Vol.3 No.11 【特 集】 果実をおいしく提供する貯蔵・加工技術の最新動向 |
果実をおいしくする貯蔵・加工術の最新動向 |
農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 別所 英男 |
生鮮果実の消費は近年減少傾向にあるが,果実を食べない理由として,日持ち性,手間や価格などが上げられる。果実を長期間おいしく食べられる鮮度保持技術や食の簡便化に寄与する技術,あるいは国産果実を使った付加価値の高い加工技術の開発が求められている。これら果実をおいしく提供するための,貯蔵,加工技術の最新動向について解説する。 (キーワード:果実,消費,貯蔵,加工) |
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ミカンの風味を保つ貯蔵温度 |
農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 松本 光 |
ウンシュウミカン等のマンダリン類(皮が薄くむきやすい品種)の貯蔵温度は,従来,腐敗防止や外観保持の観点から,3〜5℃に設定されてきた。しかし,ウンシュウミカンを5℃で貯蔵すると,見た目は良好であるにもかかわらず,アミノ酸のひとつであるオルニチンが急増する異常代謝が起きて風味劣化する場合があるのに対して,10℃では異常が起きなかった。イスラエル等からも,2〜5℃ではマンダリンの風味が劣化するが,8℃では香りが保たれることが報告された。これらの研究は,マンダリンの風味を保つ貯蔵温度は従来とは異なる可能性を示唆している。今後は外観だけでなく風味も維持できる貯蔵温度を検討する必要がある。 (キーワード:ウンシュウミカン,マンダリン,貯蔵温度,アミノ酸,香り) |
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1-MCPを利用したリンゴの鮮度保持 |
農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 立木 美保 |
リンゴなどの果実は,収穫後自ら生成するエチレンによって老化が促進され果実品質が低下する。エチレンの作用を阻害する1―メチルシクロプロペン(1―MCP)は収穫後果実の鮮度保持剤としてリンゴ,ナシ,カキを対象に農薬登録されている。リンゴでは1―MCP処理による鮮度保持効果は高いが,品種や処理条件等によっては期待した効果が得られない場合がある。品種による処理効果の違いでは,処理時にエチレン生成量が多い方が効果は低い。また,収穫後日数を経てエチレンを多量に生成している果実では効果が低くなる。一方で,「つがる」のように収穫時すでに多量のエチレンを生成している果実では,処理前に果実を予冷して果実温度を下げることで処理効果は高くなる。 (キーワード:エチレン,1―MCP,リンゴ,鮮度保持) |
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収穫後のカキ果実の品質保持技術 |
岐阜県農業技術センター 鈴木 哲也 |
収穫後のカキ果実のおいしさを保持する技術の開発に取り組んだ。「太秋」のおいしさは主にサクサク感によって評価され,1―MCPを処理した後にポリエチレン包装することによって,ポリエチレン包装単独より約10〜14日長い収穫後約25日まで食感を保持することができた。なお,サクサク感は音響振動法(AMC法)による周波数帯域6,400〜25,600Hzのエネルギー食感指標で定量評価できることを明らかにした。また,「早秋」のおいしさは主に果肉硬度によって評価され,1―MCPを処理した後に防湿段ボール箱に入れることによって,防湿段ボール箱単独より約4日長い収穫後約13日まで果肉硬度を保持することができた。 (キーワード:カキ,音響振動法,食感,果肉硬度,品質保持) |
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青果物の酵素剥皮 −カンキツ、カキ、ビワの酵素剥皮工程の比較− |
農業・食品産業技術総合研究機構 野口 真己 |
酵素剥皮は刃物を使うことなく酵素の水溶液による処理で果皮を除去する加工法である。酵素剥皮が初めて適用されたのがカンキツであり,カンキツは本技術の普及の中心となる品目である。本稿では,カンキツ以外の品目への酵素剥皮の適用の拡大の取組みとして,カキとビワの酵素剥皮工程開発の過程を紹介し,さらに,その他の青果物への酵素剥皮の適用の可能性について解説する。 (キーワード:酵素剥皮,カンキツ,カキ,ビワ,ペクチン) |
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「ぽろたん」を使ったレトルト焼き甘栗 |
茨城県工業技術センター 吉浦 貴紀 |
渋皮が容易に剥ける初の和栗「ぽろたん」は生産者あるいは実需者からも期待の大きい品種であり,栽培面積および生産量は着実に増加してきている。しかしその最大の特徴である「渋皮が簡単に剥ける」性質を最大限に利用した加工製品はなかなか開発されておらず,「ぽろたん」の商業ベースでの利用普及はまだこれからである。そこで本稿では付加価値の高いお土産用加工商品として筆者が試作研究した「ぽろたん」レトルト焼き甘栗の開発事例を紹介する。 (キーワード:栗,ぽろたん,甘栗,焼き栗,レトルト,賞味期限) |
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ベリー類の長期貯蔵 −国産果実をクリスマスケーキに!− |
東京農業大学 馬場 正・盛重 裕子・齊藤 亨介 |
ベリー類は,生鮮果実の需要が期待でき,国内でも産地化の機運が高まっている。クリスマスを中心とした周年ニーズに応えるため,国産生鮮果実の長期貯蔵に取り組んだ。凍らないできるだけ低い温度帯を利用し,さらにプラスチックフィルムによる密封包装(MA包装)を組み合わせた結果,数カ月の長期貯蔵を行うことができた。たとえば夏に収穫した国産ブルーベリー果実を,クリスマスケーキにのせることも可能である。この方法はイチゴや他のベリー類にも応用でき,収穫後ロスの軽減技術としても重要である。 (キーワード:MA包装,低温,ブルーベリー,レッドカラント,ラズベリー) |
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