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Vol.14 No.5 【特 集】 |
| 特集のねらいと概要 | ||||||
| (公社)農林水産・食品産業技術振興協会 安東 郁男 | ||||||
| 我が国の食生活は,「和食文化」を形成してきた固有の伝統的発酵技術による発酵食品と,ヨーロッパで発達した乳酸菌による発酵乳製品など,発酵技術によって大変豊かなものとなっている。発酵技術は,古代よりの伝統の継承と革新的な展開を繰り返しながら,その土地の風土に根ざした独自の食文化を形成してきた。本特集では,多角的な展開をみせる発酵技術のうち,「地域の食品産業や特産品,中でも日本酒や乳製品を支える発酵技術」に焦点を当てた。 (キーワード:発酵,醸造,酵母,乳酸菌,日本酒,チーズ,スターター) |
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| 県清酒酵母と県産酒造好適米で創る地域の酒 | ||||||
| 岐阜県食品化学研究所 吉村 明浩 | ||||||
| 岐阜県では県清酒酵母および県産酒造好適米の開発と普及を通じて,酒造業者ならびに米生産者を支援している。カプロン酸エチル生産能と強い発酵力を備えた岐阜「G2 酵母」を開発,発酵特性,香りや味の特徴を明らかにし,新たな酒造好適米「酔むすび(よいむすび)」の試験醸造を実施,醸造特性を調べて普及を進めてきた。このように県産原材料の選択肢を増やすことで製品構成を拡大できる。G2 酵母は清酒以外にも,どぶろくやクラフトビールに利用され,製造者らの工夫により魅力的な地域産品づくりが進められている。 (キーワード:清酒酵母,G2 酵母,酒造好適米,ひだほまれ,酔むすび) |
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| 香川県産オリーブ由来酵母の探索と地域ブランド清酒の創出 | ||||||
| 香川県産業技術センター 大西 茂彦 | ||||||
| 香川県特産のオリーブから清酒醸造に適した酵母を分離し,実用化に至るまでの取り組みを紹介する。オリーブの果実から分離した酵母は,当初,エタノール生産性が低く実用化が困難であったが,エタノール耐性株の段階的選抜により高生産株を取得した。選抜株「さぬきオリーブ酵母」は2020年より県内酒造業者によって実用化され,現在39製品に利用されている。本酵母は穏やかな果実様の香りと爽やかな酸味を特徴とし,県内複数蔵で共有される地域資源へと発展した。地域資源を活用した発酵技術は,清酒の差別化,ブランド形成および輸出拡大に貢献している。 (キーワード:清酒,オリーブ,醸造用酵母,地域ブランド,商品開発) |
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| 新規酒造好適米や清酒酵母の実用化による埼玉県内酒造業界支援 | ||||||
| 埼玉県産業技術総合センター 北部研究所 横堀 正敏 | ||||||
| 埼玉県農林総合研究センター(現 埼玉県農業技術研究センター)で育種した系統の選抜と,酒造会社での実地規模の製造試験に協力し,埼玉県で開発された初の酒造好適米新品種「さけ武蔵」が実用化された。また,県内酒造場などから採取した試料から発酵試験等で選抜するとともに塩基配列などで安全性を確認し,新たに酢酸イソアミル生産性の「埼玉E酵母」とカプロン酸エチル生産性の「埼玉F酵母」を実用化した。さらに,埼玉酵母を親株として理化学研究所における重イオンビーム照射などで変異株を取得し,カプロン酸エチル高生産性の「埼玉G酵母」を実用化した。 (キーワード:埼玉県産清酒,酒造好適米,清酒酵母,カプロン酸エチル,重イオンビーム) |
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| 新規の育種法導入による輸出用清酒の品質向上に寄与する清酒酵母の開発 | ||||||
| 広島県立総合技術研究所 食品工業技術センター 山崎 梨沙 | ||||||
| 大正時代に広島県で分離された最古の菌株である広島6号酵母を活用した新規交配育種手法を確立し,貯蔵劣化臭であるDMTS(ジメチルトリスルフィド)の発生を抑え,爽やかな味わいのリンゴ酸とバナナ様の香気成分である酢酸イソアミルを豊富に生成する新酵母「ひろしまLeG‐爽(れぐそう)」を開発した。令和7(2025)酒造年度には,広島県内外の23社で採用され,その高い貯蔵耐性と爽やかな酒質から,輸出用製品のみならず,低アルコール清酒や夏向けの純米酒など,市場のニーズに合わせた幅広い清酒造りに活用されている。 (キーワード:清酒酵母,広島6号酵母,交配育種,貯蔵劣化臭低減) |
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| ご当地乳酸菌を活用したJチーズスターターの開発と国産チーズへの展開 | ||||||
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| 本稿では,国産チーズの個性創出を目的としたJチーズスターター開発の取り組みを紹介する。北海道・栃木県の発酵食品から分離した乳酸菌676株の中から,熟成促進やうま味・香気強化に寄与する4株を選抜し,サブスターターとして実用化を進めている。現在は,DVS 型スターター試作品を全国のチーズ工房へ配布し,各工房が実際に製造試行を進めている段階である。試作チーズでは熟成の進行や味の向上が確認されており,国産チーズの差別化と地域乳活用の新たな選択肢として期待されている。 (キーワード:乳酸菌,ナチュラルチーズ,チーズスターターカルチャー,消費者嗜好調査) |
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| 農研機構乳酸菌データベース ―利用者と乳酸菌のマッチングを加速して発酵産業を支援― |
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| 農研機構食品研究部門 冨田 理 | ||||||
| 農研機構では6,500株を超える大規模な乳酸菌コレクションが近年整備された。この保有菌株を食品産業における研究開発の促進のために効率的に活用することを目的に,分離源や生物種等の菌株情報,ゲ
ノム情報,生理生化学的特性,食品発酵特性,機能性など,各菌株の特徴を把握するデータベースを構築するとともに,オンラインで簡便に菌株選抜を行うことができるweb 検索システムを開発した。実際に代謝物データが活用された事例として,豆乳中の主要な糖であるスクロースを消費することなくヨーグルト状に加工可能な,極めて特異な性質を有する新規菌株の取得に至っている。
(キーワード:発酵食品,乳酸菌,データベース,ゲノミクス,メタボロミクス) |
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