Vol.7 No.9 【特 集】 社会実装が進むAI農業 |
スマート農業の推進について |
農林水産省大臣官房政策課 伊藤 圭 |
農業者の高齢化や担い手不足の深刻化が進む中,ロボット,AI,IoTなどの先端技術を活用した「スマート農業」は,作業の自動化,データやセンシング技術の活用などを通じて,生産性の飛躍的向上や熟練農業者の技術継承,精密な栽培管理を実現し,我が国農業に変革をもたらすと期待されている。農業データ連携基盤「WAGRI」が本年稼働し,様々なスマート農業技術の実用化も進む中,政府としても,成長戦略や農林水産業・地域の活力創造プランなどにスマート農業の推進を掲げ,本年6月には「農業新技術の実証プログラム」を策定し,現場実装に向けた環境整備を推進することとしている。 本年度からは,全国69地区で「スマート農業実証プロジェクト」を進め,今後,事業で得られたデータをもとに,実際に農業者が新たな技術体系を経営に組み入れる上での技術面・経営面の効果などを明らかにするとともに,スマート農業を見られる・体験できる場として情報発信するなど,「データ」を活用した農業の実現に向けて取り組んでいく。 (キーワード:スマート農業,AI農業,スマート農業実証プロジェクト,農業データ連携基盤,WAGRI) |
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農研機構が目指す農業情報研究とその重点課題 |
農業・食品産業技術総合研究機構 寺島 一男・本島 邦明 |
農研機構は,政府が掲げる超スマート社会「Society5.0」の農業・食品分野での実現に向け,農業情報研究センターを2018年10月に開設した。同センター設立の目的は,①最新のAI技術,農業データ連携基盤として整備されつつあるビッグデータを活用し,農研機構独自の知見に立脚した,徹底的なアプリケーション指向の農業AI研究を推進する,②農業データ連携基盤の長期安定運用を目指した研究ならびに運営体制を構築
する,③農業が抱える様々な課題解決のため,AI技術を中心としたICT人材を育成する,の3つである。本稿では,上記の3つの目的を達成するための組織とその運営方針を述べるとともに,農業AIの重点研究課題,農業データ連携基盤の運営状況についても述べる。 (キーワード:Society5.0,農業情報,AI技術,データ連携,WAGRI) |
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革新的リモートセンシング技術による水稲の生育診断 |
ファームアイ株式会社 山村 知之 |
旧来,日本の作物,特に水稲の生育調査は「目視」「葉色板」から始まり,「葉緑素計」や「人工衛星画像」で計測・評価されてきた。しかし昨今では農業従事者の大幅な減少かつ温暖化による激しい気象変動により,作物の生育診断手法も省力化かつ高効率化が急務となってきている。弊社が実用化している技術により当課題の解消だけでなく,農作業の軽労化,作物の品質・収量の向上,伴う生産者の所得向上へ貢献できることが,実証を積み上げ顕在化してきている。単なる技術紹介ではなく,課題解決,実用性とわれわれが目指す将来像を紹介する。 (キーワード:太陽光補正技術,可変施肥,ピンポイント土壌診断,適材適所資材散布) |
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NTTグループのAI技術の農業・畜産分野への活用 |
日本電信電話株式会社 久住 嘉和 |
現在,日本の農業をはじめとする農林水産業は,就業人口の減少や高齢化,農地の減少や気候変動への対応など様々な課題を抱えている。一方,地球規模では将来の人口爆発による食糧危機に直面するといわれており,ICTは国内外の課題の解決に貢献できると注目されている。NTTグループはこれまで通信事業で培ってきたICTを活用した農業などへの取り組みを行っている。本稿では,特に農業,畜産分野へのAIを活用した具体的な取り組みについて紹介する。 (キーワード:ICT,AI,農業,畜産,データ) |
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クラウド制御型養液土耕自動化システム「ゼロアグリ」の開発と進化 |
株式会社ルートレック・ネットワークス 喜多 英司 |
「ゼロアグリ」は,養液土耕栽培において培養液供給量を自動的に制御する養液土耕自動化支援システムである。すべてのデータと履歴はクラウド上に蓄積され,参照や共有が可能である。また制御ロジックをクラウド上にもつことにより,システムに加えられた改良はすべての利用者が即座に活用することが可能となる。本システムの導入効果は省力化,収量増,リスクの低減であり,農業経営体の規模拡大や収益増にも寄与すると考えられる。 (キーワード:施設園芸,養液土耕,潅水,ICT,AI) |
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画像解析による野菜等の「おいしさの見える化」技術の構築 |
マクタアメニティ株式会社 幕田 武広 |
近年,普及が著しいモバイル端末(スマートフォン・タブレットPCなど)の撮影画像から,被写体農産物の食味などを推定する技術の開発を行った。画像はクラウドに構築された,人工知能(AI)に送信され,当該画像の補正などを経てRGBの平均値と標準偏差をもとに解析し,結果を端末などに表示する。本技術の特徴は,近赤外線計測やハイパースペクトルカメラなどの機材を使用することなく,市販のスマートフォンカメラなどでの計測が可能で,結果はほほ瞬時に返信され,一連の作業は専用のアプリケーションソフト(以下,アプリ)により,専門的な知識を要せずとも簡便に行える。生産から販売,需要に至るサプライ・チェーン全般で使用でき,農業生産者・出荷者,中間流通,小売事業者などでの利用がすでに始まっている。 (キーワード:画像解析,スマートフォン,人工知能(AI),食味判定,見える化アプリ) |
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食・農分野におけるデータ活用を支援するICTプラットフォームの開発 |
富士通株式会社 若林 毅 |
富士通の農業ICTサービス「食・農クラウドAkisai」は,生産現場におけるICT活用を起点に流通や地域・消費者をバリューチェーンで結び,豊かな食の未来に貢献することをコンセプトにしている。露地栽培や施設園芸,植物工場,畜産という農業全体をカバーしており,生産から経営・加工販売まで,データ活用による企業的農業経営をトータルに支援している。AI(人工知能)やIoT(Internet of Things)といった先進テクノロジーを積極的に採用しており,また,富士通グループ自身でも農事業を展開しテクノロジー活用を実践している。 本稿では,農業現場におけるデータ活用について,いくつかの事例と自社実践への取り組みを含めて紹介する。 (キーワード:ICT,ビッグデータ,AI,IoT,スマート農業) |
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大規模水田経営におけるIoTスマート農業適応可能性 −生産者の人的管理能力拡大と経営組織の学習支援型スマート農業の考察− |
株式会社イーラボ・エクスペリエンス 島村 博 |
昨今の情報通信基盤の高度化と技術の進歩において,省力化技術と自動化,生育状態の可視化,病害虫・雑草リスク対策,経営分析などのシステムは,スマート農業加速化実証などの政策支援と併せて先端的な産地およびJA,大規模経営体に導入されてきており徐々に普及への機運が高まりを見せている。ここでは,篤農家などの現場ヒアリングニーズにより明らかになった,植物観察と臨機営農に応えるための科学分析的な意志決定支援システムとしてのスマート農業市場化可能性を考察することにする。 (キーワード:スマート農業,フィールドサーバ,IoT,植物対話性,意志決定支援,農業気象,拡張知能AI) |
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