Vol.35 No.12 【特 集】 果実と健康に関する研究の最前線 |
カンキツにおける機能性成分の高含有品種開発と加工副産物の利用技術 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 小川 一紀 |
カンキツに特徴的に含まれる特有の成分の例として,ノビレチン,オーラプテン,β―クリプトキサンチンがあげられる。これらには,多様な機能性があることが明らかとなっている。しかしカンキツの中
でも,その分布や含有部位や含有量が異なっている。機能性成分蓄積の付与や高含有化など,健康増進に有用な品種を開発することは重要であることから,ノビレチンやオーラプテンの高含有品種開発を行っ
た。機能性を研究するには,精製された成分を必要とする。しかし,市販β―クリプトキサンチンは高額で機能性研究が困難であった。そこで,ウンシュウミカン加工副産物から簡便にβ―クリプトキサンチンを
製造する方法を開発した。
(キーワード:カンキツ,品種開発,ノビレチン,オーラプテン,β―クリプトキサンチン) |
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ウンシュウミカンに含まれるβ-クリプトキサンチンと生活習慣病リスクとの関係 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 杉浦 実 |
β―クリプトキサンチンは日本のウンシュウミカン(以下,ミカン)に特徴的に多く含まれているカロテノイド色素の一種である。われわれはこれまでの研究から,ミカンを食べる習慣を有する日本人の
血中β―クリプトキサンチン値は欧米人と比べて顕著に高いことを見出した。現在,国内主要ミカン産地である静岡県三ヶ日町の住民を対象にした栄養疫学調査(三ヶ日町研究)を継続的に行っているが,これ
までに血中β―クリプトキサンチンレベルと動脈硬化や肝疾患,メタボリックシンドロームなどの様々な生活習慣病リスクに有意な負の関連があることを見出した。本稿では,β―クリプトキサンチンに関する最
近の疫学研究の知見について紹介する。
(キーワード:ウンシュウミカン,β―クリプトキサンチン,カロテノイド,生活習慣病,疫学) |
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ウメの健康機能性の解明とポリフェノールへのアプローチ |
近畿大学 生物理工学部 尾崎 嘉彦 |
ウメは伝統的に健康を志向する食品として取り扱われてきているが,個々の成分についての機能性研究の歴史はそれほど古くない。本稿では,最近活発に検討が行われているウメの機能性研究の動向
と筆者らのグループで解析を進めているポリフェノールに着目した成分的なウメの特徴について紹介する。
(キーワード:ウメ,健康機能性,ポリフェノール) |
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カキ果実飲料の安全性およびカキの健康機能性 |
島根大学 生物資源科学部 板村 裕之 |
カキの安全性について,サプリメントを一例として,急性毒性,アレルゲン・エンドトキシン・ヒスタミン検査,食品微生物・残留農薬検査について述べた。そのうえで,一般的なカキの効用として,抗菌・消臭
・抗ウイルス作用,ガン細胞活性抑制効果,加工品に対する添加効果(香味・品質改良効果)を説明した。さらに,カキの悪酔い防止効果は,カキに特異的に含まれるタンニンが,消化管のなかで皮膜を形成す
るなどで気体状のアルコールを吸着し,血中アルコール濃度の上昇を妨げることにより発揮されている。
(キーワード:カキ果実,安全性評価,機能性,抗菌・抗ウイルス作用,悪酔い防止効果) |
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食の三大機能から考えるトマトの価値について |
カゴメ株式会社 総合研究所 稲熊 隆博 |
トマトは別名"Love
Apple"と呼ばれる。"Love"が用いられる背景は,生食・加工合わせて生産量が約1億5千万トンもあり,野菜の中で第一位によると考える(FAO,2012)。また,`Apple"とは貴重な食べ物をいう意味がある。どうし
てトマトは貴重な食べ物か,栄養面,美味しさ面,そして健康面からまとめてみる。まず,栄養面であるがトマトは成分的に栄養価が高いとはいえない。ただ,摂取量を考慮すると栄養面の価値が出てくる。すなわ
ち,食べやすい野菜である。美味しさ面ではトマトは赤色という色合いだけでなく,成分にグルタミン酸を多く含んでいる。トマト料理は肉や魚がなくてもトマトだけでも美味しい理由である。健康面を生体調節から
みるとトマトは赤色色素のカロテノイドであるリコピンを含む。リコピンは活性酸素の中の一重項酸素の消去能に優れ,肌や骨,脳など老化に対して効果が期待できる。また,トマトの水溶性成分(トマトを遠心分
離した漿液)にもクエン酸である有機酸,グルタミン酸,アスパラギン酸などのアミノ酸,カリウムやマグネシウムであるミネラルが含まれ,運動疲労の軽減にも寄与しそうである。ただ,調理によって吸収が変わ
ることから今後は調理方法も考慮して摂取すべきである。
(キーワード: リコピン グルタミン酸 ビタミンC 食物繊維) |
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リンゴの生体調節機能と健康に与える影響 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 庄司 俊彦 |
リンゴの生理機能性は,これまでミネラル(K)による高血圧予防や食物繊維による動脈硬化予防などが報告されていた。近年,リンゴに含まれる主要なポリフェノール類の一種で,カテキン類が複数個
結合した構造を持つプロシアニジン類が強い抗酸化作用だけではなく,抗アレルギー作用,脂質代謝制御作用,美白・育毛作用などの様々な生理機能性を示すことが報告され,リンゴ摂取による生活習慣病予
防や健康維持効果が期待されている。本稿では,リンゴプロシアニジン類の生理機能性に関する最近の研究について紹介する。
(キーワード:リンゴ,プロシアニジン類,生理機能性,生活習慣病予防) |
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