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Vol.35 No.4
【特 集】 第12回民間部門研究開発功績者の業績


ヒラメ放流用種苗の大量安定生産技術の開発
公益社団法人青森県栽培漁業振興協会    福田 慎作・舘 幸男・葛西 浩史・松橋 聡・中奥 徹
 青森県におけるヒラメ資源の増大を図るため,1990年から年間200万尾を目標にヒラメ種苗の大量放流が開始された。これまで良質卵の安定確保のための親魚養成技術,初期生物餌料の大量安定培養技術および体色黒化の少ない健苗生産技術などの開発に取り組み,目標尾数を安定的に継続達成したことにより,ヒラメ資源量は回復傾向が認められ,近年では1,000t以上の比較的高い漁獲水準を維持している。
(キーワード:ヒラメ,栽培漁業,200万尾放流,資源回復)
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お米から直接パンができるライスブレッドクッカー「GOPAN」の開発
パナソニックグループ 三洋電機株式会社    滝口 隆久
 お米の消費拡大と食料自給率の向上を目指し,入手性が低い米粉からではなく,手軽に手に入る生のお米から直接,簡単に米パンを作り,もっと多くの人にたくさんお米を食べてもらいたいという想いから「GOPAN」の商品開発に取り組んだ。お米を粉にしないという発想から生まれた「米ペースト製法」や全自動化を実現した「全自動ミル機構」の2つの新技術により,約7年の開発期間を経て,家庭にあるお米からパンができるライスブレッドクッカー「GOPAN」を2010年,世界に先駆けて発売した。「GOPAN」による「新しいお米の消費スタイル」の提案は多くの消費者の賛同を得ており,17万台を超えるヒット商品となった。
(キーワード:GOPAN,米ペースト製法,全自動ミル機構,お米の消費拡大,食料自給率向上)
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先端木造技術(KES®構法)開発による森林業者と連携した地域産木材の利用拡大
株式会社シェルター    木村 一義
 森林整備は地域産木材の利用拡大が基本である。木は二酸化炭素を吸収して成長する再生可能な資源であり,心身を癒す古くて新しい素材である。かつて地域産木材を使う在来軸組工法が,後継難やプレハブ・2×4工法に押されて存亡の危機に陥った。そこでシンプル,ストロング,スピーディーをコンセプトに接合金物工法を日本で最初に開発し,軸組工法の復活と大規模木造建築への道を開いた。さらに木を現わした耐火技術を開発し,鉄骨・鉄筋コンクリート造の巨大市場に進出した。木造都市実現のため,先端木造技術(KES®構法)を提供しながら,全国の森林・製材業者,設計・施工業者などと連携し,地域産木材の飛躍的な利用拡大を図る。
(キーワード:接合金物工法,KES,木造耐火,地域産木材,木造都市,林業の6次産業化)
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新規農薬製剤「プルート®MC」の開発と普及
住友化学株式会社    黒田 幸生・津田 尚己・齊藤 修省・中村 知史・諫山 真二
 茶の難防除害虫クワシロカイガラムシに高い効果を示す新規農薬製剤「プルート®MC」を開発・普及した。本剤の有効成分ピリプロキシフェンは,蚕に対して強い影響を示すため,茶での実用化に当たっては蚕毒事故リスクの低減化が必須であった。筆者らは,① 使用時期,② 製剤設計,③ 販売・普及体制について検討し,蚕毒事故リスクの低減化に成功した。本剤は省力的かつ高性能であることに加え,人畜に対する安全性が高いことが茶の生産現場で高く評価されており,生産者のみならず一般消費者の要望にも応える革新的な技術として急速に定着しつつある。
(キーワード:ピリプロキシフェン,マイクロカプセル,クワシロカイガラムシ,省力化,IPM)
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シュッコンカスミソウの日本国内育成品種「アルタイル」の育成および普及
株式会社ミヨシ 八ヶ岳研究開発センター    谷 一道・羽田野 昌二
 花持ち性能を最大の育種目標として育成した「アルタイル」は,花持ち性能の高さに加え,従来のシュッコンカスミソウ(以下,カスミソウ)とは明確に特性が異なる点が多かった。その結果,カスミソウのマイナスイメージを払拭し,生花店に品種名で普及するまでに至った。その普及過程において実施した,① 切り花の安定供給,② 市場や消費者の需要の掘り起こし,を目的とした活動は,種苗販売以降の商品の流れを視野に入れた品種定着活動であり,花き種苗業界としては画期的な活動であった。そして,海外育成品種が主流であった国内市場において,国内育成品種「アルタイル」がシェア第1位を達成したことは,カスミソウ業界にとって意義が深い。
(キーワード:カスミソウ,花持ち,国内育成品種,普及活動)
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ブームスプレーヤ用ドリフト低減型ノズルの開発と普及
ヤマホ工業株式会社    東 恵一
