の自動化のみならず,施設園芸の情報化や,産品のブランド化につながるものと期待できる。 (キーワード: 収穫ロボット, 選別ロボット, 自動化,マシンビジョン) |
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農作業アシスト装置の開発状況 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター 山下 貴史 |
人間が装着するロボット「パワーアシストスーツ」に代表される「アシスト技術」の研究開発がいくつかの分野で近年活発になってきた。従来の農作業の機械化技術は,人間の代替として機械に農作業をさせることが主であった。一方,アシスト技術では作業する人間を助けることを主とする。このようなアシスト技術による農作業の機械化の意義を示し,他分野と農業分野におけるパワーアシストスーツと関連のアシスト技術開発の状況を紹介する。 (キーワード:農作業アシスト装置,パワーアシストスーツ,農作業,軽労化 |
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農業の情報化と農業機械のインテリジェント化 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター 林 和信 |
農業生産の効率化を図り,食の安心安全への意識の高まりに応えるため,GIS機能を備えた営農情報管理システムを開発した。システムにおいて情報管理の対象となりうる項目は,生産の基盤となる農
地,資材,機械器具,生産手法である農作業,生産対象である作物から生産物に至るまで広範にわたる。本稿では,開発したシステムにおける情報管理の概要や導入事例の紹介に加え,他のシステムとの情報
の交換に必要な標準化への動き,農業機械やロボット化との関連について展望する。 (キーワード:情報化,作業履歴,GIS,精密農業,標準化) |
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