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Vol.10 No.2
【特 集】 スマート農業技術の現地実証と社会実装


スマート農業実証プロジェクトの概要と本特集のねらい
農研機構 企画戦略本部    栗原 光規
 スマート農業実証プロジェクトは,これまでに182課題が全国各地で展開されている。そのうち2019年から取り組まれた69課題(水田作30,畑作6,露地野菜10,花き1,施設園芸8,果樹9,茶2,畜産3)が終了したため,そのうち特徴的な9課題を選定し,その取り組み概要,導入技術の効果と課題,今後の社会実装に向けた取り組みについて紹介する。
(キーワード:スマート農業,実証プロジェクト,省力化,軽労化)
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大規模水稲作営農における自動運転農機と
データ駆動型生産の導入効果の実証
農研機構 中日本農業研究センター    吉永 悟志
 大規模・多筆圃場条件下での大幅な作業効率の向上と収量・品質の高位安定化の両立のための技術開発に向け,水稲の大規模経営体において,自動運転農機やデータ駆動型生産を活用したスマート農業技術体系の実証試験を行った。自動運転田植機の効率的運用や自動運転トラクタの有人機との同時作業により慣行条件に対して30%以上の省力化が可能であった。また,データ駆動生産として,栽培管理支援システムの発育予測や追肥診断の活用,食味・収量コンバイン等による圃場別収量データの収集・解析をもとにした作型改変により20%を超える単収向上を達成した。
(キーワード:スマート農業,自動運転,データ駆動,水稲,大規模経営体)
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中山間地域の水田農業へのスマート農業技術導入の取り組み
岡山県農林水産総合センター    小野 和彦
 中山間地域の水田農業の維持には,高齢化等による担い手不足や不利な耕作条件によるオペレーターの負担の増加が重要な課題となっている。そこでスマート農業技術の導入による省力化や軽労化,収量の向上を目標に実証を行った結果,自動水管理システムやドローン防除による大幅な省力化,自動操舵システムによる軽労化,ドローンおよび食味・収量コンバインでの生育診断による収量向上など高い効果が確認された。また,高価な農業機械の導入に際してはシェアリングが有効であることも分かった。ただし,それぞれの機器ごとに特徴も異なるため,地域の条件に適応したスマート農業技術を選定することが求められる。
(キーワード:中山間地域,水稲,集落営農,省力化,シェアリング)
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さとうきびの生育情報を利用した精密栽培管理に基づく
スマート農業体系の実証
琉球大学 農学部     渡邉 健太・川満 芳信
特定非営利活動法人亜熱帯バイオマス利用研究センター
    上野 正実
 情報の高度活用による栽培の精密管理,営農改善,技術の伝承は,スマート農業の核であるが,その重要性にもかかわらず,さとうきびでは技術開発・実装および高度展開は施設園芸などに比べると大きく遅れている。筆者らが南大東村で実施したスマート農業プロジェクトでは,「生育情報」を中心に据えて取り組んだが,その期間中は具体的な形が作れない状況であった。「さとうきび畑を植物工場に!」を目指し,その後も収集と分析を継続した結果,情報利用システムの構築にようやくめどが立った。
(キーワード:生育情報,光合成,遠隔灌漑システム,蒸発散量,生育シミュレータ)
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広島型キャベツ100ha経営におけるスマート農業化への試み
県立広島大学 生物資源科学部     三苫 好治
 ㈱vegetaの管理圃場は広島県内5市の100km圏域に分散しており,急激な経営拡大に伴うマネージャー不足が深刻化した。その解消のため,市販の経営管理ソフトであるアグリノートに作業指示の機能をもつ「AIマネージャー」を追加し経営の効率化を図るとともに,スマート農機を積極的に導入した露地キャベツ栽培の一貫体系の構築を試みた。様々な挑戦的取り組みの結果,これまで75ha規模で1,000時間(2.7時間/日)必要であった経営管理時間を,100ha規模で約730時間(2.0時間/日)に圧縮することに成功した。
(キーワード:キャベツ,露地栽培,AI,アグリノート,全自動収穫機)
