Vol.10 No.6 【特 集】 第77回農業技術功労者表彰受賞者の業績 |
黒毛和種子牛の適正管理による肥育期間の 短縮と効率的肥育経営の確立 |
群馬県畜産試験場 浅田 勉 |
育成段階から濃厚飼料を多給した子牛は皮下脂肪が厚くなり,肥育段階でも皮下に脂肪の動員が優先され,筋肉内への脂肪動員が抑制され肉質も低下する。そのため,太った子牛を肥育すると,販売金額(収入)から飼料費(経費)を差し引いた金額が適正に管理された子牛に比べ約8万4,000円少なくなり収益性も劣る。さらに,育成段階で適正に管理された子牛を8ヵ月齢から肥育を開始し,26ヵ月齢で出荷しても黒毛和種去勢牛の全国平均値(日本食肉格付協会)と遜色ない牛肉生産が可能であることを実証した。 (キーワード:期間短縮,効率的肥育,適正管理,黒毛和種子牛) |
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中山間地向け水稲直結栽培及び雑草イネ防除に かかわる技術の体系化と普及 |
長野県農業試験場 酒井 長雄 |
1990年〜2007年,水稲湛水直播栽培技術の研究開発と普及において,播種後低温となる中山間地域向けの出芽安定化技術として落水出芽法,中小区画水田でも機動性に富む産業用無人ヘリコプタ利用直播技術の一貫作業体系を大規模実証し,また,「コシヒカリ」栽培を可能とした代かき同時土中点播を確立した。2000年代初めに直播栽培圃場から発生した雑草イネについては,専門技術員として国レベルの専門機関からの研究協力を要請し,防除対策チームを組織化した。2008年からは雑草イネの防除対策研究を開始し,除草剤の利用法,代かきによる物理的手法,畑作物への転換など耕種的な対策,地域ぐるみの情報共有など総合防除対策を確立した。 (キーワード:水稲,直播栽培,雑草防除,雑草イネ,技術の普及) |
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ニホンナシ自家和合性品種育成と普及のための 安定生産技術開発 |
新潟食料農業大学 食品産業学部 松本 辰也 |
自家不和合性のニホンナシでは,人工受粉作業の労力負担が大きく,天候の影響も受けることから栽培上の不安定要素となってきた。筆者ら(新潟県農業総合研究所園芸研究センター果樹研究チーム)は,1997年から2021年にかけて,鳥取県で発見された自家和合性の「おさ二十世紀」等を利用した品種開発に取り組み,「新美月(しんみずき)」,「新王(しんおう)」,「新碧(しんみどり)」の3品種を育成した。また,それらの自家和合性品種の普及を図るために,天候不良条件下での着果安定性や着果の品種間差,省力的な管理技術を開発してきた。 (キーワード:ニホンナシ,自家和合性,新美月,新王,新碧) |
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施設カーネーション切り花の安定・省力・多収生産技術の 開発と普及 |
兵庫県立農林水産技術総合センター 北部農業技術センター 山中 正仁 |
施設カーネーション切り花栽培において,生産性の向上を図りつつ,持続性に優れた栽培が可能で,環境保全に結びつく新たな養水分管理技術「養液土耕」を開発し,普及した。加えて本技術をベースに,同一株を続けて使用する2年切り栽培において,側枝を2回に分けて切り返すことで株枯れを低減する「側枝別切り返し2年切り栽培」,ホームユース需要への対応を前提にしつつ大幅な増収を得る「短茎多収栽培」を開発した。さらに夜蛾類の黄色光による防除技術,夏季の異常高温による開花遅延を抑制し切り花品質の改善につながる日の入り後短時間冷房技術の開発に参画した。 (キーワード:養液土耕,2年切り栽培,短茎多収,光害虫防除,EOD-cooling) |
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極良食味水稲品種「つや姫」の育成とブランド化戦略 |
元山形県農業総合研究センター 水田農業試験場 結城 和博 |
「つや姫」は,1998年に育成を開始し,2009年に山形県および宮城県で奨励品種に採用され,2011年に品種登録された。2010年に日本一おいしい米として全国の消費者に評価されるブランド米を目標にデビューし,2019年には10周年を迎え,現在,第5次のブランド化戦略をオール山形で展開している。2020年,山形県産「つや姫」は,生産量5.5万t,1等米比率99.0%,食味ランキング「特A」を11年連続で獲得し,価格ポジションは全国2位,また,奨励品種採用県は10県に,銘柄別検査数量も8.7万tに拡大し,日本中の何よりも白いごはんが大好きな人に受け入れられ,水稲品種「つや姫」育成グループは日本育種学会賞を受賞する栄誉を受けた。 (キーワード:つや姫,ブランド米,食味,白いごはん,山形県) |
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コガネムシ幼虫天敵微生物防除と ネギべと病防除支援技術の開発 |
千葉県農林総合研究センター 横山 とも子 |
多犯性で難防除であるコガネムシ幼虫に対する天敵糸状菌,天敵線虫および天敵細菌について,殺虫活性にかかわる基礎的な研究を行うとともに,大量培養法,製剤化技術を確立した。製剤を用いた実証試験も行い防除効果を確認し,天敵糸状菌は土壌改良資材として,天敵線虫は生物農薬として実用化した。また,発生初期をとらえた薬剤散布が重要なネギべと病に対して,過去のべと病の発生と気象条件との関係について解析し,発生予測に用いる気温および感染に好適な気象条件を解明した。さらに,それらの情報が一目でわかるように,パソコンを利用したネギべと病防除支援情報システム「ねぎべと病なび」を開発した。 (キーワード:コガネムシ幼虫,天敵微生物,ネギべと病,防除支援情報システム) |
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