Vol.35 No.9 【特 集】 ほ場整備技術の最新動向 |
圃場整備事業の意義と展開方向について | ||||
農林水産省農村振興局 瀧川 拓哉・藤澤 知美 | ||||
ほ場整備事業は,水田を大区画化・汎用化し,ほ場区画・農業機械・経営規模を拡大させることで,土地利用型農業の生産費の縮減と生産額の増大,すなわち農業所得を増大させるものである。厳しい財政状況下で水田農業の構造改革を推進するには,引き続き,最大限のコスト縮減と効果発現を図りつつ,ほ場整備を着実に実施するとともに,狭小・分散した水田や過去に整備された水田についても,畦畔除去や暗渠などをきめ細かく整備し,中心経営体への集積を加速する必要がある。 (キーワード:ほ場整備,水田農業,農地集積,大区画化,地域の中心となる経営体) |
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ほ場面の均平化技術および傾斜化による排水促進技術 | ||||
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ほ場面の均平精度は営農において,とりわけ大規模土地利用型農業の省力的水稲栽培などにおいて非常に重要な要因となる。そこで,高い精度で整地均平が可能となるレーザーレベラーおよび近年開発されたGPSレベラーの概要や利用方法を解説すると共に,均平技術を応用したほ場面傾斜化による排水促進技術について説明する。ほ場面傾斜化は一定方向の傾斜によって表面排水が促進し,降雨に
よる滞水をなくして湿害を回避することができる。また,排水路のない畑地においても簡易排水路による流末処理をすることで同様の効果が確認された。 (キーワード:ほ場面均平化,傾斜地ほ場,排水促進,レーザーレベラー,GPSレベラー) |
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農地の排水機能を強化する低コスト土層・排水改良技術 | ||||
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 北川 巌 | ||||
湿潤な気候の日本において畑作物の増産を図るには,安定した農業生産性と作業適期に効率的な農作業性を確保する農地の排水改良が必要である。特に,最近の変化の激しい気象条件下では,農業
者の排水改良に対する期待も大きい。本報では,畑作物生産の減収要因である湿害に対する排水改良の効果と重要性を示す。また,すでに暗渠整備済みの農地に対して排水機能を強化する新しい土層改良
法として,農業で発生する残渣や堆肥などの資材を有効活用する「カッティングソイラ工法」や無資材型の新たな排水改良である穿孔暗渠について紹介する。さらに,利用できる資材の有無や種類に対応した
低コスト土層・排水改良技術について総合的に整理する。
(キーワード:湿害,生産性,排水改良,土層改良,低コスト) |
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意欲ある経営体による圃場の大区画化と直播技術の導入 | ||||
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター 大谷 隆二・冠 秀昭 | ||||
グレーンドリルを利用した乾田直播体系の現地実証試験における,農家自らによる圃場の大区画化と,乾田直播技術の導入の取り組み,およびその乾田直播体系の詳細について解説する。大型トラク
タと深さ30cmの深耕が可能なプラウおよびレーザーレベラを用いて,農家自ら圃場の大区画化を図り,乾田直播技術の導入を進めた。乾田直播が水稲栽培面積の6割にまで達し,乾田直播の定着を果たして
いる。グレーンドリルを用いた直播体系では,10km/時程度の高速作業が可能であり,大区画圃場の利点を最大限に活かせる。
(キーワード: 乾田直播,大区画圃場,低コスト,グレーンドリル,大規模経営) |
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客土による泥炭土水田産米の食味向上技術とその施工基準 | ||||
北海道立総合研究機構 農業研究本部 中央農業試験場 柳原 哲司 | ||||
北海道に広く分布する泥炭土水田では産米のタンパク質含有率が高く,それが食味不良の大きな要因となっている。この改善対策として客土の効果に着目し,米の食味に与える効果を解析するとともに,
良食味米生産を目的とした客土の施行基準の策定を試みた。その結果,100〜300mmまでの客土により産米のタンパク質含有率が大幅に低下し,食味官能評価値はそれに対応し上昇した。客土材の可給態ケ
イ酸と原土壌の可給態N含量から客土の要否判定,客土材の適否基準が策定され,土地改良事業工種の基準として活用されている。
(キーワード:泥炭土水田,米の食味,タンパク質含有率,客土,施工基準) |
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水田の高度利用技術を実現する地下水位制御システムFOAES | ||||
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我が国の食料自給率を向上させるには,水田における麦・大豆・野菜類などの栽培が不可欠であるが,転作が困難な地域が多い。そこで,従来は排水にしか用いられて来なかった暗渠に地下かんがい機能と地下水位調節機能を付加することで,湿害と干ばつ害の両方に対応したシステムを開発した。これまでの栽培試験では,転作田における麦,大豆の増収効果が確認され,水稲栽培では水管理の適正化と省力化が図れる。また,コストは従来の暗渠排水と同等であり,水田施設機能が低下した地区の再整備にも適した技術である。 (キーワード:地下水制御システム,水田汎用化,安定多収,節水技術,適期適作) |
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地下水制御システムFOAESが導く水田農業の近未来 | ||||
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 福与 徳文 | ||||
水田農業の近未来の担い手の一つとして期待される法人経営にとって,その持続的発展のためには常勤職員の雇用の維持が極めて重要な条件となる。従業員の雇用を維持するためには,1年中仕事が
あり売上があること,つまり1年中収穫・出荷する作物があることが必要となる。このためには水田に1年中様々な作物を作付けることができる基盤条件が不可欠であり,地下水位を自由にコントロールできるF
OEASは,水田農業の近未来を実現させるためにまさに求められていた技術なのである。
(キーワード: FOEAS,地下水位制御,水田農業の近未来,水田汎用化,法人経営) |
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