Vol.9 No.7 【特 集】 若手研究者の育成に向けて |
現場解決型研究のオン・ザ・ジョブ・トレーニング効果 |
愛知県 農業水産局 武井 真理 |
関係機関と一体となって多種多様な農家のほ場で実証的に進める「現場解決型研究」では,迅速な技術開発と普及が可能となると同時に,研究員がチーム活動の中で必要な能力を体得することができる。技術開発目標を,研究員個人ではなく,チームとして達成できることが公設試験研究機関(公設試)の強みである。若手研究員には,多彩な職場経験を生かし,チームの一員として存分に結果を出すことを期待したい。 (キーワード:若手研究者育成,現場解決型研究,ジョブローテーション,チーム力,OJT) |
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これからの女性若手研究者の育成 |
農研機構 食品研究部門 日下部 裕子 |
研究者の育成は,研究者としてと組織に属する人間としての両面から行わなければならない点で独特である。将来,研究室の主宰者として日本の科学技術の進展を担ってもらうためにも,研究者として自立して研究を推進するとともに,組織の発展にも寄与するような人材を育成する必要があろう。研究者として自立する時期は,結婚・出産・育児などのライフイベントと被ってくることもある。若手女性研究者を育成中の女性研究者の立場から,育成のポイントなど雑感を述べる。 (キーワード:自立の支援,組織の一員,モチベーション,ライフイベント) |
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これからの研究者に期待すること |
農研機構 本部 飯嶋 渡 |
若手研究者の育成に向け,研究者ではない立場から現在の研究環境に影響していると思われる要因を3点挙げた。研究目標に対する認識がズレていること,論理的な説明が足りていないこと,提案に対し事前調査が不足していることであり,これらが長年改善されてこなかったことで,研究者に対する信頼の低下を招いていることが懸念される。今後も研究環境を維持していくためにも,大きく変化している世の中の情勢に適応し信頼される研究者となるよう,これからの研究者に期待したい。 (キーワード:目標設定,論理的整合性,事前調査の徹底,研究者への信頼低下) |
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県の研究機関からみた若手研究者の育成に思うこと |
富山県農林水産総合技術センター 森林研究所 斎藤 真己 |
富山県農林水産総合技術センターは県の研究機関であり,研究員の大半は一般採用試験を受けた公務員である。そのため,一般採用の若手研究員は人事異動による研究活動の中断を余儀なくされることが多々ある。そうした中で,当センター森林研究所は長期間にわたり研究活動を継続できる環境にあるため,配属後に学位を取得する研究員の頻度が高く,さらに,学会賞や奨励賞なども数多く受賞している。本稿では,これらの背景をもとに県の研究機関からみた若手研究者の育成に向けて必要なことなどについて紹介する。 (キーワード:若手育成,研究員,富山県,研究環境,異分野交流) |
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若手研究者の育成のために重要なこと |
農研機構 本部(兼 植物防疫研究部門) 世古 智一 |
本稿では著者自身の若手時代の研究活動を振り返ることで,若手研究者を育成するためには指導する側がどのような体制や姿勢で望むのが良いのかについて考察する。私の場合,学位を早く取得すること,基礎研究を大事にすること,論文を書くこと,競争的資金に応募すること,海外研究者と交流することなど,多くのことを教わった。現在は,自分が若手だったころと比べて大変な状況であるため,これからの若手研究者には厳しい環境下でも研究活動ができる実力を身につけてもらう必要があり,そのためには経験豊富な人材が指導する側にいることが求められる。 (キーワード:学位取得,論文,競争的資金,共同研究,研究環境のありかた,指導側の姿勢) |
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若手研究者にとって魅力的な研究にするために大学が目指すべきこと |
名古屋大学 農学国際教育研究センター 仲田(狩野) 麻奈 |
日本の研究力強化のためには,優秀な人材の確保と育成が必要である。少子化が進み,農学部を受験する学生が減少しており,修士課程から博士課程への進学率も減少している。こういった課題解決に向けて,大学自身もアクションを起こすべき時だと考える。博士学生の支援制度の充実やキャリアパスの確保をはじめとして,若手・女性研究者のロールモデルの提示,若手研究者のワークライフバランスの推進など力を入れて取り組んでいく必要がある。自身の経験も交えて,大学の現状を紹介しながら,国や大学に期待することをまとめた。 (キーワード:キャリアパス,研究力強化,大学,博士人材,ワークライフバランス) |
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「博士人材追跡調査第3次報告書」から −民間企業等で活躍する博士人材の可視化− |
文部科学省 大臣官房付 (併任) 科学技術・学術政策研究所 星野 利彦 |
科学技術・学術政策研究所は,2014年以来「博士人材追跡調査」として3年ごとに博士課程修了者を対象にコホート調査を行ってきた。2020年の第3次報告書によれば博士人材は,雇用先が民間企業か大学等かにかかわらず,博士課程で得たことが仕事に役立ち,博士課程での研究と関係のある仕事に就き,処遇の満足度が高く,調査のたびに正社員・正職員の割合や所得が上がっていた。特に,民間企業の博士人材は,総じて大学や公的研究機関よりも高所得であった。また,民間企業の博士人材で研究している者の研究費は半数が内部資金から500万円以上を得ており,外部資金や競争的資金の総獲得額は大学よりも高かった。ただし,民間企業の博士人材の半数以上は研究活動から離れていた。 (キーワード:コホート,雇用,所得,研究内容,満足度,研究費) |
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