 2003年(平成15年)に食品衛生法と農薬取締法が改正され,全国の生産現場で農薬散布におけるドリフト(農薬飛散)に対する関心が高まり,対策が求められていた。農業機械等緊急開発事業で国産のブームスプレーヤや乗用管理機に装着するドリフト低減型ノズルの開発を行い,慣行ノズルよりも大幅にドリフトを低減しながら,慣行と同等の防除効果および作業能率を有するノズルを開発した。2006年5月より残留農薬基準のポジティブリスト制度が施行され,開発されたブームスプレーヤ用ドリフト低減型ノズルの普及などにより安全に散布され,近接作物への安全性とともに作業者の被曝や周辺住民,住宅地などへの飛散も抑えられることから普及が進んでいる。
(キーワード:ブームスプレーヤ,ドリフト低減,ノズル,薬剤散布,飛散,防除効果)
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独自の豚人工授精技術と育種理論で日本人の味覚に合う原種豚の改良と供給
農事組合法人 富士農場サービス    桑原 康
 豚人工授精用精液の広域流通を可能にするため,3~20℃の広域温度保存と2週間の長期保存が可能な,保存性の高い豚精液希釈保存剤MULBERRYⅢの開発と,精液宅配のビジネスモデルを構築した。また,育種改良のため,世界トップレベルの種豚を集約し,分析と改良を行った。精液宅配システムと育種改良を両輪として,高能力の種豚を全国に供給することが可能となり,北海道~沖縄までの銘柄豚の約半数の育種資源の元となった。これらの種豚資源を活用することで,格付協会の評価において常に上位にあり,発育,強健,繁殖,肉質のすべての面で国産豚肉の優位性を実現した。また,凍結精液による育種資源確保に努めている。
(キーワード:豚人工授精,豚育種,豚精液希釈保存剤,豚精液宅配,国産豚肉)
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バラの新品種育成とヒートポンプを用いた交配種子の腐敗防止技術の開発
今井ナーセリー    今井 清
 市販されているバラの多くは花形が剣弁高芯で,香りもほとんどなかったことから,多様化を図るため,それらとは異なる花形を持つ品種や芳香性品種の育成に取り組んだ。また,交配育種の過程で,種子が病害により生育途中に腐敗・枯死したため,病害防除法の開発が必要となった。交配育種を開始して以降,現在は24品種の登録を維持し,5品種を登録申請中である。多くの育成品種が抱え咲きやクオーター咲きなどの花形を呈し,香りの強い品種群は市場で強香シリーズとして取引されている。病害による種子の腐敗・枯死は,ヒートポンプを活用した湿度制御技術によって,薬剤散布なしでも抑制でき,育種効率が向上した。
(キーワード:バラ新品種,花形,芳香,交配育種,種子腐敗防止技術)
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ハウス用加温機の放熱効率を向上する省エネ製品の開発
株式会社第一総合企画    樋渡 宗徳
 近年の原油価格の著しい高騰によって,A重油などを燃焼させる加温機を利用して施設園芸栽培を行っている農家の経営が圧迫されている。そこで,加温機に使用される燃料の消費量を削減できれば農家経営の維持・安定につながると考え,加温機用の熱交換効率を向上させるための省エネ製品である放熱フィンの研究開発に取り組んだ。自作の風洞実験装置による実験と工業分野で注目されている熱流体解析技術を活用し,最適なフィンの形状と材質を決定することで放熱フィンを製品化することができた。
(キーワード:ハウス加温機,放熱フィン,熱交換効率,施設園芸)
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食肉脂質測定装置の開発と普及
株式会社相馬光学    大倉 力・朴 善姫・浦 明子・浦 信夫
 食肉の脂質の脂肪酸組成値は品質を左右する重要な要素である。食肉脂質の脂肪酸組成値はガスクロマトグラフィーによって測定されるが,熟練と時間(数時間)を要するため,流通する食肉の測定は不可能であった。近赤外分光による測定では非破壊,短時間(数秒)測定が可能であり,食肉流通に貢献できるだけでなく,畜産現場での高品質化にも寄与できる。筆者らは,枝肉脂質の脂肪酸組成値を測定する小型携帯近赤外分光装置を開発した。測定は5秒程度で,市場へ出荷される枝肉全数の測定も可能となる。食肉の正確な評価,安全安心を確立し,流通側,消費者双方に利するものである。本装置の開発手法,実用例について説明する。
(キーワード:近赤外分光,脂肪酸組成値,検量線,食肉脂質,オレイン酸,牛肉,豚肉)
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腸管出血性大腸菌O157、O26、O111およびベロ毒素の簡易迅速検査キットの開発
日本ハム株式会社中央研究所    米北 太郎・寺尾 義孝・北條 江里・森下 直樹・松本 貴之
 O157を始めとする腸管出血性大腸菌は大規模食中毒を引き起こし,症状も重症化しやすいことから,食品衛生上非常に重要視されている。腸管出血性大腸菌の検査は一般的に培養法(公定法)によって行われている。しかし,この公定法は,検査に時間がかかることや操作が煩雑であることなどのために,食品製造現場における日常的な検査には不向きであった。そこで筆者らは誰でも簡便かつ迅速に検査できるキット「NHイムノクロマトシリーズ」を開発した。本キットの開発により,腸管出血性大腸菌O157,O26,O111およびベロ毒素(VT1,VT2)の検査が簡便に実施でき,検査開始の翌日に結果の判定が可能になった。
(キーワード:腸管出血性大腸菌,ベロ毒素,イムノクロマト,食品検査)
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