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Vol.13 No.12 【特 集】 農業遺産 |
| 農業遺産について | |||
| 農林水産省農村振興局 農村政策部 二階堂 華那 | |||
| 農業遺産は,伝統的な農林水産業と文化・ランドスケープおよびシースケープ・農業生物多様性などが一体となった農林水産業システムを認定する制度であり,FAO
が認定する「世界農業遺産」と農林水産大臣が認定する「日本農業遺産」がある。農業遺産の特徴は,有形の遺跡等をそのままの形で保護・保存するUNESCO(国際連合科学教育文化機関)の世界遺産などとは異なり,無形の農林水産業システムを,農業を営みながら継承し保全・発展を図ることにある。農業遺産であることの価値を最大限に生かし,農林水産省の取組である農業遺産オフィシャルサポーター制度等を通じて,地域内外の多様な主体と協働しながら地域活性化を図ることが期待される。
(キーワード:世界農業遺産,GIAHS,日本農業遺産,地域活性化,農業遺産オフィシャルサポーター制度) |
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| 災害から ―束稲山麓地域の災害リスク分散型土地利用システム― |
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| 岩手県県南広域振興局 三保野 元紀 | |||
| 岩手県の南部に位置する束稲山麓地域は,地形的な要因により頻発する自然災害のリスクに対応するため,個々の農家が低平地と山麓地の両方に農地を分散して所有している。さらに,ため池や山地の森林は,地域の共同組織が管理するなど,地域一体となった土地利用を行う共同・共助の取組や,これを支える地域コミュニティが継承されている。 今後は,当地域の農林業システムが有する価値や魅力を広く発信するとともに,システムを継承する担い手の確保・育成や地域コミュニティの活動体制の維持のため,地域を応援する関係人口の創出に向けた取組を充実させる。 (キーワード:日本農業遺産,災害リスク,農地の分散所有,共同・共助,地域コミュニティ) |
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| 能登の里山里海 | |||
| 石川県農林水産部 岩池 洋一 | |||
| 能登半島の地形は,低山と丘陵地が多いことが特徴である。また,三方を海に囲まれているため,遠浅の砂浜海岸や外浦と呼ばれる岩礁海岸,内浦と呼ばれるリアス式海岸を含む内湾性の海域と,海岸線も変化に富んでいる。気候は日本海側気候型に属し,冬季には積雪があるが,沖合を対馬暖流が流れているため,同緯度の他地域に比べて比較的温暖である。そのため,暖寒両系の動植物が生息する等,豊かな生物相が見られる。 能登半島は,土地利用,農林水産業,食文化,祭礼,工芸,生物多様性などにおいて,里山から里海までが密接につながり,一体不可分となっている地域である。 (キーワード:能登の里山里海) |
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| 大都市近郊に今も息づく武蔵野の落ち葉堆肥農法 | |||
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| 大都市近郊に位置する埼玉県武蔵野地域(川越市・所沢市・ふじみ野市・三芳町)において,360年以上続く伝統的農業システム「武蔵野の落ち葉堆肥農法」が,2023(令和5)年7月にFAO(国連食糧農業機関)より世界農業遺産に認定された。本稿では,この武蔵野の落ち葉堆肥農法の歴史をはじめ,世界農業遺産の認定基準である「食料および生計の保障」「農業生物多様性」「地域の伝統的な知識システム」「文化,価値観および社会組織」「ランドスケープ」に即して農法の特徴を説明し,最後に「世界に貢献する武蔵野の落ち葉堆肥農法」と「未来への継承」を示していきたいと思う。 (キーワード:武蔵野の落ち葉堆肥農法,伝統的農業システム,大都市近郊,埼玉県武蔵野地域,世界農業遺産,FAO) |
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| 峡東地域の扇状地に適応した 果樹農業システムの保全・活用とこれから |
