Vol.8 No.11 【特 集】 農学分野における女性研究者の育成に向けて |
農学分野における女性研究者の活躍 | |||
日本大学 生物資源科学部 熊谷 日登美 | |||
農学分野では,100年前から,世界的にも活躍した女性研究者がいた。しかし,現状では女子学生の割合は高くなってきたものの,女性教員の割合は博士課程の女子学生比率と比べると低く,教授職では6%,学部長では4%である。農学分野における女性の活躍を推進するには,ロールモデル(具体的な行動や考え方の模範となる人物)が少ない現状では,まずは,無意識のバイアスの払拭,女性を一流の研究者に育てようという気概のある指導者,リーダーシップのある組織の長,アファーマティブ・アクション,働きやすい環境整備,国の支援等が必要である。 (キーワード:辻村みちよ,丹下ウメ,無意識のバイアス,ロールモデル,国の支援) |
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女性研究者が能力を発揮し継続して活躍するために | |||
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 水町 功子 | |||
女性研究者が持てる能力を最大限に発揮し,生き生きと働き続けるためには,育児休業制度やテレワークの活用など多様な働き方を踏まえた研究環境の整備や,意識啓発,情報提供および能力開発のためのセミナーや研修など多くの支援が必要である。また,メンター制度の活用や保育支援制度等もさらに充実させる必要がある。そして,女性研究者を含めて多様性を受け入れることにより,その個人が成長するだけでなく組織全体も成長し,イノベーションの創出につながるということを,研究機関は認識して研究環境を整えていく必要がある。 (キーワード:男女共同参画,多様性(ダイバーシティ),キャリア支援,メンター制度,在宅勤務) |
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農研機構における女性研究者支援の取り組み | |||
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 加藤 晶子 | |||
農研機構は「男女共同参画宣言」を掲げ,女性活躍推進に取り組んでおり,農研機構における研究職員の女性比率は20.4%と全国平均を上回っている。2016年度には女性活躍推進法に基づく,認定マーク「えるぼし」の三つ星(最高段階)を取得した。本報告では,農研機構における女性研究職員の活躍を推進するキャリア形成支援,育児・介護と業務の両立支援などの取り組みについて紹介する。
(キーワード:女性活躍推進,キャリア形成支援,ワークライフバランス,両立支援,ダイバーシティ) |
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東京都農林総合研究センターにおける若手研究員の育成 | |||
東京都農林総合研究センター 村上 ゆり子 | |||
東京都農林総合研究センターは地域の研究機関であり,財団法人の形をとっているが,研究員は東京都から派遣されている,研究に限定されない採用の公務員である。そのため,若手研究員の育成の中で人事異動による研究中断のリスクは常に存在している。そうした中で,若手研究員をいかに育成していくかは大きな課題であり,体制の整備を図っているところである。女性研究員については東京都の支援制度が整備されており,勤務を続けやすい環境にあると考えられ,各年代の研究員が活躍している。これらの現状について紹介する。 (キーワード:若手育成,東京都,多様性,研究員,農総研) |
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女性教員の百余年の潮流−九州大学の取り組みから− | |||
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九州大学の110年ほどの歴史の中で,女性研究者らをとりまく環境と改善について,国の方針とともに紹介する。九州大学では,全国初の学内保育園が1954年に設立され,その後,2つのキャンパスで開園,さらに国立大学法人化後には3つのキャンパスで開園した。女子学生数は時代とともに増加しているが,女性教員数は依然として低い現状がある。本学では「女性枠」教員設定により,優秀な女性研究者の採用促進
および部局長の意識改革に繋がった。また,「配偶者帯同雇用」制度を確立し,WLBの推進も併せて目指している。 (キーワード:学内保育園,女性枠教員,配偶者帯同雇用制度,WLBワークライフバランス) |
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女性研究者と女性管理職を増やすには | |||
福井工業大学環境情報学部 矢部 希見子 | |||
日本では男女共同参画の理念の下,女性研究者や指導的立場の女性研究者を増やすべく多くの施策が進められてきている。それにより女性研究者の割合は着実に増えてきているものの,未だにその割合はEU加盟国・主要国で最下位に位置している。研究職はワクワク・ドキドキ感が味わえる楽しい職業である。多くの女性が研究職について研究を楽しみ,さらに男性と同様に管理職にもなって組織の意思決定に参加してもらいたい。それによって,男女ともに活躍できるバランスの取れた社会の持続的発展が可能になると考える。長く研究者として生きてきた女性の一人として考えていることをここでは書きたい。 (キーワード:SDGs,サバティカル,女子学生,大学教育,PI(Principal investigator)) |
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若手農林水産研究者表彰受賞者からのメッセージ① ―女性研究者の活躍の場を広げるために― |
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京都大学大学院 中谷 加奈 | |||
研究活動を振り返り,一人の女性研究者として感じたことを整理した。近年,農学分野では若手や中堅の研究者が増えて,学生が研究者を目指す際に五年後や十年後までのキャリアパスは比較的想像しやすい。一方,さらに上の年代の女性研究者は少ないため,ロールモデルとなる多様な女性研究者が増えれば,研究職が一つの選択肢となりやすいのではないかと考える。ライフイベントへのサポート体制は整備されているが,現状は情報が当事者となる女性やその周辺に限定される。女性に限らず研究者を目指す可能性のある若手に対して,サポート体制や支援策,活用方法の実態を広く周知することが,分野全体で研究職を目指す人材拡大に重要ではないかと考える。 (キーワード:女性研究者,ワークライフバランス,ライフイベント,キャリアパス) |
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若手農林水産研究者表彰受賞者からのメッセージ② ―女性研究者が働きやすい職場についての考察― |
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国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 湯本 弘子 | |||
女性研究者が働く上での課題として勤務時間の制約やハラスメントがあげられる。これらの課題に関して,農研機構での研究職として勤務してきたことを振り返りながら対応策を検討した。勤務時間の制約については,スケジュール管理および裁量労働制やオンライン会議ツールといった職場で利用できるシステムの活用による時間利用の効率化,ハラスメントについては職場内での意識の共有化について提言した。 (キーワード:裁量労働制,ハラスメント,ライフステージ) |
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