Vol.13 No.10
【特 集】 スマート農業技術の現地実証と社会実装(�后�


スマート農業実証プロジェクトの概要と本特集のねらい
農研機構本部 みどり戦略・スマート農業推進室    栗原 光規
 スマート農業実証プロジェクトは,これまでに217課題が全国各地で展開されてきた。そのうち2023年から2年間の計画で実証に取り組んだ12課題(水田作1,畑作3,露地野菜3,施設園芸2,畜産3)が終了したため,特徴的な5課題を選定し,その取り組み概要,導入技術の効果と課題,今後の社会実装に向けた取り組みについて紹介する。
(キーワード:スマート農業,実証プロジェクト,農業資材,自給率)
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スマート農業技術による大区画化ほ場における水稲・大豆作での
豚ぷんペレット利用を中心とした環境保全型精密農業の確立
岐阜県飛騨農林事務所    可児 友哉
 岐阜県飛騨市の大区画化された水稲,大豆栽培ほ場において,基肥に豚ぷんペレットを使用し,スマート農業技術を導入することで,作業効率化を図るとともに,化石燃料,化学肥料,化学農薬の使用量を 削減する実証を行った。本実証では,レーザーレベラによるほ場の均平(きんぺい)化,基肥の豚ぷんペレットの可変施肥,生育モニタリングに基づいたドローンによる農薬散布と可変追肥,大豆の播種(はしゅ)から除草剤散布までを1工程で行うことが可能な技術等を導入した。その結果,作業効率化による作業時間短縮,かつ化石燃料,化学肥料,化学農薬の使用量を削減できた。また,収量が向上し,生産効率の向上につながった。
(キーワード:大区画化ほ場,作業効率化,可変施肥,生育診断,豚ぷんペレット)
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スマート農業技術を駆使した大麦の生産拡大と
低コスト化を目指した水田収益向上モデルの実証
石川県農林総合研究センター    植松 繁・藪 哲男
 農地集積や大規模化に対応する作業体系を構築するとともに低コスト栽培を実現するため,大麦をモデル作物に無人トラクタを活用した「スマート播種(はしゅ)体系」およびリモートセンシング技術・可変施肥機を活用した「データ駆動型施肥体系」を構築し,導入効果を検証した。その結果,スマート播種体系の実証では,慣行播種体系と同作業人数,同作業時間で日当たりの播種面積が倍増し,労働生産性が著しく向上した。また,データ駆動型施肥体系の実証では,慣行施肥に比べて追肥にかかる肥料の使用量が約25%削減され,低コスト化に寄与することが示唆された。さらに,基肥の一部を有機物資材(鶏ふんペレット)に置き換えることで,化学肥料の使用量を低減させる効果も確認された。 (キーワード:無人トラクタ,協調作業,衛星リモートセンシング,可変施肥,大麦)
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秋田県産タマネギの生産性改善による自給率向上モデル実証
農研機構東北農業研究センター    林 智仁
 我が国におけるタマネギの年間輸入量は24万tであり,国内消費量全体の2割弱を占めている。その理由として,国産タマネギの主要産地の切り替え時期(7〜8月)に供給量が少なくなる"端境期"が生じることが挙げられる。そのため,7〜8月に収穫可能な東北地方におけるタマネギの生産性向上が望まれている。本実証では,秋田県におけるタマネギの生産性向上を目的とし,「遠隔営農支援システムの開発と実証」,「ロボットトラクタの導入実証」および「AI 自動選果機の開発と実証」の3課題に取り組んだ。
(キーワード:タマネギ,遠隔技術指導,ロボットトラクタ,AI 自動選果)
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JA西三河いちご部会における生産から販売のデータ駆動一貫体系の実証
愛知県農業総合試験場    松浦 元樹
 愛知県は「日本をリードするJA 西三河いちご部会におけるスマート農業実証コンソーシアム」を組み,2023年度から2年間のスマート農業実証プロジェクト「JA 西三河いちご部会における生産から販売のデータ駆動一貫体系の実証」において,高効率ヒートポンプおよび局所環境制御機器の導入,スマート選果システムの導入,画像処理による出荷量予測の実証に取り組み,目標の燃油消費量25%以上の削減,投下労働時間20%以上の削減を達成した。慣行栽培に比べて,ヒートポンプの導入により動力光熱費が10a 当たり5万円削減,局所環境制御により販売金額が6%向上したが,ヒートポンプと局所環境制御機器の導入コストがこれらを上回った。2027年度には総合集出荷場へのスマート選果システムの導入を計画している。
(キーワード:JA 西三河,イチゴ,ヒートポンプ,スマート選果システム,局所環境制御,出荷量予測)
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庄原市におけるスマート農業技術を活用した
持続可能な地域資源循環型農業
広島大学 酪農エコシステム技術開発センター    杉野 利久
 広島県庄原市の中山間地域における粗飼料自給率の向上と耕畜連携の強化を目的に,スマート農業技術を活用した地域資源循環型農業を実証した。青刈りトウモロコシとイネWCS(稲発酵粗飼料;Whole Crop Silage)の生産では,施肥・播種(はしゅ)・収穫作業の効率化と収量の安定化を実現し,酪農経営体での粗飼料自給率の向上と,生産した微細断コーンサイレージを給与することにより乳量の増加が期待されることが明らかとなった。今後は,品質評価と価格体系の整備,TMR(粗飼料と濃厚飼料を混ぜた完全混合飼料;Total Mixed Rations)センターとの連携を通じて,地域内での流通と持続可能な粗飼料供給体制の構築が期待される。
(キーワード:粗飼料自給率,耕畜連携,WCS,RFID,TMR)
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