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| 2015(平成27)年10月,峡東地域の伝統的な果樹農業や農村景観を将来にわたって保全していくため,世界農業遺産の認定を目指して,山梨市,笛吹市,甲州市,山梨県が峡東地域の農業関係団体とともに「峡東地域世界農業遺産推進協議会」を設立した。厳しい自然環境に適応しながら,甲州式ブドウ棚などの開発や,高品質生産を可能にした新技術の導入などにより,先人達が築いてきた果樹王国の歴史と農業を中心とした特徴的な地場産業の発展などが世界的に評価され,2022(令和4)年7月18日に「峡東地域の扇状地に適応した果樹農業システム」が世界農業遺産に認定された。認定後は,協議会が主体となり,生産者や地域住民が,峡東地域の果樹農業システムや果樹園が織りなす景観に誇りを持ち,次世代に継承していくことができるよう,保全と活用に向けたさまざまな取り組みを実施してきた。認定から3年が経過したが,果樹農業システムの保全や地域内外のさらなる認知度向上等,いまだ多くの課題が存在する。引き続き,協議会が中心となって,保全活動や世界農業遺産を活用した地域振興に向けて取り組みを行っていく。 (キーワード:峡東地域世界農業遺産推進協議会,甲州式ブドウ棚,生物多様性,モザイク状の景観,果樹農業システム) |
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| 森・里・湖に育まれる漁業と農業が織りなす琵琶湖システム ―琵琶湖と共生する滋賀の農林水産業― |
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| 森・里・湖に育まれる漁業と農業が織りなす琵琶湖システム(以下,「琵琶湖システム」という)は,水田営農と深く関わりながら発展してきた伝統的な内水面漁業を中心とするシステムであり,2019年に農林水産省によって日本農業遺産に,2022年にはFAO(国連食糧農業機関)によって世界農業遺産に認定された。千年以上にわたり続いてきた営みは,取り過ぎない漁業,環境に配慮した農業,水源林を保全する林業といった琵琶湖や周辺環境を大切にしてきた持続可能な営みであり,この琵琶湖と共生してきた営みが豊かな生態系を育み,独自の食文化や特徴的なランドスケープを形作ってきた。そして,先人たちは伝統的な知識や社会的な仕組みを現代に伝えており,われわれには先人から受け継いだそれらを次世代に引き継いでいく責務がある。 (キーワード:琵琶湖システム,えり漁,魚のゆりかご水田,水源林の保全,ふなずし) |
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| みなみ阿波の −照葉樹林に育まれた里山,里海の物語− |
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| とくしま樵木林業推進協議会 柿内 久弥 | |||
| 徳島県県南地域には江戸時代から薪や炭を生産してきた樵木(こりき)林業がある。 (キーワード:樵木林業,択伐矮林更新法,照葉樹林,備長炭,レジリエンス) |
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| 琉球王国時代の「抱護(ポーグ)」が育む 多良間島の持続的 |
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| 沖縄県多良間村 来間 玄次 | |||
| 平坦な孤島で風の影響を受けやすい (キーワード:多良間地域,抱護,耕畜連携,淡水レンズ,エコファーマー,ユイマール) |
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| 海外における農業遺産の現状と課題 ―類型論と日中韓の比較を中心に― |
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| (公社)農林水産・食品産業技術振興協会 永田 明 | |||
| 国際連合食糧農業機関(FAO)の世界農業遺産(GIAHS)の概要とその経緯を紹介し,GIAHSをランドスケープ型,農法型,遺伝資源型の三つの類型に分け,ランドスケープ型の多い日本の特徴を示すとともに,過度に「境界」を強調することの弊害を指摘する。あわせて東アジアの日本・中国・韓国について,制度の沿革,申請の流れ,実施メカニズム,選定基準,申請・認定プロセス,認定動向,保全と活用,モニタリングと評価,連携とネットワーク,政策支援を比較するとともに,今後の課題として,東アジア偏在の是正,社会での認知拡大,ビジネスとの連携の重要性を指摘し,その解決のプラットフォームとして学術と実践を兼ねた東アジア農業遺産学会(ERAHS)の活用を提案する。 (キーワード:世界農業遺産(GIAHS),国家農業遺産(NIAHS),類型化,ランドスケープ型,農法型,遺伝資源保全型,日中韓比較,東アジア農業遺産学会(ERAHS)) |
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