Vol.35 No.10
【特 集】 魚介類の給餌養殖技術の最新動向


魚粉配合率と低減した養殖用配合飼料の実用化と課題
(独)水産総合研究センター 増養殖研究所    山本 剛史
 わが国における養殖用配合飼料の主原料である輸入魚粉は,世界的な給餌養殖の発展により,近年,たびたび供給が逼迫し,そのたびに価格が高騰している。このため,飼料メーカーは配合飼料を値上げせざるを得ない状況にある一方で,魚類養殖経営における飼餌料にかかる経費は6〜7割を占め,魚価が低迷している現状では飼料の値上げは養殖生産者にとって死活問題となっている。このため,魚粉の配合率を削減し,より安価な大豆油粕やコーングルテンミールなどの配合率を増やすことにより,価格を抑えた飼料が一部で流通する状況となっている。本稿では,魚粉の配合率を削減した飼料の開発の現状と問題点を紹介するとともに,将来的な魚粉などの飼料原料の需給を見据えた今後の対策と研究開発の方向性について提案する。
(キーワード:養殖用配合飼料,魚粉,魚油,抗病性,肉質)
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クロマグロ完全養殖達成と量産技術の現況
近畿大学    宮下 盛
 1970年に始まった本研究は,クロマグロが広域回遊魚であるという特性ゆえに困難を極めたが,1974年までに野生幼魚からの養殖技術を開発し,1979年に世界初の自然産卵に成功,仔稚魚の飼育にも成功し,1994年に初めて稚魚を海面生簀に沖出しした。さらに,稚魚期以降の衝突多発原因の究明と対策により,1995年に初めて実用種苗の生産に成功し,2002年に世界初の完全養殖を達成した。1996年度に0.03%であったふ化後約90日齢までの生残率は,現在,1%前後までに向上し,2011年には全長約30cmの種苗約7万尾を生産できた。
(キーワード:クロマグロ,種苗生産,完全養殖,三大減耗期,量産技術)
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シラスウナギの量産技術開発の現状と課題
(独)水産総合研究センター 増養殖研究所    増田 賢嗣
 ウナギは単独で料理店が成立する,わが国の魚料理においては特異的な地位を占める魚種である。現在は養殖業が盛んであり,需要がほぼ養殖魚で賄われているが,養殖種苗となる天然資源の減少が著しく,その涸渇が心配されている。ウナギ仔魚はこれまでの種苗生産対象種と異なった点が多く,飼育技術の開発も困難の連続であった。しかしながら,2002年にシラスウナギまでの飼育に成功したのを皮切りに飼育技術の改良が進み,完全養殖も達成され,現在は稚魚の大量生産技術の確立を目指している。
(キーワード:ウナギ,仔魚,飼育技術,飼料,シラスウナギ)
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安全・安心な国産のカンパチ養殖種苗の生産技術の開発
(独)水産総合研究センター 西海区水産研究所    虫明 敬一
 2005年に輸入された養殖用カンパチ種苗から,アニサキスという寄生虫が多数発見された。これに伴い,養殖用原魚として安全性の高い国産のカンパチ養殖種苗の安定的生産および低コスト養殖技術に関する研究が実施された。その結果,養成した親魚の産卵時期を早める技術の開発により,海外産の大型種苗と比較しても成長などに遜色のない国産養殖種苗を確保できる技術が開発された。また,この種苗を実際に養殖した場合のコストを試算したところ,養殖期間が短縮されることにより,海外産種苗を用いた養殖コストよりも経費節減が可能になることが判明した。
(キーワード:カンパチ,早期採卵,早期種苗,付加価値)
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愛媛県におけるクエ養殖の現状と課題
愛媛県農林水産研究所水産研究センター    山下 浩史
 クエは,流通単価が高く,また,近年種苗生産技術の向上に伴い種苗の導入が容易になったことから,養殖生産量が増えている。本種養殖の問題点としては,ブリやマダイと比較し成長が遅く,養殖期間が3年以上必要なことや,ウイルス性神経壊死症の発生により歩留まりが低いことなどが挙げられる。愛媛県ではこれらの問題に対応するため,"成長が良く,病気に強い"形質を持つ養殖用クエ家系の作出に取り組んだのでその概要を紹介する。
(キーワード:クエ,ウイルス性神経壊死症,VNN,DNA親子鑑定,遡及的親魚選抜)
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バナメイエビの陸上養殖技術の最新動向
株式会社アイ・エム・ティー    野原 節雄
 日本へ毎年25万t以上輸入されているエビは,東南アジア諸国で深刻な環境問題(餌の食べ残しや排泄物による海洋汚染など)を引き起こすことがあるため,環境への影響を最小化し,安全な持続可能な養殖エビを生産できる実用レベルの技術開発を進めてきた。新潟県内で取り組んできたエビ(バナメイ)の陸上養殖システム開発の経緯と課題,各国でのエビ陸上養殖の開発の現状を紹介する。
(キーワード:バナメイエビ,陸上養殖,閉鎖循環,ミネラルバランス)
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