Vol.10 No.3 【特 集】 第22回民間部門農林水産研究開発功績者表彰受賞者の業績 |
←Vol.10インデックスページに戻る
|
ジャガイモシストセンチュウ抵抗性加工用トマトの開発 |
カゴメ株式会社 松下 航・山岡 浩一 |
ジャガイモシストセンチュウは,ジャガイモやトマトなどナス科植物の根に寄生し,大幅な減収をもたらす外来害虫であり,日本農業,特に北海道農業の大きな脅威となっている。トマトジュースなどの原料となる加工用トマトは,近年,北海道で産地が拡大しているが,加工用トマトは露地栽培を行うため,ジャガイモシストセンチュウへの対策が急務であった。そこで,弊社ではジャガイモシストセンチュウ抵抗性を保有する加工用トマトの品種開発に着手し,2019年に「KGM191」を開発した。本品種は,ジャガイモシストセンチュウによる減収を防ぐだけでなく,栽培を通して土壌中のジャガイモシストセンチュウ密度を低減できることも分かった。本品種の普及により,北海道における持続的な加工用トマト栽培が可能である。また,ジャガイモシストセンチュウ根絶への取組みとして日本農業全体にも貢献ができると考えている。
(キーワード:加工用トマト,品種開発,育種,KGM191,ジャガイモシストセンチュウ,ジャガイモシロシストセンチュウ) |
←Vol.10インデックスページに戻る
|
造林用苗木生産の効率化に寄与する自動充実種子選別装置の開発 |
九州計測器株式会社 岩倉 宗弘 |
造林用苗木の生産効率を高める一つの方法として,発芽率の高い種子を予め選別して育苗することが期待されている。高発芽率種子を選別する方法としては,従来から比重の違いを利用した風選別や水選別が行われてきたが,選別精度や選別後の利用に制限があるなど課題もあった。これに対して,発芽に必要な種子内部の胚乳の充実度を,近赤外光を用いて推定し,より高精度に発芽率の高い種子を選別する方法が検討されていた。この選別手法を実用化するために様々な要素技術を組み込んだ装置を開発した。 (キーワード:造林用苗木,発芽率,近赤外光,充実種子,コンテナ苗生産) |
←Vol.10インデックスページに戻る
|
電動リモコン草刈り機「スマモ」の開発 |
株式会社ササキコーポレーション 甲地 重春・戸田 勉 |
日本の農業は人手不足が進み,農業人口の減少等で深刻な問題を抱えている。草刈り作業を取り巻く環境下においても,夏場の作業であり,重労働で大変な作業であることから長時間にわたる作業が困難であるといった問題がある。その問題を解決し,作業の効率的なスピード化や軽労化に貢献し,女性や高齢者の方でも楽に簡単に使用可能で,安全な草刈り作業機の機構開発に取り組み,商品化したのが「スマモ」である。2018年の商品化から普及が進み,アタッチメント作業機も複数ラインナップされ,電動式であることから,自動化を含めた作業提案の道を開いた。 (キーワード:草刈り,オール電動,リモコン作業機,モア,「スマモ」) |
←Vol.10インデックスページに戻る
|
種無しピーマン「タネなっぴー」の開発と普及 |
横浜植木株式会社 伊藤 智司 |
種無しピーマンは,無花粉化させた花が単為結果することで無核となる。そこで,世代を通して無花粉となる細胞質雄性不稔を利用し,無花粉でも着果する単為結果性,未受精でも果実が肥大できる形質などを兼ね備えたことで種無しピーマンの開発に成功し,「タネなっぴー」と命名した。種がないだけでなく,苦味が少なく肉厚な特性を持つことから市場評価は非常に高い。 (キーワード:種無し,細胞質雄性不稔,稔性回復遺伝子,単為結果性,肥大性の向上) |
←Vol.10インデックスページに戻る
|
授粉用ヒロズキンバエ「ビーフライ」の開発と実用化 |
株式会社ジャパンマゴットカンパニー 佐藤 卓也 |
農作物の受粉にはミツバチが用いられることが多いが,近年,供給が不安定化する要因が増加しており,ハチ不足が大きな問題となっている。さらに活動不良などの問題点があり,代替・補完手段の確立が求められている。そこで弊社の技術である糖尿病性壊疽等の治療法の一つであるウジ虫治療に使用する医療用無菌ウジ虫の人工飼育技術を生かし,その親であるヒロズキンバエを,ハチのように活動するハエ「ビーフライ」と名付け,ミツバチの代替として農業に応用した。ハチ類と比較して幅広い条件下で活動し,低温や高温時などでミツバチが活動不良となる条件下でも活動し,イチゴやマンゴーの授粉においてはミツバチの代替利用および新たな花粉媒介昆虫として十分実用化に至っている。 (キーワ−ド:ミツバチ不足,ウジ虫治療,授粉,ヒロズキンバエ,ビーフライ) |
←Vol.10インデックスページに戻る
|
水産流通現場で迅速・簡便に 水産物の脂質含有量等を測定する機器の開発 |
大和製衡株式会社 岡部 修一・三田尾 健司・長尾 武好 |
従来,水産物の脂肪含量や鮮度は専門家の経験値(目利き)で主観的に評価されていたため,インピーダンス法を測定原理とした機器を製作し,瞬時に脂質含量測定,鮮度判定,そして解凍品判別が行えるプログラムを開発した。本研究の成果は「フィッシュアナライザ」として商品化され,浦サワラ(兵庫県)や答志島トロさわら(三重県)など地域の優れた魚のブランド化に貢献しているほか,現在も全国の大学や各県の水産研究施設で水産物の品質に関する研究が行われており,新たな技術開発が期待されている。 (キーワード:インピーダンス,脂肪含量,鮮度,解凍品,フィッシュアナライザ) |
←Vol.10インデックスページに戻る
|