最近東京の盛り場に「草編みの虫」を売る女性が出没しているとの情報が頻々ともたらされた。そして夏のある深夜に新宿の地下道でぼくはようやくその女性とめぐり会った。
彼女は北京出身の医学留学生で30歳くらい、中国伝統の草編み技術を継承し、ススキやキミガヨランの一種の生葉を使い、目の前で4種の虫(写真のほかにカマキリ・バッタ)をみごとに編み上げる。
しかし、地下道では駅員に、盛り場では暴力団に追われての厳しい副業で、注文した虫を作る2時間の間に、駅員に怒鳴られて場所を3度も移動した。
そのつどオロオロと一緒に移動するぼくの立場も奇妙なものであった。彼女の要請で名前も顔写真も出せないが、「アメリカ留学中の彼に会いに行く旅費を稼ぎたい」との彼女の願いがかなうよう、
陰ながら祈りたい。乾燥すると変形する短期観賞用の“なまもの”なので、今回のものは、連絡先を聞き、撮影用に改めて作ってもらったものである。
開張はチョウが150mm、トンボが120mm、眼だけ毛糸。
|