Vol.35 No.6 【特 集】 果実の輸出促進を支える新技術 |
果実輸出の現状とその施策について |
農林水産省 生産局園芸作物課 大橋 勇太 |
わが国の果実産業の発展のためには,アジアをはじめとする世界の経済成長を取り込むべく,輸出の拡大に取り組むことが必須である。2011年は原発事故の影響で前年比92%に落ち込んでおり,政
府では輸出回復のために様々な取り組みを実施している。また本稿では,輸出先国での植物検疫や残留農薬基準への対応,日本産果実の普及など政府の果実輸出促進施策および新しい農林水産物・食品の
輸出戦略を紹介する。 (キーワード:果実輸出農林水産物・食品の輸出植物検疫残留農薬輸出戦略) |
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海外の果実市場と日本産果実の販売状況 |
岩手大学 農学部 佐藤 和憲 |
リンゴは主要な輸出農産物となっているが,その主な輸出先は台湾に集中している。台湾において日本産リンゴは高級な贈答向け商品に位置づけられてきたが,最近は家庭向けも増えており大衆化しつつある。また台湾の消費者には伝統小売市場や専門店の利用が根強いこと,多頻度購買,リンゴの周年的な購入,酸味を嫌う傾向が強いことなどの特徴がある。今後は現地消費者のニーズ変化に即して製品(商品)開発・改良を進めるとともに,これに応じたマーケティングの再編が求められている。 (キーワード:輸出,果実,台湾,リンゴ,流通) |
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青森県におけるリンゴ輸出促進販売戦略と課題 |
元 青森県農林水産部りんご果樹課 深澤 守 |
青森リンゴの輸出は100年を超える歴史を持つが,近年は2002年の台湾WTO
加盟を契機に飛躍的に増加している。海外に大きな市場を持つことによって,国内の相場形成にも好影響を与えているが,輸出促進に当たっては検疫問題や風評対策など多くの課題を抱えている。青森リンゴ
の輸出の経緯,輸出促進戦略,課題とその対応について紹介する。 (キーワード:青森リンゴ,リンゴ輸出,輸出戦略,輸出の課題,風評対策) |
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果実輸出におけるリンゴのモモシンクイガの問題とその解決技術 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 井原 史雄 |
生鮮果実の輸出は,検疫上問題になる害虫の果実への混入を防ぐことが重要である。台湾向けリンゴではモモシンクイガの混入を防ぐ必要があり,リンゴ生産においてモモシンクイガは最も重要な害虫
であることから,生産,選果,流通の過程ごとに被害果の混入を防ぐよう取り組まれているが,さらに時間やコストを抑え,害虫の混入リスクをできるだけゼロに近づける技術開発が必要である。そこで,リンゴの
モモシンクイガについて栽培過程,選果過程,貯蔵過程における技術開発について紹介する。 (キーワード:植物検疫,モモシンクイガ,非破壊検出,リンゴ,台湾) |
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輸出促進のための青果物表面殺菌と高湿度保持技術 |
九州大学大学院 農学研究院 内野 敏剛・田中 史彦・濱中 大介 |
輸出を促進するためには船舶による大量輸送を行い,輸送コストを低減する必要がある。一方で船舶は航空機に比べ輸送時間が長くなるため,鮮度劣化に対する対策が必要となる。このため,荷積み
前の青果物への赤外線・紫外線による表面殺菌とナノミストを用いた輸送中のコンテナ内の高湿度維持による青果物品質の保持技術を開発した。この表面殺菌法は一部の青果物で非常に高い微生物の抑制
効果を示した。また,高湿度貯蔵庫での試験では,超音波ミストに比べナノミストに暴露した青果物の減量率が小さくなることを見出した。 (キーワード:赤外線,紫外線,表面殺菌,超微細ミスト,高湿度貯蔵) |
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オウトウ輸出過程で果実が受ける衝撃解析と新たな包装容器の開発 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所 石川 豊 |
山形から台湾までオウトウの輸出を行い,輸送中の振動・衝撃を計測した。飛行機輸送中の振動は高周波数成分が多く,ピーク周波数は約80Hz
であった。輸送中最も多くの衝撃を受けたのは飛行機への荷の積み込み時,飛行機からの荷の積み降ろし時であった。さらに,輸出ということで果実傷害の回避を目的とした特段の措置がとられることが少ない現
状において,包装形態や包装内の位置の違いにより果実が受ける衝撃加速度の違い,さらに緩衝材の効果などについて検討するとともに,新たな緩衝包装容器を開発したので紹介する。 (キーワード: オウトウ果実,輸出,衝撃,緩衝材,包装) |
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輸出に対応した果実の鮮度保持技術 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 中村 ゆり |
国産果実の主な輸出先である東アジアは,外気温が高いにもかかわらず,低温で流通させるためのインフラが整備されていない場合が多い。また,日本産の果実は完熟に近い状態で収穫されることから
,海外産に比べて日持ちが悪い。そのため,輸出に対応した果実の鮮度保持技術が求められている。2010年11月に農薬登録された鮮度保持剤1―メチルシクロプロペン(1―MCP)は,強力なエチレンの作用
阻害剤で,リンゴやニホンナシなどの果実に対して高い鮮度保持効果を発揮する。常温下においても効果が高く,無処理に比べて2倍程度は長く鮮度が保持されることから,輸出での利用が期待されている。 (キーワード:エチレン,日持ち,果実品質,1―MCP,輸出) |
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