Vol.8 No.6 【特 集】 食品ロスの削減に寄与する技術 |
食品ロス削減に寄与する生産・流通・貯蔵技術 |
農研機構 食品研究部門 石川 豊 |
農業・食品産業分野におけるフードチェーン全体でロスを減らすための技術開発が行われている。たとえば,育種においては,大豆品種に莢がはじけにくい性質(難裂莢性 (キーワード:難裂莢性,イチゴ,輸送,損傷,容器,2温度帯コンテナ) |
←Vol.8インデックスページに戻る
|
容器包装の技術開発と食品ロス削減 |
田中技術士事務所 田中 好雄 |
FAO(国際連合食料農業機関)の調査によると,世界の食料全生産量の1/3にあたる約13億tが毎年廃棄されていると言われている。この課題に対処するための手段として包装・流通の役割が大きな意味を持つ。本稿では長い歴史に培われた容器包装の役割とその変遷について述べる。 (キーワード:フードサプライチェーン,食品ロス,1/3ルール,包装の役割,容器包装の変遷) |
←Vol.8インデックスページに戻る
|
MAPによる賞味期限延長と食品廃棄ロス削減効果 |
大陽日酸株式会社 産業ガス事業本部 澁谷 尚男 |
MAPとは,Modified Atmosphere Packagingの略で,いわゆるガス置換包装のことをいう。具体的には,食品包装の包装雰囲気を,窒素ガスや炭酸ガスに置換することで,食品の酸化防止や賞味期限延長が可能となる。本報告では,MAPの具体的手法,採用例を紹介するとともに,実際に行った事例を通じて,食品廃棄ロスを約37%低減できたことを報告する。 (キーワード:MAP,ガス包装,賞味期限,食品廃棄,SDGs) |
←Vol.8インデックスページに戻る
|
鮮度保持フィルムを活用した青果物の流通改革−北海道産ブロッコリーのアイスボックス輸送代替検討− |
三井化学(株)フード&パッケージング事業本部 吉田 存方 三井化学東セロ(株)新製品開発室 成田 淳一 |
輸送に関わる労働負荷が大きく海洋プラスチックゴミの点でも問題が指摘されるブロッコリーのアイスボックス輸送を,鮮度保持フィルムと段ボールの組み合わせで代替することを検討している。鮮度保持フィルムとして袋内の清浄維持効果を有するパルフレッシュTMを用い,段ボール内袋としてブロッコリーを包装し,トラックでの輸送試験を行った結果,アイスボックスと同等の鮮度・品質を維持したまま輸送が可能であることが示された。実際の輸送では,ブロッコリーの予冷,袋の密閉処理といった生産者側での作業負担や物流におけるコールドチェーンの確保といった課題を解決する必要がある。これらと併せ,JR貨物による貨物鉄道輸送での実証を進めるため,予備的な検討を行った。 (キーワード:ブロッコリー,アイスボックス輸送,鮮度保持フィルム,貨物鉄道輸送) |
←Vol.8インデックスページに戻る
|
エコフィールドの現状と課題 |
宮崎大学 川島 知之 |
食品ロス削減に向けて,エコフィードは発生現場でのロス削減のような取組と,堆肥化やバイオガス生産のような資源化の取り組みの間を埋める技術として有用である。ヨーロッパでは,肉を含むエコフィードの利用が禁止されており,それを見直すべきとの声も上がっている。一方,国内ではCSF(豚熱)やASF(アフリカ豚熱)等,衛生面のリスクへの対応のため,エコフィードの加熱基準見直しを盛り込んだ飼養衛生管理基準の改正省令が2020年3月公布された。エコフィードの製造量は飼料用穀類の国際価格や感染症の発生状況等,様々な要因の影響を受けている。その現状と課題を紹介する。 (キーワード:エコフィード,食品残さ,飼料,家畜,畜産) |
←Vol.8インデックスページに戻る
|
食品リサイクル堆肥の品質向上と利用促進について |
一般財団法人日本土壌協会 日高 伸 |
20年目を迎える食品リサイクル法のこれまでの流れを概観することで,食品廃棄物の再生利用の全体像と新たな目標を理解することができる。食品廃棄物は末端ほど混合廃棄物の度合いを増し,再生利用を拒んできた。近年は食品関連事業者間にループが形成され,安全で良質な食品リサイクル堆肥の生産と利用が進んでいるように思われる。ここでは品質の良い食品リサイクル堆肥の製造と品質上備えるべきいくつかの条件をこれまでの調査報告・研究事例を交えて解説する。末尾に畜産系を含め多様な堆肥が流通している今日,食品リサイクル堆肥のもついくつかの優位性について述べる。 (キーワード:食品リサイクル堆肥,品質向上,農業利用,肥料) |
←Vol.8インデックスページに戻る
|
食品廃棄物の地域循環システム構築を目指した取り組み |
大正大学 岡山 朋子 |
持続可能な開発目標(SDGs)の達成のため,我が国は食品廃棄物のさらなる削減と再生利用が求められている。本稿においては,まず食品廃棄物の循環利用に関わる法制度について説明する。次に食品廃棄物の地域循環システムのうち,飼料化と畜産業利用の政策事例として愛知県地域循環圏モデル事業,堆肥化と農業利用の事例として山形県長井市のレインボープランと愛知県名古屋市のおかえりやさいプロジェクト,バイオガス化と消化液の農業利用事例として福岡県大木町の取り組みを紹介する。これらの事例から,持続可能な食品廃棄物の地域循環システムの成立要件を抽出する。 (キーワード:食品廃棄物,食品リサイクル法,再生利用,地域循環システム,成立要件) |
←Vol.8インデックスページに戻る
|
気象情報を利用した食品ロス削減の取り組み |
一般財団法人日本気象協会 本間 基寛 |
天候によって食品の需要が大きく変化し,それによって食品ロスが発生している実態がある。高精度な気象予測データに基づき,AIを活用することで需要予測の精度を高めることができるようになった。これにより,季節性商品や日配品の製造事業者における食品廃棄ロスや在庫ロスの削減を実現した。また,需要予測情報をサプライチェーンで共有化することで,さらなる食品ロス削減につながる可能性があることも示すことができた。 (キーワード:気象予測,需要予測,AI,体感気温) |
←Vol.8インデックスページに戻る
|