Vol.9 No.8 【特 集】 社会と技術の関わりを科学する |
本特集のねらいと概要 |
JATAFF ジャーナル編集長(JATAFF 専務理事) 尾関 秀樹 |
本特集は,社会科学,人文科学,情報科学などの研究分野を中心に,社会と技術との関わりを科学的に解き明かすことによって,技術に立脚した望ましい社会を展望し,技術の社会実装に向けた道筋を示すための研究を紹介する。 また,社会と技術の橋渡しに求められるものは何かを考察し,①エビデンスは明確か,②独立した研究領域として認知される必要,③橋渡し役に求められる研究人材の育成についても述べる。 (キーワード:社会実装,社会科学,評価手法,イノベーション,スマート技術) |
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技術と社会の間のギャップを埋めるための倫理的・法的・社会的課題(ELSI)研究 |
大阪大学データビリティフロンティア機構・社会技術共創研究センター 岸本 充生 |
新規科学技術と社会の間にはギャップが存在し,社会実装のためには,安全性やセキュリティに関する課題をクリアすることに加えて,生じうる倫理的・法的・社会的課題(ELSI)に事前に対応する必要がある。ギャップを埋めるための方法やノウハウは社会技術と呼ばれ,科学技術の研究開発と並行して研究開発を進める必要がある。ELSIという用語自体は30年の歴史があるが,食品分野を含む新規科学技術全般に適用するにあたって,倫理・法・社会に分けてケースごとに検討することで,必要とされる取り組みが明確になってくる。 (キーワード:倫理的・法的・社会的課題(ELSI),社会技術,新規科学技術,ホライゾンスキャニング |
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問題解決技術の社会実装における社会科学に求められる役割 ─東日本大震災からの農業復興支援の経験から─ |
東北地域農林水産・食品ハイテク研究会 門間 敏幸 |
社会・経営のイノベーションをもたらす農業技術の開発と普及(社会実装)の場面で,開発から社会実装までを一体化した研究戦略・計画作りに有効に活用できる手法について紹介する。さらに,東日本大震災からの農業復興に取り組んだ筆者らの取り組みから,問題解決技術の社会実装における社会科学に求められる役割について考察する。 (キーワード:技術の社会実装,バランススコアカード(BSC),東日本大震災,復興技術の開発と普及,オーダーメイド型技術評価システム) |
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農研機構の農業経営研究がめざす方向 |
農研機構本部 企画戦略本部 宮武 恭一 |
農研機構の農業経営研究分野では,これまで経営実態調査等に基づき,地域ごとの農業構造の変化や農産物消費の特徴を解明したり,新たに開発した農業技術の省力化やコスト削減の効果を計測したりすることで,農業技術開発のニーズと成果を解明してきました。また,担い手への農地集積や農業雇用労働力の確保・育成などに貢献する経営管理技術の開発を行ってきました。ここでは,その成果の一部を紹介しつつ,今後,各地域において開発をめざす生産・流通システムやスマート農業に関する経営研究の取り組みについて紹介します。 (キーワード:農業経営,経営管理,スマート農業,コスト削減,ビジネスモデル) |
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スマート農業技術の評価手法の開発と経営モデルの構築 ─稲作を中心に─ |
農研機構本部 企画戦略本部 松本 浩一 |
スマート農業の社会実装を推進するために,スマート農業技術の利用による農業経営への影響を提示することが求められている。本稿では,スマート農業技術に対する経営的評価手法とそれに必要な経営モデルの構築方法を示す。その結果は,以下のとおりである。まず,農業経営全体の所得や利潤への貢献度という視点から評価する場合,スマート農業技術に対しても数理計画法が有用である。また,その手法でスマート農業技術を評価するには,それによってもたらされる経営構造の変化を経営モデルに取り込み,構成要素別の変化量を用いて構築する必要がある。 (キーワード:スマート農業技術,経営的評価,数理計画法,ロボット農機,農業生産情報管理) |
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社会科学研究へのAIの応用について ─農業経営体数予測を例に─ |
農研機構本部 企画戦略本部 兼 基盤研究本部 農業情報研究センター 寺谷 諒 |
近年,AI(人工知能)研究は,第三次ブームとともに大きな盛り上がりを見せている。第三次ブームを支えている中心的な技術は機械学習であり,特にその一手法であるディープラーニングの登場が研究に大きな影響を与えた。農業分野でもAIを用いた研究が盛んに実施されているが,農業に関する社会科学研究とAIを融合させた研究は少ない。そこでAIを地域農業動向予測に応用して,市町村や旧市町村の農業経営体数や離農に伴う供給農地面積を高精度に予測する農業経営体数予測モデルを開発した。モデルは,人・農地プランなどの地域の将来ビジョン策定の際などに活用が可能である。 (キーワード:AI,機械学習,ニューラルネットワーク,社会科学,農業経営体) |
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第11回科学技術予測調査の概要および農林水産・食品分野の 未来の科学技術の特徴 |
文部科学省科学技術・学術政策研究所 科学技術予測・政策基盤調査研究センター 伊藤 裕子 |
科学技術・学術政策研究所では,科学や技術の進展の方向性を探るために5年ごとに科学技術予測調査を実施している。2019年に実施した第11回科学技術予測調査では,近年の科学技術と社会との関係性の多様化・複雑化を踏まえ,社会側からの未来像と科学技術側からの未来像を別々に検討し,最後に両者を統合して2040年の日本社会の未来像を作成した。これらには,望ましい未来社会の姿の描写に加えて,多数の専門家へのアンケート調査結果から得られた,未来社会の実現に重要な科学技術の実現予測時期や必要な政策手段などの情報を含む。また,農林水産・食品分野の多くの科学技術は,広く未来社会の実現に貢献することが示唆された。 (キーワード:科学技術予測,科学技術と社会,ホライズン・スキャニング,デルファイ法) |
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