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先端技術の導入による計画的安定出荷に対応した
露地小ギク大規模生産体系の実証
秋田県農業試験場    山形 敦子
 小ギクの露地栽培において,需要期安定出荷および大規模機械化生産体系の確立が求められている。そこで,①計画生産出荷管理システム,②耐候性赤色LED電球を用いた電照栽培技術,③機械化体系(自動直進機能付き畝内部分施用機,キク用半自動乗用移植機,小ギク一斉収穫機,切り花調整ロボット)を一貫体系として導入した「花き版スマート農業」について実証を行った。その結果,小ギク生産における作業時間は秋田県経営指標に対して33%削減し,需要期出荷率は96%を達成した。導入する機械類は共同購入とし生産者が利用料を支払う形態を取ることで所得率は慣行栽培時よりも向上すると考えられた。
(キーワード:花き,小ギク,開花調節,機械化,省力化)
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環境制御,作業管理システムのクラウドコンテンツ化
-施設園芸コンテンツ連携によるトマトのスマート一貫体系の構築-
農研機構 野菜花き研究部門    礒崎 真英
 2019~2020年の2年間を使い,環境,生育,作業,流通,経営等を可視化するクラウドコンテンツを商品化し,収量および労働時間当たり生産量増加やコスト削減を試みた。CO濃度および平均温度の変更やそれ以外の経営努力も含め,目標を達成することができた。総労働時間についても,2017年度作32,561時間に対し,2019年度作24,182時間と25%削減できた。この取り組みは,公開見学会,web成果報告会など2,000名以上に紹介,紹介動画公開(2本作製)アクセス回数7,800回以上となった。
(キーワード:スマート,クラウド,施設園芸,環境制御,トマト)
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IoT及びドローンを活用したブドウ栽培技術体系の実証
フルーツ山梨農業協同組合    反田 公紀
 2019(令和元)年から2年間JAフルーツ山梨が中心となりコンソーシアムを構成し,スマート農業実証プロジェクトを行った。このプロジェクトでは,ハウス内複合環境制御,ドローンによる農薬散布,リモコン式草刈機による除草など6項目に取り組んできたが,それぞれのテーマで実証の成果を上げることができた。JAフルーツ山梨では,この実証を踏まえ今回3項目について現場に普及しているものと今後可能なものについて報告する。
(キーワード:IoT,ハウス内複合環境制御,リモコン式草刈機,ドローン)
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茶の大規模経営体に導入したスマート農業技術
農研機構 果樹茶業研究部門    角川 修
テラスマイル株式会社    生駒 祐一
 我が国の茶生産者は後継者不足や茶価の低迷を背景に,経営規模の拡大を進めている。「堀口製茶スマート実証コンソーシアム」は,経営面積が最大規模の茶業経営体を実証地とし,害虫の発生を予測し自動散水するスマート散水装置,自動運転・作業が可能なロボット茶園管理機,茶園情報と茶製造に関する情報を一元管理して「見える化」する技術などを導入し,一年を通して生産現場で利用する実証研究に取り組んだ。本稿では,プロジェクトで導入したスマート農業技術の概要を紹介するとともに,その効果と導入にあたっての課題について述べた。
(キーワード:茶,スマート農業,スマート農業実証プロジェクト,ロボット,情報管理)
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北海道におけるTMRセンターと利用酪農家における
スマート技術の現地実証
東京農工大学大学院 農学研究院    青木 康浩
 TMRセンターは北海道の酪農経営において重要性を増しているが,人手不足が課題となっている。また,酪農家においては高泌乳牛を健康かつ省力的に飼養する必要性が高まっている。そこで,道東のTMRセンターと酪農家において各種スマート技術の導入効果を検証した。その結果,1)UAV利用に基づく高精度・高効率圃場管理,2)リモートセンシングと作業自動記録による高品質サイレージ収穫調製,3)IoT活用によるTMR製造・製品管理の超高度化,4)IoTによるデータ活用型省力牛群管理において,各技術の導入効果が明らかとなった。
(キーワード:TMRセンター,酪農家,UAV,IoT,画像解析)
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